悲惨の中の希望

気がつくと8月、ここのところ東京地方は比較的涼しい日々が続いています。

高月美樹さん「旧暦日々是好日」によると、今日8月1日は旧暦では7月2日。文月に入りました。間もなく迎える七夕は、「世界に混乱が起きないことを願う宇宙的な行事であったのかも知れない」とのことです。

この2週間に参加した講演会など(順不同)。
震災関連では、まず7月21日(木)に丸の内グラントウキョウで開催された八木澤商店・河野通洋社長講演会(大和証券グループ・ミュージックセキュリティーズ共催)
津波で本社も蔵も全て流された創業200年以上の醸造蔵を、4月に九代目として継がれた河野さんからは、若い経営者として老舗の家業を引き継ぐ苦労話もお聞きすることができました。最後に紹介されたのは石川啄木の短歌「こころよく 我にはたらく 仕事あれ それを仕遂げて死なむと思ふ」。

7月23日(土)午後は、恵比寿の日仏会館で「緊急公開座談会・大災害から何を学び、復興のシナリオをどう描くか」(ブックエンド/ビオシティ主催)。
 錚々たるメンバーで、座長に日本大学教授で飯舘村後方支援チームの糸長浩司先生。パネリストには「東北学」の提唱者で学習院大学教授・福島県立博物館館長の赤坂憲雄先生。千葉大学教授(公共政策学)の広井良典先生、哲学者の内山節先生。
 2時間ではとてももったいない内容の濃い議論。ここでの結論の一つは、原発事故は通常の災害とはあまりにも違い過ぎるということ。

7月31日(日)は川崎市で開催された自治体学会関東フォーラム「原発事故に立ち向かう」
飯舘村の菅野典雄村長から「『おカネの世界』から『いのちの世界へ』」と題して基調講演。今回の原発事故を明治維新、戦後に続く第3の大きな時代の転機と捉え、被災者の苦しみに報いるためにも、生命や心に軸足を置いた復興の実現をと呼び掛け。
続いて進士五十八氏のコーディネートで新藤宗幸氏を交えたパネルディスカッション。新藤先生は、4ヶ月以上もたって未だ放射性物質の流出が止められない無策に、もっと怒るべきと。

 ところで三鷹市の「藍設計室」(代表:鯨井勇氏)では、被災地のコンター模型(ジオラマ)をボランティアで作っています。

宮城県女川町分は既に完成し現地に届けられ、現在は岩手県大槌町について制作中。等高線に沿って切り出しボンドで貼りつけていくという作業で、難しくはないのですが人手は必要でボランティアを募集中です。
毎週木曜と土曜、吉祥寺の事務所又は八坂駅前郵便局(東村山市)3階で作業されているので、お手伝い頂ける方は上記HPからお問い合せ下さい。

直接には震災と関連しないものとしては、7月24日(日)の夕方に千駄木で開催された市民科学研究会の総会と研究会。
ビール会社勤務で東京大学大学院博士課程在籍中の小野田美都江さんから「女性と飲酒」についての講演。引き続いて料理とお酒を持ち寄っての懇親会。私は埼玉県小川町・晴雲酒造の自然酒を持参。料理の準備をして下さった皆様、有り難うございました。
7月22日(金)は泉岳寺で地域活性化勉強会・意見交換会。
元農水省職員の木村俊昭さんと久しぶりに再会。変わらずに地域活性化の伝道師として、全国を飛び回られている様子。
この日は(株)クリップの島田昭彦氏から「ブランド化は海外思考だ」との講演。友禅のアロハシャツ、和傘の照明機器など驚きのアイディア。

7月25日(月)夕方は、八王子の「すずしろ22」の皆さんとの意見交換会。

 NPO法人「すずしろ22」とは、八王子市の農業活性化と農地保全を目的として、援農ボランティア、農業体験、地場農産物の学校給食への導入等の様々な活動をされています。
 南相馬へのボラバスで知り合ったNさんのご紹介で、この日は生産者、学校関係者、市民活動ネットワークの皆さんが集まり、活動内容等についてお話を伺いました。
 農業を続けたい生産者の皆さん、地元の野菜等を子どもたちに食べさせたい給食関係者の皆さんは、全国各地におられますが、双方の思いをマッチングすることはなかなか難しく、多くは実現できていないのが現状です。
 八王子では、NPOが献身的に仲立ちすることによってネットワークが構築され、色々とご苦労はおありかと思いますが、今後の都市農業の一つの理想的な姿が実現していると感じました(ちなみに農林中金総研の蔦谷栄一先生は、「都市農業は日本農業の先駆け」と位置づけられています)。
 私からは、挨拶代わりに簡単にフード・マイレージ等の話をさせて頂きました。

 

 7月30日(土)は、上野原市西原(さいはら)で開催された「はたけっとまーけっと」へ。地元の「NPO法人さいはら」の方達とともに、昨年からお付き合いさせて頂いている「しごと塾さいはらプロジェクト」メンバーの皆さんが協力して、交流施設びりゅう館周辺で各種イベントや出店を行っています。

「むかしあそび」の木製の三輪車には子どもたち(大人も)大喜び。古民家を改造したコミュニティハウスではハープ演奏も。
ここに来ると、いつもほっとした気持ちになれます。紫蘇ジュースの美味しかったこと。さらには、プロジェクトメンバーのお二人が結婚されたという嬉しい話も。

さて、この間、ノルウェーでは爆弾テロと乱射事件。中国では高速鉄道の事故。「アフリカの角」ソマリアでは飢餓が深刻化。新潟と福島会津地方は豪雨災害。
それぞれ要因は異なるものの、世界のあちらこちらで多数の犠牲者が。

また、福島県、宮城県に続いて岩手県にも肉牛の出荷制限を指示。この世界は不条理に満ち溢れています。

 その世界の中で、日比谷公園ではヒマワリの花が咲き誇っています。土壌の放射性物質の除染に役立つという説もあり、現在、福島では他の作物とともに実験も行われています。
 宮沢賢治は、若い農民たちが苦しい農作業の中にも喜びと希望を見出せるようにと、田んぼの真ん中にヒマワリを植えたという話が伝わっています。
 政府の復興構想会議の提言にあるように、「悲惨の中」に「希望」はあるのでしょうか。