ひご野菜-熊本発の伝統野菜の取組

 6月4日(土)は、久しぶりの熊本行き。
 羽田空港への途中、久し振りに北品川の「マルダイ」大塚好雄さんを訪ねました。商品として取り扱うだけではなく、商店街に品川カブのプランターを配ったり、学校で栽培体験を指導したりと、江戸東京野菜の普及に力を入れられている八百屋さんです。
 ちょうど今週末は品川神社の例大祭だそうで賑やかです。
 熊本へのお土産をと立ち寄ったのですが、残念ながらこの日は江戸東京野菜は品切れでした。しかし、ご主人が偶然お店におられ、近況についてお話を伺うことができました。
 驚いたのは、3月11日、電車が止まり多くの帰宅困難者が徒歩で店の前を通られるのを、黙って見過ごすことができず、店に残っていた野菜で味噌汁を作ってふるまわれたとの話。新聞やテレビでも取り上げられたそうで、知らなかった方がうかつだったのですが、このような面でも、改めて大塚さんの熱い気持ちを知ることができました。テレビ放映をご覧になって感激した仙台の方から、DVDが送られてきたそうです。

そのような暖かい気持ちを抱いて熊本へ。

 ところで3月12日は九州新幹線全線開通だったのですが、セレモニーは、大震災の影響で全て中止になったそうです。「くまもん」も、さぞ無念だったことでしょう。
 それでも熊本駅も駅前広場も、綺麗に生まれ変わっていました。次回はぜひ、新幹線で伺いたいものです。

ところで熊本は、2005年から3年間を過ごした思い出の地。仕事と私生活を通じて、多くの方たちとご縁を頂きました。

 今回呼んで下さったのは、「くらし・マイレージalliance(アリアンス)」の皆さん。北亜続子さん、園田敬子さん、西麻衣子さんという、素敵な女性3人組です。熊本の伝統野菜「ひご野菜」をテーマに、主婦や女性の日常の視点から、地産地消や町づくりを進めている団体です。
 今回は、市民講座「ひご野菜セミナリオ」の一環である特別講座「ひご野菜でまちづくり ~フード・マイレージを活用した地産地消の実践~」に、呼んで頂いた次第。
 フード・マイレージとは、食べものの輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標で、食料輸送に伴う環境負荷の大きさを計測するツールとなります。
 それに注目し、日本で最初の「フード・マイレージ実践講座」を企画し実施してくれたのも北さん達で、自分たちも受講され、日本最初の「フード・マイレージ プランナー」として、アリアンス等で環境に優しい食生活を広めるための活動をされています。
 この日の会場は「八代ハーモニーホール」。

自閉症関係の講演会や歯の衛生週間のイベントで多くの方で賑わう中、2階「中会議室」での特別講座には、熱心な方々約30名の方が集まって下さいました。

まず、中九州短期大学の学生さんから「行動範囲と食の関連性~八代市の軽度要介護高齢者に注目して~」と題して、介護の視点からの事例報告。

世界でも例を見ない高齢化が進んでいる日本にとって、今後、高齢者等が生鮮食品を入手しにくくなる「フードデザート(食の砂漠)」の問題が顕在化してくることが予想されていますが、実態調査の実績や一般の認知度は、必ずしも十分ではありません。

 この日の報告は、実際に介護施設利用者を対象とした実態調査に基づいた貴重なもので、高齢者の食生活は低栄養で塩分の多いおかずが増えていること、それでも新鮮な野菜や魚が入手しやすい地域であり、近隣との食べもののやり取りが頻繁に行われている等の実態が明らかにされました。介護福祉学科2年生の茂原君、山下さんの初々しい報告に感動。今後に期待です。

続いての私からの説明は、エネルギー問題やグローバリズムにまで話題を広げ過ぎて、時間も足らなくなり、分かりにくかったと思います。反省。

それでも、東久留米市の大山さんに送って頂いた東京長カブを披露しながらの江戸東京野菜の説明は、大都会である東京においても伝統野菜の取組が拡がりつつあることについて、よく理解して頂けたものと思います。なお、東京長カブは、参加者の皆さんに分けて持ち帰って頂きました。

伝統野菜の復活・普及は、地産地消の典型的な取組であるだけでなく、地域の歴史や風土、食文化とも密接に結びついたものです。
全国各地で拡がりつつある取組は、行政やJAが中心となっているケースが多いのですが、熊本では、北さん達の市民グループが、生産者や行政、農業高校等と連携して進められていることに、大きな可能性を感じました。さらなる活動の拡がりを期待したいと思います。

 終了後は、会場近くの民家を改造した素敵な料理屋さんで懇親会。

実は、九州在勤中にお世話になった当時の職場の同僚の皆さんが、休日にもかかわらず(事前準備も含め)、色々と手伝って頂き、懇親会の会場も探して下さいました。有難いことです。
懐かしくて暖かい空気に包まれつつ、美味しい食事と米焼酎を頂きました。

翌5日の熊本は大雨、東京は昼間は晴れていたのが帰宅した夜には強い雨に。

 ちなみに古馬マイルG1は、狙いすました大井・戸崎の3歳馬(9番人気)が快勝。ところが1、2番人気馬とも揃って来ないとはドモナラズ。
 週が明けると東京も晴れ。

日比谷公園は遠足シーズンです。子どもたちが外で遊んでいるという、当たり前の光景が、何とも眩しく感じられました。

 最後に追伸的に。
 5月31日に公表された「食料・農業・農村白書」において、フード・マイレージが紹介されました。

日本の輸入食料のフード・マイレージの2010年の値、つぐまたかこさんに監修頂いた加賀野菜等を使った和食献立についてフード・マイレージを試算した結果と、大地を守る会、パルシステム、生活クラブ、グリーンコープ、ビオマーケットさんによる「フードマイレージ・プロジェクト」を紹介しています。
ご関心のある方はご覧下さい。
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h22/pdf/z_topics_3.pdf

もう一つ、以前に本ブログでも紹介させて頂いた長崎の吉田俊道さんが、渾身の新著「お野菜さんありがとう!~子どもと一緒に元気野菜作り」を出版されました。

「「この地球で食べて生きる!」意味を深く考えてくれている様子を想像したら、
みんなが、心優しくなっていくようで、わくわくしてきますよね。
この想像! みなさまの協力で、現実化させたいです!!」(吉田さん)

1冊(何と)200円、注文は「大地といのちの会」TEL/FAX 0956-25-2600まで。