TEIKEI, 距離を縮めるために

 11月6日(日)は小雨模様のなか「恵泉祭」が開かれている恵泉女子学園大学(多摩市)へ。
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 シンポジウム「3・11以後の社会と私たち」は、大教室に立ち見が出るほどの満席。
 木村利人学長の挨拶に続き、福島県三春町の福聚寺住職で芥川賞作家でもある玄侑宗久氏による基調講演「異教の神のパニヒダ -宗教から原発を考える-」。パニヒダとはギリシャ正教会等で行なわれる通夜のような儀式のこと、「異教の神」とは原発のこと。これを日本古来のアニミズム的な土壌に受け容れたことの失敗について話されました。結論は「異境の神」原発の通夜をしましょう、と。
 続くパネルディスカッションのパネリストは、玄侑氏に加えて社会学者の開沼博氏(東京大学大学院博士課程)、文芸批評家の大澤信亮氏(日本映画大学准教授・恵泉女学園大学講師)。司会は恵泉女学園大学教授の武田徹氏。現下の原発問題を議論するには最強の布陣。
 食の安全についてもやりとりがあり、時間が足りず残念でしたすが、今後、色々と考えていくきっかけとなる貴重なシンポジウムでした。
 さて、霞が関の農林水産省「消費者の部屋」は、消費者の方達に農林水産業に関連する情報を幅広くお伝えするためのスペースで、消費者からの相談や質問の受付のほか、週替わりでテーマを決め「特別展示」を行っています。
 11月7日(月)から11日(金)は有機農業の週で、有機農業に関する様々なパネル展示やパンフレットの配布等が行われました。
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 9日(水)には、埼玉県小川町の有機農家(全国有機農業推進協議会理事長)の金子美登さんにお越しいただき、「有機農業の人づくり・地域づくり~実践40年の現場から~」と題した講話が行われました。
 長年の実践に裏付けられた金子さんの話は、エネルギー自給や地場産業との連携など、いつもながら幅広く重みのある内容です。その中で、特に興味深かったのは「提携」の話でした。
 1970年代、日本の生協運動や有機農業運動の中から始まった産消提携は、単なる商品の産直ではなく人と人との有機的なつながりを目指したものでした。しかし、その後の日本ではこの動きは必ずしも拡がらず、逆に食品流通の大規模化・広域化が大きく進みました。「食と農の間の距離」の拡大です。
 ところが金子さんによると、TEIKEIは世界の共通語になっているとのこと。
 日本から始まった産消提携運動は、アメリカ・カナダではCSA(Community Supported Agriculture)、フランスではAMAP(Associations pourle Maintien d’une Agriculture Paysanne)と、その呼び方は異なるものの、複数の消費者が地域の生産者を支えるというスタイルは大きく拡がりを見せているとのことです。イギリスのフードマイルズ運動も、この流れと軌を一にするものと言えるでしょう。
 金子さんご自身は、1971年から有機農業に取り組む中で約30件の消費者と提携(契約ではなく「お礼制」)し、一貫して家族と親しい隣人のための「地域自給農業」を実現してきています。消費者だけではなく酒地場産業をも巻き込んだ小川町のモデルがもし全国に広がっていけば、食料自給率の向上、食に対する安心感の確保、コミュニティの復活など、多くの課題が一度に解決することになります。日本発で欧米で盛んになっているTEIKEIの取組を、今一度、位置づけなおしていくことが重要であるというのが、金子さんのご主張でした。
 講話の後は、金子さんの奥様達による有機野菜、在来種大豆の炊き込み玄米ご飯などを試食させて頂きました。
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 TEIKEIとは少しスタイルは異なりますが、消費する側から、農や地域との間の距離を縮めようという動きもあります。
 例えば、新橋の「あるばか」は、学生達が運営している居酒屋です。
 社会の縮図・居酒屋を始めた学生たちの想いはHPに述べられていますが、もともと銀座で行われたある勉強会に参加した際に名刺交換した国立C大4年生の「ぜっきーさん」に紹介して頂いたもの。カウンターだけの小さな店ですが、手作りの食事や、学生達が自ら精選した飲みもの等を提供してくれる心地よいスペースです。
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 都会の住人、特に若い世代にとって、自分たちの食の生産の現場は縁遠いものになってしまっています。そのような若い世代における食と農の距離を縮める意味でも、「あるばか」の活動に期待したいと思います。
 もう1軒、神田の細い路地を抜けた場所にある「うまいもの交流サロン・なみへい」は、「東京から故郷おこし」をコンセプトに、地域活性化を目的に作られたコミュニティ居酒屋です。
 お店を使ってお国自慢の料理を出せる「一日シェフ」等のイベントのほか、店内はアンテナショップとしても活用されています。
 月替わりで各地域を取り上げるコースメニュー、今月は三重県特集。木の芽味噌田楽等の前菜5点盛り、豆鯵のフライ抹茶塩添え、鰹の漬け焼き、鍋料理、〆は伊勢うどん等。
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 オーナーの川野真理子さんによると、「人と人がつながる、地方と都会がつながる、食材と食材がつながる、さまざまなものが『つながる場』として、皆様に愛される、温かい交流サロンの運営を目指しています」とのこと。
 ここにも、東京から地域の生産者等との距離を縮めようとする動きがあります。
 さらに熊本市では、11日(金)、フード・マイレージ普及の同志でもある北亜続子さんが起業し、ひご野菜コロッケのお店「ひご乃すけ」を開店しました。内閣府の社会起業支援制度を活用したものです。
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(写真はコスギ不動産・平成支店様ブログより)
 伝統野菜は、地産地消の典型であるのみならず、地域の風土や食文化とも結びついたもので、今後の地域づくりにおいても大きな意味を持っています。
 各地における様々な「食と農の間の距離」を縮める取組、さらに拡大していくことを期待したいと思います。