「日本の田舎は宝の山」

 今年は閏年で1日得したような気分。ちなみに旧暦だと今年は「閏弥生」があるので1ヶ月お得になります。
 その2月29日(水)は朝から都心でもかなりの雪。
 勉強会に向かう途中、総理大臣官邸と議員会館も雪の中。シャッターを押したら、近くに立っていた若い警備の方がすっと近寄って来て撮影の目的を聞かれました。
 「雪景色が珍しいから」で終わったのですが、少々緊張しました。それにしても雪の中に立ちっ放しの警備の方も大変です。
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 朝8時から東京・虎ノ門で開催されたのは「地域力おっはー!クラブ」主催の勉強会。月1回程度、民間、地方と国の公務員が参加しており、事務局は学生さん達が運営されています。
 この日講師はNPO法人「えがおつなげて」代表理事の曽根原久司さん。
 タイトルは「日本の田舎は宝の山 ~農村資源を都市のニーズと結べば、10兆円産業が動き出す~」というもの。
 技術とマネジメントと知恵によって、宝である農村資源を活用できれば、10兆円産業・100万人雇用創出のの可能性があるという内容です。その内訳は、6次産業化を含む農林漁業3兆円、観光・交流2兆円、建築・不動産2兆円、エネルギー・交通2兆円、情報・教育・IT・メディア等サービス分野1兆円とのこと。
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 それにしても10兆円とは、にわかには信じがたい規模の金額です。
 例えば昨年10月、内閣府が公表した試算によると、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すれば国内総生産(GDP)を10年で2.7兆円押し上げる経済効果があるとのこと。10年で2.7兆円ということは1年では0.27兆円。これは付加価値ベースですが、いずれにしても、農村資源の活用は、TPP参加に比べても格段に大きな経済効果を有することになります。
 そもそも日本の農業生産額は9.5兆円、食品工業や飲食店など関連産業を合計しても95.7兆円という規模です(農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算」、21年度速報)。
 最初に10兆円と聞いた時には、正直、にわかには信じがたい話のように思いました。
 ところが、曽根原さんの本を読み、直接話を伺っていると、次第に実現するような気がしてくるのですから、不思議といえば不思議です。
 実現可能性が感じられる理由の第1は、何といっても、曽根原さんご自身のこれまでの実践に基づいていることです。よくありがちな評論家の机上の議論ではありません。
 経営コンサルタントをされていた曽根原さんは、思うところあって山梨県に移住、個人として都市農村交流事業に取り組み始められました。その後NPOを設立、様々な企業等と連携し、都市と農村をつなぐ活動を実現されてきています。その17年間の実践と実績が、10兆円の背景にはあるのです。
 例えば、連携している東京のある大手不動産会社が所有するマンションの住民は15万世帯と、山梨県の人口の半分以上に当たります。その人たちを対象に「田植えツアー」を募集したところ、17分で定員一杯になったとのこと。
 もう1つ、曽根原さんの活動が素晴らしいと思うのは、もともと個人で始められた活動を、NPO法人としてノウハウの共有化を図るとともに、さらに「ツーリズム大学」や「えがお大学院」の取組によって、人材育成に力を入れておられることです。
 都市農村交流事業の成功の可否は、個人の資質や能力によるところ大です。
 曽根原さんの活動の主なフィールドは山梨県です。その山梨県の人口・経済規模は全国の100分の1。曽根原さんと「えがおつなげて」が蓄積してきたノウハウが多くの人に共有され、山梨県で実現している取組が全国に波及していけば、相当規模の事業が実現することが期待されます。
 「えがお大学院」では、内閣府の事業を活用し、全国で45人の農村起業家、社会企業家が活動中です。農村起業家サポート募金サイトも開設されています。私の知人も熊本で「ひご野菜コロッケ」の店を展開されています。
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 曽根原さんは、講演を次のようにまとめられました。
 「活動を始めた17年前は、正直、変わり者と思われていたと思う。しかし最近は、都市住民を始めとして意識が大きく変わりつつあることを肌で感じている。農村資源に対するニーズはますます高まっており、特に大震災以降は農村のコミュニティが見直され、企業からの問い合わせ等も急増している。数年経てば、大きなムーヴメントになる。」
 曽根原さんはじめ「えがおつなげて」、そして全国の農村起業家の皆さんの地域に根ざした活動が、ますます拡がっていくことに、大いに期待したいと思います。