市民のための科学

 フード・マイレージのご縁で以前からお付き合いさせて頂いている方に、上田昌文さんという方がいらっしゃいます。
 現在の肩書はNPO 市民科学研究室(市民研)代表理事。
 HPによると市民研とは「市民の問いかけから出発して、素人の知恵と力を結集して「市民にとってよりよい科学技術とは」を考え、提言するNPO」とのこと。これまでも電磁波の問題や親子料理科学教室などの面で積極的に活動されていますが、最近は、やはり放射能関係の学習会等が多くなっているようです。
 また、本年3月に刊行された報告書『原爆調査の歴史を問い直す』は、NHK特集で取り上げられるなど大きな反響がありました。
 その上田さんが各地で開催されている学習会に、ようやく参加できたのは8月28日(日)のこと。小平市中央公民会で開催された学習会「放射能について正しく学び考えよう」です(主催:小平・生活者ネットワーク)。
 参加者は、お子さんをお持ちの若い女性の方が中心。上田さんの穏やかな口ぶりは、分かりやすい説明ゆえに、改めて深刻な現実がどんどんと伝わってきます。
 例えば、放射能に関する現在の政府の暫定規制値については、一部ネット等で主張されているほど極端ではないものの、国際基準に比べれば全体としては緩めであること、いつまでも「暫定」であることが問題であること。
 さらに食品摂取による内部被ばくについては、絶対的な目安は無いものの、成人だけなら年間1mSV以下になるようにセシウム含有量が多くても51Bq/kg以内(乳児がいるなら10Bq/kg以下)の食品を選ぶべきであるとのこと。ちなみに現在の政府の暫定規制値は野菜、肉類等で500Bq/kgです。
 分かりやすい(分からないことは分からないという)解説であるからこそ、問題の本質は複雑で、一筋縄ではいかないこともよく理解できました。
 講演終了後、どうしても聞きたいことがあって個別にお聞きしました(全員の前で手を挙げる勇気が無かったというのが本心です)。
 それは、「食べて応援しよう」といった取組をどう考えておられるかということです。健康面からみて被ばくは少なければ少ないほどいいとすれば、例えば福島産の野菜等は、やはり控えた方がいいのか、ということです。
 上田さんの答は「取組には賛成」というものでした。安全性を追い求める余り、肝心の国内の産地が無くなってしまっては、それこそ食の安定供給は覚束なくなります。国内の健全な産地を維持するためにも、「食べて応援しよう」との取組は重要ではないか、とのことでした。安心しました。
 それでも、子どもや妊婦さん達の被ばくを極力避けるためには、土壌汚染の現状分析、出荷される農産物の検査等の取組が、ますます重要であることには変わりません。
 9月4日(土)には、やはり上田先生が講師を務められた親子ワークショップ「親子で知ろう!一緒に考えよう!放射能のこと」を見学しました。
IMG_1671_convert_20110904221408.jpg
 ワークショップでは、「放射能はどこからきたの」「放射能から体を守るにはどうすればいいの」といった問いかけに子どもたちが答えていく形式で、活発な意見交換がなされました。上田さんの説明の分かりやすさとともに、小学生の子どもたちの豊富な知識、積極的な発言に驚きました。
 放射能の問題について、親子を対象にしたワークショップの試みは、恐らく他には無いのではないでしょうか。この日の主催者は一般の主婦の方たちだそうです。約2時間、子どもを相手に、難しい問題を分かりやすく、かつ飽きさせずに説明される上田さんも、得難い方です。
 現在の科学技術があまりにも発展し、一般市民から離れて行って一部の専門家のものになってしまい、その専門家は必ずしも一般市民に説明する必要を感じることはなく、一方で多くの一般市民は自らの問題して理解しようとせず専門家任せにし、一部の問題については一部の人はひたすら怖がる、拒絶する、という傾向が無いとはいえません。原発の問題は、正にこのような状況から生じものと言えるのではないでしょうか。
 複雑で分かりにくい科学技術と、普通の市民との間のコミュニケーションを図り、橋渡ししていくために、市民研や上田さんの取組は、ますます重要になっていくものと確信しています。
 さて、8月28日は小平まで来たので、お昼は久しぶりに一橋学園前の中国宮廷麺「なにや」へ。
 大竹道茂さんのブログ「江戸東京野菜通信」でも何度も紹介されていますが、この店では地元の生産者と連携して、様々な江戸東京野菜等の地場食材を使ったアイディア料理を出されています。
IMG_1650_convert_20110904221609.jpg
 人気のある店で、13時近かったのですがほぼ満席。名物の冷麺の麺には、地元産のブルーベリーが練り込まれています。これも名物の三色餃子ともに、大変美味しく頂きました。
 地元産の食材を味わえる幸せを噛みしめつつ。