復興に向けての確かな足取り

7月11日(月)夕方は農林水産省内の勉強会。
講師は福島県二本松の関元弘さん、奈央子さんご夫妻。ともに元農水省職員で、自ら農業をやりたいと退職し、人事交流で縁のあった旧東和町で新規就農して5年目。

 地域の師匠(農家の方)達の指導を受け、耕作放棄されていた桑畑を開墾、有機栽培の野菜と米を栽培。農産加工や交流事業にも熱心に取り組んでおられ、今年は地酒(発泡酒)造りの免許も得たとのこと。奥様は留学経験も活かして英語学校、対訳付きの絵本作成などもされています。
 自己紹介で地図を見せて頂くと、計画的避難区域の川俣町に隣接していてドキっとしましたが、山一つ挟んでいるために汚染の影響は少ないとのこと。避難せざるを得ない有機農業の先輩もおられるなど厳しい状況の中で、明るく前向きに夢と計画を語られる2人の姿に感銘を受けました。
 12日(火)は八王子で、先日の南相馬ボラバスの反省会(復興熟議)。
 ワールドカフェには間に合わず、19時半からの懇親会のみに参加。わずか2週間前のことながら、リーダーの吉永鴻一さん始め懐かしい面々と再会できました。都市農業の活性化と農地保全のための援農ボランティア活動等をされているNPO法人「すずしろ」の山下さんには、関係者の皆さんと意見交換する機会を設けて頂くこととなりました。
 最後は、現地の避難所でも奏でられた山下さんのウクレレで「ふるさと」を合唱し、それぞれの復興への思いを新たに。活動は継続していくことが必要です。
 厚かましく2次会のカラオケまでついていきましたが、ここは終電のため冒頭のみで失礼。
 7月14日(木)は StarBooks Cafe というイベントに参加しました。主催は松山真之介さん。実は、発行されているメルマガ「Webook of the day」の読者となってほぼ10年、有用でユーモア溢れる書評に楽しませてもらってきました。
 ぜひ一度お会いしたいと思っていた憧れの真之介さんにお会いしたのは、大崎ゲートシティーのスターバック。好きな本を持ち寄っての紹介と、新刊書をいかに世の中に広めていくかという趣旨の意見交換(MOSO会議と称するらしい)。
 約10名の参加者の皆さんは、ベンチャー企業の社長、ベストセラー作家、童話の翻訳家、ジュエリーデザイナー、IT企業にお勤めの方などハイソでセレブな皆さん。真之介さんご自身も多くの本を出しておられます。最初の内は気後れして、いささか居心地の悪さを禁じえません。
 しかも日頃 Webook で取り上げられているのはビジネス書や自己啓発書が中心です。「少しは空気を読めよ」と突っ込まれるのを覚悟の上で、自分の順番が来て紹介させて頂いたのは、飯舘村「までいの力」
 震災前の「日本一美しい」飯舘村の姿と、今後に向けた覚悟が記されている本です。幸い、本好きの優しい皆様は暖かく受け止めて下さってほっとしました。同時に、この本がまだあまり世の中には知られていないことも分かりました。多くの方に読んで頂きたい本です。
 それにしても約2時間の会合、それぞれの方から思い入れたっぷりの好きな本の紹介があり、真之介さんのウィット満載の進行もあって大いに盛り上がりました。カフェが本屋になればいいねと誰かが言うと、持ち寄った本がソッコーで棚に並べられます。
 最後に誰かが「コーヒー1杯で2次会のノリ」と感想を述べておられましたが、その通りでした。
 また参加させて頂きますので、その際はよろしくお願いします。
 7月15日(金)夜は久しぶりに押上「よしかつ」へ。
 江戸東京野菜を始め東京産の食材にとことんこだわっている佐藤勝彦店長さんのお店です。この日も美味しい青ヶ島焼酎や野菜たっぷりもんじゃを頂きました。この日は、池袋を拠点に活動されているNPOの方をお連れし、佐藤店長さんにも紹介させて頂きました。
 それぞれ熱い思いを持ち、活動されている方はたくさんおられます。そのような方たちの仲立ちをして、新しいつながりができ、新しい活動が拡がっていくことのお手伝いが出れば幸せです。
 7月17日(日)は、これも久しぶりに埼玉県の小川町へ。
 有機農業を核にして地域循環が進められている先進的地域で、昨年は農林水産祭天皇杯も受賞されており、折しもこの日から3日間、全国から受講者を集めて「有機農業で“まちも人も元気になる”塾」が開催されています。
 まずは駅近くの日替わりシェフのコミュニティカフェ「ベリカフェ」で、玄米と野菜中心のランチ。元気塾会場の旧下里分校を覗き、小川の地域づくりの中心的人物である高橋優子さんにご挨拶(講座中にお邪魔しました)。
 埼玉伝統工芸館で和紙づくりを見学。ここでは埼玉・多摩地方の伝統野菜「のらぼう菜」入りどら焼きをゲット。
 その後は、晴雲酒造と都幾川の渡邉豆腐店を回る定番コース。いずれも地元産の米や大豆にこだわったお店で、それぞれに地域循環の一翼を担っています。地域循環の基礎となるのは農業ですが、事業者や消費者が一体となって取り組まなければ実現しません。その意味でも、小川町(及びその周辺地域)は素晴らしい人たちが集まっています。
 晴雲酒造では、いつもの「自然酒」を購入。小川町(というよりは日本の)有機農業のリーダー、金子美登さん達の無農薬米を使用、ラベルは特産の和紙です。さわやかな飲み口のお酒です。
 ところで来週23、24日は有名な七夕まつりだそうで、晴雲酒造さんの蔵の中でも七夕飾りの準備が進められていました。
 店頭では、自由に願い事を書けるように短冊が置かれています。「小川型の自然循環の取組が世界に広がっていきますように」等と書いて投函しておきました。短冊に願い事を書くなど恐らく小学生以来、気恥かしかったのですが、まあ、入れてしまえば誰が書いたか分かりません。
 渡邉豆腐店はこの日も大繁盛、特に地域のお祭りの神輿(大人と子どもの2台)の出発地にもなっていたようです。
 また、この3連休は、駐車場の一画に地元の若い生産者達の即売会テントも設けられています。
 このような即売会をされるように、社長の渡邉一美さんは地産地消にとことんこだわっておられます。特に地域の大豆を全量買い上げる取組は、事業者によるCSA(Community Supperted Agriculture)そのものです。
 この日は豆腐、厚揚げ、おからドーナツ、即売所では小芋(何と100円で詰め放題。技術指導つき)、えごまの葉などを購入しました。
 帰宅すると、うれしい荷物が届いていました。陸前高田市の八木澤商店「お中元パック」です。
 八木澤商店は、かねて地域活性化や食育活動の面で有名な企業でしたが、今回の震災で店舗、蔵、製造工場の全てが波にのまれました。しかし河野新社長は一人も解雇することなく、逆に2人の新入社員も迎え、ボランティア活動を続けながら、委託製造品を中心に営業を再開されているのです。
 このご縁を頂いたのは「もやい九州」の皆さん。九州にゆかりのある個人が集まりML等での情報交換等を行っているグループで、そのお一人の方と4月に神田「なみへい」で開催された応援食事会で知り合い、八木澤商店を応援する「お中元パック」の取組を伺って申し込んでおいたものです。その時は、本当に今年の夏に間に合うかとの心配もあったのですが、無事に届きました。
 「社員一同」の皆様からの手紙が同封されていました。その最後は「海は津波のことなど忘れたように穏やかです。皆様の幸せを祈りつつ」。
 さて、夜は美味しいお酒にお豆腐、小芋等のご馳走。畑から収穫してきた枝豆とトマトも。
 猫の額のような市民農園の一画では、毎日、食べきれないほどのトマトや茄子ができています。有難いことです。
 18日未明から朝にかけてのフランクフルトでの熱戦、相手は格上で体格差も明らか、攻め込まれ続けても最後まであきらめず、延長戦とPK戦を戦い抜いて、ついに「なでしこ」は世界一に。
 素晴らしい試合でした。
 地域での様々な取組が拡がり、被災地でも復興への動きも具体化してきていることを実感し、心強く感じた1週間でした。
 しかしその一方で、放射性セシウムに汚染された牛肉の問題が、生産地、消費地ともに、さらに拡大しつつあるとの報道。次々と起こる当面の問題には冷静に対処しつつ、息の長い取組がと覚悟が必要です。