夏の北陸 ③富山「土遊野」における循環の取組

 8月5日(日)は金沢エコネット主催「地産地消のススメ」の2日目、{食とエネルギーの地産地消 見学ツアー」です。この日もいい天気に恵まれました。
 金沢駅西口に9時集合なのですが、8時半に優しい中村さんからモーニングコール。起きているか心配だったようです。昨夜も結局遅く(朝早く)なり、眠たいのは眠たい。
 さて、約30名の参加者が乗り込んだ金沢市の生涯学習バス「マナビー号」は、北陸自動車道を、一路、富山に向かいます。
 移動中の車中で、私から「私たちの食と農を考える-フード・マイレージから見えてくるもの-」と題した資料に沿って説明。昨日の説明は子ども(親子)向けだったので、大人向けに詳しい資料を、ということで説明させて頂きました。
 それにしても、金沢エコネットのプログラムは毎回、盛りだくさんで、参加者の皆さんも朝からのバス移動中まで大変かと思ったら、一番つらくて眠りたかったのは私自身だったかも。
 途中、事故渋滞で少々時間はかかりましたが、ほぼ予定の時刻に富山市の山間にある土(ど)という集落へ。
 振り向くと手前に神通川の清流、その向こうには富山平野が広がり、さらに先には日本海、右手に目を転じれば天気のいい日には立山連峰も望めるそうです。
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 待ち合わせの場所まで、最近、導入されたという電気自動車に乗ってこられたのは、「(有)土遊野」(どゆうの)の橋本順子さんです。
 富山での森林ボランティア活動に参加したことをきっかけに、1981年に東京から移り住んでこられた橋本さん、94年にご主人ともに農業法人「土遊野」を設立されました。その名前には、自然の中で暮らす知恵を学ぶ場、すなわち“土と遊ぶ野原”でありたいとの思いが込められているそうです。
 最初は「よそ者」でしたが、次第に地域の信頼も得て、集落を離れる農家の農地も任されるようになりました。
現在、地域の農家は1軒だけという典型的な「限界集落」です。
 バスに同乗して、案内をして下さいました。
 車窓から見る山間の棚田は、平地と違って畦(あぜ)の「のり面」が広く、その部分の除草だけでも膨大な労力がかかるそうです。米はアイガモ農法等による有機栽培で、有機JAS認定を取得しています。
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 経営の柱の一つが養鶏です。
 近年は鳥インフルエンザの関係もあって密閉型の鶏舎が増えていますが、ここは山の中の開放的な鶏舎で平飼いです。鶏もケージ(かご)に入れられているのではなく、自由に運動できます。また、飼料には輸入トウモロコシ等は使わず、飼料用米やくず大豆、米ぬか等を原料に自家配合した発酵飼料を用いているとのこと。一方、鶏ふんは有機肥料として農地に還元し、山羊の飼育や多品種の野菜栽培も含め、「有畜複合循環型農業」を実現しています。
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 また、自家製の小麦や米粉、卵等を使って天然酵母パンやシフォンケーキを加工・販売(地元生協等)するとともに、各種農作業、パン作り・そば打ち、陶芸等の体験活動や研修生の受け入れもされています。「六次産業化」の面でも先進事例です。
 地域にあった分校の建物が集会施設になっています。壁には児童歌の貼り紙が残されていました。
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 さらに先進的なことは、小水力発電や太陽光パネルを用いた再生可能エネルギーの活用によって、農家によるエネルギー自立を目指していることです。文部科学省の実証実験事業等も活用されているそうです。
 小水力発電は、400m上流の砂防堰堤から取水した水で水車発電機(ターゴインパルス水車、第1段目)を回し、続いて上掛け水車(第2段目)により発電を行い、バッテリーによる独立電源を確保するとともに、環境教育にも役立たせているそうです。
 道路沿いの水路には、さらに小規模の発電機も設置されており、街灯の電源を賄っています。
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 橋本さんがおっしゃていた「限界集落は宝の山。資源という宝がたくさんある」との言葉が印象的でした。
 土遊野という単独の農場による「食とエネルギーの地域循環」の取組。帰途、山道を下りながら再び富山平野を望み、その循環はこの地域に留まっている訳ではなく、川とも平野とも海とも、地球ともつながっていることが実感できました。
 「おわら風の盆」で有名な八尾(やつお)に向かいます。
 格子戸や土蔵、石畳の街並みの中に、今日の昼食会場「山元食道」があります。地元の職人達によって改装された町屋は、落ち着いた、それでいてモダンな華やかな雰囲気を醸し出しています。壁、梁、座布団まで、お店自体がギャラリーのようです。
 そして頂いたのがベーコンエッグ丼。
 卵は「土遊野」さんの平飼い卵。先ほどまで生産者の橋本さんの話を聞いていただけに、美味しさもひとしおです。ベーコンも地元メーカーの製品とのこと。地産地消の食材にこだわっておられます。
 食事後、おかみさんに店内を案内して話を伺わせて頂きました。2階からは「風の盆」の踊りの列がすぐ目下に見えるそうです。
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 昼食が終わり、金沢に帰る皆様とは別れて越中八尾の駅で下ろして頂きました。
 ほどなく来たJR高山本線の特急「ひだ」に乗車。富山駅ではくたかに乗り換え。何とか自由席に座れました。そして爆睡。前回と同じです。
 新幹線に乗り換え、カニずしと新潟のビールを頂いて、この夏の北陸の旅は終了しました。
 今回も金沢エコネットの皆さまには、大変お世話になりました。
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