ダウンシフターズ

 去る12月3日(月)の夕方は、冷たい雨になりました。
 開会の10分ほど前に、神田淡路町の路地にある「PARC自由学校」の2階に上がると、さほど広くない会場はほぼ埋まっていました。
kosaka_1_convert_20121207233200.png この日、開催されたのは「★STOP TPP! 特別トークライブ★-TPPみたいなインチキカラクリシステムからドロップアウトしようぜ。下から目線でダウンシフトだ。」
 カゲキなタイトルをつけたのは、この日の講師である髙坂勝(こうさかまさる)さんです。
 髙坂さんは1970年横浜生まれ。勤務していた大手デパートを30歳で退社し、池袋に小さなオーガニック・バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」をオープン。NPO法人SOSA Project代表。
 2010年には『減速して生きる ダウンシフターズ』を出版されるなど、執筆、講演、ライブなど、積極的に活動されています。kosaka_0.png
 「たまTSUKI」には何度かお邪魔したことがあり、先日の「土と平和の祭典」等でも話を伺いましたが、まとまった講演をお聞きするのは初めてです。
 ご自身も地ビールの缶を片手に、くつろいだ雰囲気の中で話は始まりました。
 1999年11月、新ラウンド立上げに向けてシアトルで開催されたWTO閣僚会議が、市民の反対運動等によって失敗した様子を目の当たりにし、答が見えたそうです。デモに参加したような5万人の市民の一人になりたい、と。そして、オーガニック・バーを開店されたとのこと。
 TPPに関しては、ISD条項(外国投資家が国家を提訴できる規定)やラチェット条項(一度受け入れれば後戻りができないという規定)の問題点を指摘しつつ、そもそもTPPは全ての権利を商品化しようとするものであり、単なる貿易問題ではなく人権問題である、と。
 さらに、今の日本は発展“過剰”国。
 「ダウンシフターズ(減速生活者)」とは、既存の巨大なシステム・大量消費社会から自ら降りた人。社会システム自体にガタが来ており、自分たちが主人公となって創り直すことが必要と主張されます。
 自分は退職して年収は半減したが、今の方が幸せとのこと。
 「たまTSUKI」は、当初は週休1日だったのが後に週休2日に変更し、千葉・匝瑳(そうさ)市に通って米と大豆の自給ができるようになったそうです(ちなみに、今は週休3日とのこと)。
 3畝(3アール)で150kg獲れたそうで、同じように全国の休耕地に作付ければフリーターや非正規雇用者全員分の米を生産できる計算になります。
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 そして設立したNPO「SOSA project」のテーマは自給。
 「自給」とは、「自」ら「糸」を「合」わせること。もういちど自然と繋がり直す、人と繋がり直す。自給が自信に、自立に、そして自由と安心につながるそうです。
 現在、匝瑳市では約60人が自給を実現しており、さらに約300人が農業体験や援農に来る。移住者も6人いて、来年はさらに4人が移住予定とのこと。
 移住された1人、聴覚に障害のある女性の言葉、「うつの人が私の所に来て元気になるのを見て、耳が聞こえなくて良かったと思った」と。
 自分が得意/好きなことを商売にする。自分の欠点/短所が他人の商売になる。自分も楽しみ、人も喜んでくれて、世の中もよくなる「三方良し」の世界。
 このような小さな生業(なりわい)の循環と分かち合いが進んでいけば、国民総自給型社会、国民皆農的社会が実現する。
 
 ヨアン・ノルゴー(デンマークの環境学者)の「未来は予測するものでなく、選び取るものである」という言葉も引用されました。
 そして、現在は昔のように一握りの偉人が世の中を変えていく時代ではなく、小さな一人ひとりの微力を合わせて変えていく時代であると、繰り返し強調されていたのが印象的でした。
 この日の髙坂さんのトークは、質疑も含めて21時頃にいったん終了、引き続き同じ会場で懇親会に。
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 飲みものは、寺田本家(千葉県神崎町)の日本酒、長野県佐久市の地ビール。そしてオーガニック・コーヒーなど。
 有志の方により健康にこだわった食事も並べられ、髙坂さんを交えて22時過ぎまで盛り上がり、建物を出ると雨は上がっていました。
 ダウンシフトというと、何となく世捨て人のような語感があるかも知れません。しかし、髙坂さんは決してそのようなタイプの方ではありません。
 軸足は土の上(農)に置きつつも、もう片足はコンクリートの上(市場経済)に乗せておくことが重要とのこと。さらには、最近、設立された政党の共同代表を務めておられます。
 一人ひとりが主人公となって社会を変えていくことの重要性。
 折しも大震災後初めての衆議院選挙が間近、東京では知事選挙もあります。まずは投票所に足を運び、鉛筆で自らの意志を表明することからスタートです。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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