小川町での稲刈り体験 ②条件不利地と新規就農

(埼玉県小川町におけるUS Peace ファーム主催の稲刈り体験会の参加レポート。前回の続きです。)
 休憩時間に頂いた「青山在来」の枝豆に手が止まりません。しかし、後は昼食時のお楽しみとグッと堪えて、稲刈り作業に戻りました。
 ここからが、この日の作業の本当の始まりだったのです。
 山際の水の豊かな田は、前日は雨も降ったそうで、ぬかるんでいます。
 中央部に向かって刈り進んで行くに連れ、粘土質の土は、次第に「ぐじゅぐじゅ」度が高くなってきます。生えている雑草も(有機栽培で農薬は使っていません)、一般的なヒエ等ではなく、オモダカなど水生のものが増えてきます。
 足を下ろすと、たちまち長靴の縁近くまで沈んでしまいます。今度は抜くのも一苦労。少し移動するのも大変です。
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 そのうちに直進できなくなり、なるべく沈まなさそうなところから枯れ草を敷き渡し、稲株の上に足を置くようにして慎重に近づくしかありません。ズボンの着替えを持ってきていないのに、何度も尻餅をつきそうになって冷や冷やです。
 稲刈りの体験は何度もありますが、このような湿田(というか、泥田)での作業は初めての経験でした。日頃の運動不足もあり、正直、キツいです。
 作業のペースは大幅に遅くなりましたが、それでもUS.PeaceファームのKさんを含め、参加者の皆さん、頑張ります。
 手元にゴザを引き寄せておいて刈った稲を載せます。ゴザが一杯になったところで、ゴザごと引っ張って乾いたところまで運んで、束ねる作業に移ります。
 束ねるのも、最初は教えられたように稲わらを使っていたのですが、不器用な私はしっかりと縛ることができず、途中から麻ひもをもらって使うようにしました。
 泥田との格闘が延々と続くかと思われた中、有井さんの神のような声が響きました。予定の13時を過ぎたようで、昼食の時間です。待ってました。
 田んぼの脇にテーブルが設けられ、車座になってビニールシートに座ります。
 この日は、有井さんや地元NPO・Tさん達の心づくしの、青山在来を中心とした献立。
 地域の在来種の大豆「青山在来」は晩生で、旬であるこの時期に、ここでしか味わうことができないという貴重品です。
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 その貴重な青山在来をはじめ、地元産の野菜等を使って、地元の方や、参加者の中におられた料理研究家の方の手によって、美味しい料理になりました。
 
 豆と野菜のサラダに豆ごはん。隣町の豆腐屋さんが青山在来で作った豆腐。サツマイモ、ジャガイモ、かぼちゃと油揚げの味噌汁。味噌や醤油も地元産の食材を使ったものです。緑茄子は焼き茄子になりました。
 他に、参加者が持ち寄って下さった肉味噌、そぼろ、お浸しなど。
 そして雑穀を使ったという地元醸造のビール
 この日は初めて参加された方も多かったそうで(私もそうですが)、自己紹介しながら話がはずみます。
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 お洒落な感じの女性が何人も参加されていましたが、デザイン関係の方たちだそうで、ファッション業界の中でも食に対して関心を持つ人が増えてきているそうです。
 エネルギーを補給して(ビールはちょっと補給しすぎ?)、再び、ぐじゅぐじゅ田んぼに取りかかります。
 かつて新潟県の蒲原平野では、船に乗って稲を作っていたという話を思い出しました。そこまで極端ではありませんが、田ゲタや板など、沈まないような工夫と道具が必要かも知れません。
 稲刈り機やコンバインを使えば、あっという間に終わる面積ですが、これほどぬかるんでいると機械は使えません。
 稲刈り作業と併行して、木枠を組んで(この地方では「ウマ」と呼ぶそうです)、刈った稲束を掛けて行きます。
 手前と奥とで6対4に分け、互い違いに掛けていきます。縛りが緩くてほどけてしまったものは、麻ひもで縛り直し。 
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 途中で小雨が降ったり日が射したり、不安定な天気でしたが、何とか刈り取っただけの稲を束ね、はざに掛けたところで、この日の作業は終了になりました。
 時計が15時を回ると日は傾き、山間であって、薄暗くなってきました。
 作業に夢中になっていて、一日が早いことに驚かされました。もともと農業も暮らしも、自然の摂理に従っていました。旧暦では、昼と夜の時間が違うことはよく知られていますが、普段はあまり意識しない自然の時間の流れも実感できました。
 わずか5畝の田、稲刈り機やコンバインを使えば、あっという間に終わる面積ですが、これほどぬかるんでいると機械は入らず、人の手に頼るしかありません。
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 この日の5畝(約5アール、500平米)の水田で、4~5人家族の1年分(1俵60kgで4~5俵)の米が獲れるのですから、農業というのは偉大なものです。
 しかし、これをお金に換算するとどうなるでしょうか。
 米の農家の手取り価格は、現在、1俵(60kg)1万円程度です。この日、素人とはいえ10人掛かりで1日かかったわけですが、それで4~5万円程度の収入にしかならないのです。
 もちろん、苗作りから田植え、草取りなど、多くの手間がかかっていることを考えると、お金に換算してみると、とても割に合うものではありません。
 これが日本の農業の現実です。だから、このような機械も使えないような「条件不利」な農地は、どんどん耕作放棄されているのです。
 その耕作放棄地が、有機農業を目指して新規就農した若い女性によって、再び耕作されるようになりました。
 そして、その取組を支援しようと、東京のシステム開発会社と地元のNPOとが立ち上がったのです。
 この日の作業は決して楽なものではありませんでしたが、美味しい食事も含めて、充実した体験会でした。少しでも多くの方に、このような体験をして頂ければと思います。
 ちなみに次回は、11月3日(土)に収穫祭を開催する予定とのこと。
 この日、はざ架けした新米が頂けるようです。ご興味のある方は、主催者までお問い合わせください。
 再び車に分乗して駅へ。
 Tさんが運営されている「ベリカフェ」に立ち寄ってビールを頂きながら、Tさんと少し話をしました。頑張っておられる主婦の方ですが、色々と大変なこともあるようです。
 そして帰途へ。数日、足腰の痛みに苦しむことになりました。
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