原発 Yes or No ? 公開討論会

 9月8日(土)16時から、東急・大岡山駅前にある東京工業大学蔵前会館において、「原発 Yes or No ? 公開討論会 in 東工大」が開催されました。
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主催は「みんなで決めよう『原発』国民投票」。6月23日に続いての2回目の今回は、専門家による原発の安全性・技術論に的を絞った内容とのこと。
 開演30分前に行くと、既に多くの行列。男女は同数程度、年齢層も幅広いようです。
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 この日、登壇された専門家の方は、まず「原発推進派」として奈良林 直先生(北海道大学大学院工学研究院教授)と澤田哲生先生(東京工業大学原子炉工学研究所エネルギー工学部門助教)。
 ちなみに事前のチラシには「原発容認派」とあり、そのように紹介されたのですが、澤田先生が自ら「推進派です」と訂正される一幕もありました。
 一方の「原発反対派」は、後藤政志先生(元東芝・原子炉格納容器設計者、芝浦工業大学非常勤講師、NPO APAST理事長)と小倉志郎先生(元・原発技術者)です。
 主催者代表の鹿野隆行氏により開会、早速、司会のマエキタミヤコさん(サステナ代表)にマイクが渡され討論が始まりました。
 (以下、中田の文責で感想めいたものを書き連ねていますが、当然、言葉足らずの部分もあり、技術的な問題を含めて正確な発言内容等については、主催者のウェブサイトにある録画をご覧下さい。)
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 最初に、各先生方から5分ずつのプレゼン。
 まず後藤先生は、格納容器の設計に携わってこられた技術者としての立場・経験から、福島の事故で、結果として放射性物質を閉じ込める機能が失われてしまったことに愕然としたとの話。
 奈良林先生からは、 フィルターつきベントはヨーロッパのほぼ全ての原発に設置されていること、さらに建屋の水密化と電源確保を進めることが重要であるとの主張。
 小倉先生は、国会事故調の調査に参加された経験から、現場は今も線量が高く詳細な調査ができないこと、事故原因等はあくまで推定であり、起こった事故の大きさは無限大であるとの発言。
 澤田先生からは、誰が原発事故の最終責任を負うかさえはっきりしていないことが問題、放射性物質を完全に隔離することは不可能であることから「安全目標」の議論が必要、との意見。
 討論に入り、「推進派」の方から元技術者の「反対派」の方に対して、事故を想定した設計になっておらず詰めが甘かったのではないか、技術者として頑張りが足らなかったのではないか、との批判。
 これに対して「反対派」の方からは、一技術者、個人として警告してきたが決定権は電力会社。そもそも事故は起こらないと言っていた。過酷事故は設計で対応できるものではない、との反論。
 会場からは野次や不規則発言もあり、次第にヒートアップ。それでも、国会事故調の報告書の具体的なデータ等に基づく冷静な討論が進められます。
 司会のマエキタさんが会場からの発言を促すと挙手する人が多く、マイクを回す時間を節約するため、意見のある人は前に出て並んで順番に発言を、と。専門的な技術論を含め、様々な質問や意見が出されます。
 
 さらに途中休憩に入る前、司会者が、さらに意見のある人は私のところへと言った途端に多くの人が殺到。予定の休憩時間をオーバーしても行列は無くなりません。
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 再開後も、会場も交えてヒートアップした討論が続きます。
 奈良林先生は、石油資源は枯渇すること、ウクライナが原発をやめて経済破綻したこと、ドイツの太陽光買取価格も大きく引き下げられていること、ガラス固化技術により廃棄物貯蔵は可能であること等から、脱原発政策は進めるべきではないとの意見。
 これに対して会場からは、ドイツの現状について認識が違うと具体的な反論。そもそも輸入している石油のうち電力向けは5パーセント程度に過ぎず、石油がなくなるから原子力、という議論は短絡的との指摘。
 小倉先生は、今後どの位の大きさの地震がくるか分からないと地震学者が言っている現状では、普通の感覚なら止めるべきではないか。普通の人間が普通の感覚で、それぞれが判断してほしい、との意見。
 後藤先生は、原子力安全・保安院の「中間とりまとめ」も不十分で、確実でないことは安全とは言えない、確率論ではなく起こり得る事故の規模で判断すべしとの発言。
 野次や不規則発言が多かったことは、少々残念でもありました。
 意見が違う者同士で、相手のスタンスを尊重しつつ客観的データ等に基づいて討論するという民主主義の当たり前のプロセスが、まだ日本には根付いてはいないことの証かもしれません。
 それでも討論会の最後には「推進派」の先生にも大きな拍手が起こりました。
 時間の足らない中、膨大な質問や意見等にも応えつつ議論を仕切られた司会のマエキタさんの手腕も、素晴らしいものでした。
 終了後は会場近くの居酒屋に移動して「両派」入り乱れての懇親会。「推進派」の先生方も参加され、なごやかに懇親を深めつつ、「反対派」の方の意見には真剣に応えておられました。
 脱原発、反原発の集会やセミナーは数多くありますが、このような討論会、あるいは「推進派」の意見を聞く機会は、それほど多くはありません。
 その意味で意義は大きく、主催者の皆さまに感謝したいと思います。
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