F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.005

================================================================

 ◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

    No.5 ; 2012.11/28(旧暦 神無月十五日・大潮)発行

================================================================

 

 フード・マイレージや伝統野菜等について様々な情報を発信しつつ、

読者の皆様からのご意見や投稿も積極的にお受けし、食と農の未来につ

いて、ともに考えていきたいと考えています。

 


—————————————————————-

  F.M.豆知識

   1 輸入食料のフード・マイレージの「試算」 (5)試算の結果

 

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

—————————————————————-

 前回まで、輸入食料のフード・マイレージ(輸入量に輸送距離を掛け

合わせた指標)の「試算」については、フード・マイレージという概念

または考え方を初めて世に問う(紹介する)ことを目的としていたため、

輸入相手国は上位15ヵ国に限定、輸送距離は首都間の直線距離とするな

ど、簡便な方法を用いたこと等について述べてきました。

 

 そしてようやく、「試算」の結果が明らかとなったのです。

 2000 年(暦年ベース)における日本の食料輸入総量は約5,300万トン

で、これに輸入相手国毎の輸送距離を乗じて累積したフード・マイレー

ジは、約5千億トン・キロメートルとなりました(後に「定番」となる

9千億トン・キロメートルと異なることに留意下さい)。

 この大きさ自体についてはピンと来ませんが、日本国内における1年

間の食料を含む全ての貨物輸送量にほぼ匹敵する水準です。

 

 また、比較のため、韓国とアメリカについても試算しました。

 なぜこの両国を選んだかというと、まず、韓国は日本と同様に食料供

給の相当部分を輸入に依存していること、アメリカは世界最大の食料輸

出国であると同時に、実は世界最大の食料輸入国でもあるためです

(後に、この2カ国を含む5ヵ国と比較することになります)。

 

 試算の結果は、韓国は約1,500億トン・キロメートル、アメリカは約

1,400億トン・キロメートルでした。

 つまり、日本の輸入食料のフード・マイレージは、韓国の約3.4倍、

アメリカの約3.7倍であることが明らかになったのです。

 

 次に、人口1人当たりのフード・マイレージを比較しました。

 輸入食料のフード・マイレージは全体についてみたものですから、

当然ながら、国の規模(人口や経済規模)により大きく異なります。

このため、1人当たりのフード・マイレージも併せて試算することとし

たのです。

 

 日本の人口1人当たりフード・マイレージは、約4,000トン・キロメ

ートルとなりました。

 これに対し、韓国は人口が日本の4割弱であるため、1人当たりでは

3,200トン・キロメートルと日本にかなり近くなりますが、それでも

日本の約8割の水準です。

 一方、日本の約2.2倍の人口を擁するアメリカの1人当たりフード・

マイレージは約500トン・キロメートルとなり、日本の1割強の水準に

過ぎなくなります。

 

 以上のように、総量でみても1人当たりでみても、日本の輸入食料の

フード・マイレージは、韓国、アメリカと比べて相当大きなものとなっ

ていることが分かりました。

 日本は食料自給率が低く、人口もそこそこ多いため、日本の輸入食料

のフード・マイレージはかなり大きくなるであろうことは予想していま

したが、ここまで突出しているとは、ある意味、試算した本人にとって

も衝撃的なものでした。

 

 そして次の課題は、なぜ日本の輸入食料のフード・マイレージがこれ

ほど大きいのか、その背景や要因を探ることでした。(次号に続く。)

 

 参考:「フード・マイレージ」の試算について[農林水産政策研究所

   レビュー No.2, 2001

http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/review/pdf/primaffreview2001-2-7.pdf

 

—————————————————————-

  オーシャン・カレント −潮目を変える−

 

  食や農の閉塞状況を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り

 組んでおられる方達を紹介するコーナーです。

—————————————————————-

 さいたま市の「生活文化・地域協同研究会」(通称「協同研」、1991

設立)は、「いのち」と「くらし」をキーワードに、学び合いながら、協

同の力で生活向上をめざす市民のネットワークです。

 

 具体的な活動として、月1回の定例会(「いいだしっぺ」会員から話題

を提供し討論)、「高齢期を安心して暮らすためのいきいきセミナー」な

どセミナー・シンポジウムの開催、イベントの企画・相談、各種調査・

研究活動等を行っているのですが、これら多岐にわたる活動の柱の一つ

となっているのが「野の文化学習会」です。

 

 これは、協同研創立2年目の1992年、秩父の横瀬町宇根地区の農家の方

や東京農工大学のサークルと連携してスタートしたものです。

 

 「野の文化学習会」のねらいについて、代表の菊池陽子さんは「食べる

ことは生きること。親子で自然とふれあい、農の文化から学び、日頃の親

子関係や暮らし方を見直す機会にしたい」とされています。

 

 今でこそ、多くの農業体験会等が行われていますが、協働研では20年前

から先駆的に取り組んでいること、単なる体験に留まらず、地元の方との

交流を通じて農業や農村文化を学習ことを主眼としているという点で、特

徴的です。

 

 秩父での取組は20年目を期に終了しましたが、8年前からは見沼田んぼ

でも開催されるようになり、現在も継続しています。

 「見沼田んぼ」とは、さいたま、川口2市にまたがる約1,260haの農地や

平地林で、豊かな自然環境や歴史に加え、洪水防止など都市防災上の大き

な機能も有している地域です。

 

 本年は、527日の田植え、624日の「かっぱなし」(田の草取り)と

じゃがいも掘り、930日の稲刈り、1021日の「おひまち」(収穫祭)

とさつまいも掘りと、開催されてきました。

 子どもたちの感想文や絵をみると、これら体験から強い印象を受けた様

子が伺えます(下記のウェブサイトにも掲載されています)。

 

 さて、いよいよ129日(日)の「餅つきと凧づくり・凧上げ」が、今

年の最終回です。

 1年間を通しての参加が原則ですが、最終回のみの参加も可能とのこと

ですので、ご関心のある方はお問い合せ下さい。

 

 野の文化学習会「見沼田んぼ米づくり体験2012」(129日)

  http://www.kyodoken.com/p/blog-page_3915.html

 

—————————————————————-

  情報ひろば

 

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ウェブサイトやブログ

 の更新情報、読者の方からの投稿(告知等)をお知らせします。

—————————————————————-

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」

・管理者の当面の予定です。

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-profile.html

 

  12 2日(日)10:30〜、「わいがや勉強&交流会」

   於 埼玉県新座市西分集会所(JR武蔵野線新座駅徒歩15分)

   (詳細、お問合せ等

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/121202_waigaya_tirasi.pdf

 

 ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 ・1122日付け

  イベント2題−「土と平和の祭典」と「全快野菜屋ちゃん」−

   日比谷公園で開催された大規模な収穫祭兼マルシェと、品川の商

  店街で開催された地域密着型の即売会の模様です。

  http://food-mileage.jp/2012/11/22/

 

 ・1123日付け 「耕せば分かる」−二本松・菅野正寿さんの思い−

  ソーシャル・ジャスティス基金主催アドボカシーカフェの講師は、

 福島県有機農業ネットワークの菅野理事長。

  原発災害下にある福島の農業の現状と、都会に住む人に期待するこ

 と−現地のことに想像力を及ぼして欲しい、農業のことは自ら耕せば

 分かる、等。しっかりと受け止める必要があります。

  http://food-mileage.jp/2012/11/23/

 

 管理者が参加予定または関心のあるイベント等について、勝手に紹

 介しています。

 

 緊急対談・山本太郎×鈴木宣弘

 「衆院選投票前に聞かないと後悔する 知りたかったTPPの話」

  日時:1128日(水)15:00

  場所:大田区消費者生活センター2F講座室

    (JR蒲田駅東口3分)

  主催:「モンサントの不自然なたべもの」上映実行委員会

  (詳細、お問合せ等

  http://ameblo.jp/nasurie/entry-11411787993.html

 

 研究会「有機野菜の生産・販売の強みとマーケティング

       〜久松農園の具体的事例から〜」

  日時:1128日(水)19:0020:50

    講師:久松達央氏(野菜農家、茨城県土浦市)

  場所:ちよだプラットフォームスクウェア501会議室

    (メトロ東西線竹橋駅徒歩5分)

  主催:農業情報総合研究所/農業ビジネス研究会

  (詳細、お問合せ等

   http://www.facebook.com/?ref=logo#!/events/371804979571444/

 

  秋そばづくり第5弾「地大豆の脱穀、冬伏せ」

  日時:121日(土)〜2日(日)(日帰り参加も可)

  場所:山梨県上野原市西原地区(10:10 JR中央線上野原駅集合)

  主催:しごと塾さいはら

  (詳細、お問合せ等

  http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

 

  「地域にひろげる有機農業全国交流集会」

  日時:127日(金)〜8日(土)

  場所:国立女性教育会館(埼玉県嵐山町)、小川町(ツアー)

  主催:NPO法人全国有機農業推進協議会

  (詳細、お問合せ等

  http://www.zenyukyo.or.jp/info/244.html

 

  第13回「日本有機農業学会(東京)」大会・総会

  日時:128日(土)〜9日(日)

  場所:東京農工大学大学農学部(府中市)

  主催:日本有機農業学会

  (詳細、お問合せ等

  http://www.yuki-gakkai.com/

 

================================================================

 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

================================================================

  発行者:中田哲也(フード・マイレージ資料室 管理者)