豊かな食の実現と市場経済

 勤労感謝の日の朝、冷たい雨が残るなか銀座へ向かいました。実は銀座は、これからの日本の食と農業にとって重要な役割を果たすことが期待されている場所です。

 銀座3丁目の紙パルプ会館では、恒例のファーム・エイド銀座2010が開催されました。そのキャッチフレーズは「あなたのおいしい!が日本の地域と食を元気にします!」。銀座の屋上でのミツバチ見学会(ご存知「銀パチ」)、全国各地から美味しいものが集まるプチマルシェ等と併せ、いくつかのフォーラムが開催されました。

 私が参加したのは、「いま、なぜ赤肉か!? ~短角和牛から考える食文化の創造~」。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」の山本謙治氏を司会に、岩手県岩泉町の生産者・合砂哲夫氏、フレンチ・銀座KANSEIシェフの坂田幹靖氏、スローフードジャパン会長の若生裕俊氏、銀座社交料飲協会理事の白坂亜紀氏、そして農水省からは食料安全保障課・西経子補佐がパネリストとして参加。
 
続きを読む

ローカルフード

 土日と穏やかな週末でした。
 土曜の昼は、久しぶりに肉汁うどんを食べに行きました。多摩地方は水が少なく、米があまり獲れなかったため、食文化としては小麦地帯です。現在も、H市内には多くのうどん屋さんがあります。今回は、Kやさんにお邪魔しました。

 小さな店ですが、いつも混んでいます。メニューは基本的に1種類、肉汁うどんだけです。
 地粉を打ったうどんは、一般的な真っ白ではなく褐色がかっています。これがざるに盛られて出てくるのですが、サイズはLから5Lまでの中から選びます。2Lが普通サイズ位でしょうか。足らなければうどんだけ追加することもできます。また、お好みで天ぷらの掻き揚げと海苔をトッピングできます。
 このうどんを、熱い付け汁に浸して頂くのですが、だしのきいた付け汁の具は豚肉、ネギ、ほうれん草など。表面には脂の粒がきらきらと輝いています。これに薬味のワサビ、生姜、ゆずを入れ、さらに摺り胡麻を振ると、ぱっと食欲をもよおす香りが立ちます。
続きを読む

シブヤの農業

 今日の午後は、渋谷区主催の環境講座にお招き頂きました(資料等は拙ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」をご覧下さい)。

 平日の午後早い時間にも関わらず、センター街からスペイン坂を歩いただけで、人の多さと喧騒に頭がくらくらとしてしまいました。シブヤは大都会・東京の代名詞であり、およそ農業とは無縁の場所です。正直、始まるまでは、ここでどうやって食べものや農業の話をすればいいんだろう、という不安で胸が一杯でした。
 しかし、約40名の参加者の皆さんを相手にお話しするうち、長時間の一方的な(しかも下手くそな)説明にも関わらず、参加者の皆さんが一所懸命聞いて下さっている熱意が伝わってきて、次第に不安は消えて行きました。真摯な質問も出され、終了後には何人もの方と名刺交換させて頂き、また、アンケートには、多くの方が自由記入欄にたくさんの感想を書いて頂いていることをみて、大変、心強く、有難く思った次第です。
続きを読む

品川、渋谷、そして立川

 13日の土曜日は荏原文化センターへ。まっすぐ向かうなら、西武新宿線の高田馬場から山手線に乗り換え、五反田で池上線で荏原中延が最短ですが、せっかくなので(何がせっかくだか)、渋谷で東急東横線に乗り換え、自由が丘で大井町線、旗の台で池上線に乗り換えて行きました。あまり時間も変わらないのに、あまり馴染みのない東急に3路線も乗れてラッキーでした(乗り鉄かい)。でも池上線って、本当に3両編成なんだ。
 さて、14時からは品川区民大学入門講座「ほっとけない!環境のこと~自分の暮らしをチェンジする~」チラシ
続きを読む

ぶらり北品川散歩

11月9日(火)、久しぶりに北品川商店街を訪れました。週末の土曜、品川区の依頼で市民講座で話をさせて頂くこととなっており、そのための直前の取材という意味もありました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/sinagawa1.pdf

仕事が終わってから向かったので、京急新馬場の駅に降り立ったのは19時過ぎ、日はとっぷりと暮れています。ちょっと心配しながら少し戻って右折し商店街を歩くと、最初のターゲットである甘味・伊勢屋さんは、まだ営業中。しかも、お目当ての品川カブ饅頭をゲットです。胡麻味と生姜味の2種類。帰宅してから頂きましたが、カブの実や葉っぱが練りこまれていて、さっぱりしていて美味でした。

 第2のターゲットに向かって山手通りを横断します。ところが、一度来たのですが洋菓子の孝庵さんが見つからない。スーパーの前で通行人のご夫婦にお聞きすると、親切にすぐ目の前だと教えて下さいました。残念ながらすでに閉店でした。9月に来た時は、寺島ナスと千寿ネギのケーキをゲットできましたが、念願の「蕪」はお預けです。
 北品川の商店街を北に戻ります。あちこちに週末の養願寺虚空像尊秋季大祭の幟。今週末はお祭りです。そして幟の下、あちらこちらにはプランターが。何とこれが品川カブです。
続きを読む

秋晴れの週末

土日、秋晴れが続きました。3月まで住んでいた金沢の秋から冬にかけての気候とは大違いです。

猫の額ほどの市民農園、大幅に遅れていた秋の作業をしました。まず、最後までたくさんの実をつけてくれた茄子とピーマン、ししとうを処分。跡地を耕して肥料と石灰を施し、茎ブロッコリ、九条ねぎ、たまねぎ、にんにくの苗を植え付け。大根とほうれん草を播種。これらは時期が遅れているため、果たして発芽してくれるかどうか。
黒マルチを敷いてネットをかけました。いつもながら、あたかも不揃いな王蟲の行進。

蕎麦については、完全に実が十分に褐色になってから収穫という専門家からのアドバイスを受け、もうしばらく置いておくことにしました。でも、あまり実は入っていないようです。
蕎麦の隣では菊が満開、モンシロチョウやミツバチが集まっています。 … 続きを読む

文化の日に「あたり前の農業」について考えました。

 11月3日の文化の日、東京は秋晴れの一日でした。
 午前中、東京都下H市の自宅近くで借りているささやかな市民農園の片隅は、菊の花が満開になりました。

 茄子は実が小さくなり、そろそろ終わりです。週末には片づける予定です。夏から秋にかけ、たくさんの恵みを頂きました。
蕎麦はあまり実がついていません。
 今日は参加できませんでしたが、山梨県上野原市でのECOM「しごと塾」蕎麦収穫イベントはどうだったでしょうか。
続きを読む

「日本が農業大国」なんて、とんでもない

最近、日本の食料や農業について様々な指摘がなされています。例えば「日本は世界第5位の農業大国」、「食料自給率は大嘘だらけで日本は最大の農産物輸入国ではない」、等々。多様な視点からの議論は重要ですが、これらをそのまま鵜呑みにすると誤解が生じることになります。

まず、単純に農林水産業生産額を比較すれば、日本は中国、インド、米国、ブラジルに次いで世界第5位になります。しかし、そもそもGDPでみて日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国です(中国に抜かれますが)。先進国の場合、GDPに占める農林水産業のシェアはおおむね1%前後ということからみても、5位というだけで農業大国というのは誤りです。ちなみに日本の農業生産額の30%強は畜産ですが、飼料の75%は輸入に依存しています。

別の見方をすれば、アメリカではGDPに占める農林漁業のシェアは0.9%ですが、それでも農業大国であることは間違いありません。多面的機能論を持ち出すまでもなく、表面的なGDPの大きさだけで、その産業の重要性を計ることの非合理性は、このことからも明らかです。

農産物輸入額については、日本は米国、ドイツ、英国、中国等よりも少ないのは事実です。しかし、他の国は輸入をしながら輸出もしている(例えば米国は747億ドルの農産物を輸入し927億ドルを輸出)のに対し、日本はほとんど輸出していません(輸入460億ドルに対し輸出23億ドル)。したがって、輸入額から輸出額を差し引いた純輸入額でみると、日本は断トツの一位となります。日本の農産物の貿易構造は、世界の中でも極めて特異な姿です。

その結果、食料自給率も低くなっています。日本の総合食料自給率はカロリーベースで40%、生産額ベースで70%でありも、農水省も両指標を併用しているのですが、低い方の数値だけが一人歩きしていると問題視する論調があります。生産額ベースについては、カロリーが少ない野菜等の生産を的確に把握できるというメリットがある一方、国民に対して安定的に食料(栄養)を供給するという安全保障の観点からは、輸入飼料等を勘案したカロリーベース自給率という指標も重要です。ちなみに国際的に一般に用いられている穀物自給率でみると、日本は28%とカロリーベースよりも小さくなります。これは飼料穀物を含んでいるためですが、主食用穀物に限っても61%と、世界の人口1億人以上の国(途上国を含む。)のほとんどが80%以上を確保していることと比べても低いと言わざるを得ません。 … 続きを読む