F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.007

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 ◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.7 ; 2012.12/12(旧暦 神無月廿九日)発行

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 2012年の1212日にラッキーナンバー「7」号です。

 特に北陸や北日本では厳しい天候が続いているようですが、いかがお

過ごしでしょうか。

 フード・マイレージや伝統野菜等を手掛かりに、私たちの食と農の未

来について共に考えていく本メルマガ、以下、今回のコンテンツです。

 


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  F.M.豆知識

   1 輸入食料のフード・マイレージの「試算」

 (7) 5千億と9千億

 

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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 前回まで、輸入食料のフード・マイレージを最初に試算した結果につ

いて、説明してきました。

 そして最後に、日本の輸入食料のフード・マイレージの数字について、

この時の5千億トン・キロメートルと、後に計算し直した9千億トン・

キロメートルの2種類の数字が公表され、混乱を招いてしまったことを

述べました。

 今回は、このあたりの事情を少し詳しく捕捉しておきます。

 

 まず、いずれの数字も農林水産省の農林水産政策研究所が公表した数

値であり、実際に計算等の作業を行ったのは私です。

 対象年次は、5千億は2000年(公表は200112月)、9千億は2001

年(同200312月)ですので、1年でフード・マイレージが一気に1.8

倍にも増えたのかと驚いた方もおられたようですが、もちろん、そうい

う訳ではありません。

 この両者の違いは、ひとえに、計算方法の違いによるものです。

 

 フード・マイレージとは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指

標です。この量と距離の両面で、変更を行っているのです。

 

 まず、量に関しては、食料の範囲について「試算」ではHS(貿易統計

の品目分類)表の2桁ベースで把握していたのを、4桁ベースによる把

握に変更するとともに、輸入相手国についても、「試算」では上位15

国に限定していたのを、全ての国・地域に変更(わが国の場合は226国・

地域)にしたことから、把握する対象が拡大しました。

 この結果、輸入量は1.1倍に増加しました。

 

 さらに、輸送距離の把握方法の変更が、より大きな影響を及ぼしまし

た。「試算」では輸送距離を首都間の直線距離と仮定していたのを、海上

輸送距離を中心とするものに変更したのです。

 この結果、平均輸送距離は「試算」の1.6倍となったのです。

 

 以上のことは、5千億、9千億トン・キロメートルといった数値自体は

計算方法によっていくらでも変わるものですから、あまり意味はないこ

とを示しているとも言えます。

 むしろ、同じ基準で計算した場合に、アメリカや韓国等と比較して、

日本の輸入食料のフード・マイレージが際立って大きいことに意味があ

るのです。

 

(参考)

「フード・マイレージ」の試算について[農林水産政策研究所レビュー

 No.2, 2001

http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/review/pdf/primaffreview2001-2-7.pdf

 

「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負

 荷に関する考察」[農林水産政策研究 No.5, 2003

http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/seisaku/pdf/seisakukenkyu2003-5-2.pdf

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

 

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 今年、東京の小金井市において、注目される講座が開催されました。

 その名は「江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座」。

 

 江戸東京野菜の普及とそれによる地域振興に貢献する人材づくりを目

的に、東京都の助成を受け、地元の行政やJA、学生団体、NPO等から構

成される「江戸東京野菜コンシェルジュ育成協議会」(会長は江戸東京

・伝統野菜研究会の大竹道茂氏)が実施したものです。

 

 大竹会長、料理研究家、生産者、事業者、高校の先生などを講師に、

ほぼ毎週土曜日の7回の連続講座が2期にわたって開催されました(私

もフード・マイレージをテーマにしたグループワーク等を担当させて頂

きました)。

 

 受講生は合計で約70名。生産者、小学校の栄養教諭の先生、市場や種

苗会社・飲食店の方、料理研究家やフード・コーディネータ、マスコミ

関係、行政、それに一般の主婦の方など、それぞれの立場で、食と農に

対して強い関心を有しておられる方達です。

 

 そして129日(日)、第2期の最後の講座と修了式が行われました。

 以下、1年間、協議会の事務局を担当されたHさんの感想です。ちな

みにHさんは若い女性で、農業の専門家ではありません。

 

「(毎回、講座後に提出する)課題レポートを拝見すると、直接生産や

販売等に関わっていない方(主婦の方も含めて)でも「今後、江戸東京

野菜を広めるためにどうしたらいいか」と真剣に向き合っていただいて

いる様子が伝わってきます。

 ひとりひとり、一個人として、まず知り、食し、伝えていく(ママ友

の会、飲み仲間の会・・・)ことが大事と思いました。」

 

 社会を変えていく(いける)のは、社会の構成員である一人ひとりの

意識と行動です。

 「江戸コン」に集った方達の、今後のネットワークの拡がりに大いに

期待しています。

 

(公式サイト「江戸コンだより」http://edocon831.seesaa.net/

 

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  情報ひろば

 

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ウェブサイトやブログ

 の更新情報、読者の方からの投稿(告知等)をお知らせします。

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 ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 

125日付け 雑木林(ぞうきりん)の里のネットワーク

 

 野火止用水や平林寺があり、農地と雑木林に恵まれた環境にある埼玉

県新座市においては、環境教育のネットワークが積極的に活動していま

す。「わいがや勉強・交流会」の模様など。

 http://food-mileage.jp/2012/12/05/

 

128日付け ダウンシフターズ

 

 池袋のオーガニックバー「たまには月でも眺めましょ」オーナーの_

坂勝さんのトークショー。減速して生きる、そして一人ひとりが主人公

になって社会を変えていく。

 http://food-mileage.jp/2012/12/08/

 

1210日付け 有機農業の未来

 

 8日に東京農工大で開催された日本有機農業学会では、推進法制定と

いう「事件」から8年、政策も運動も変質しつつあることへの危機感と、

未来への展望等について議論がなされました。

 http://food-mileage.jp/2012/12/10/

 

 

 管理者が参加予定または関心のあるイベント等を紹介します。

 

 銀座農業政策塾特別勉強会「緊急企画!TPPをいかに考えるか?

   〜国家ビジョンなき無責任な改革論を排す〜」

 日時:1213日(木)19:0021:00

 場所:銀座三丁目 「銀座会議室」

 講師:蔦谷栄一氏(農林中金総合研究所 特別理事)

 主催:NPO法人農業環境イニシアティブ、戦略経営研究会

  (詳細、お問合せ等

 http://m-motegi.at.webry.info/201211/article_6.html

 

「蒟蒻作って!料理作って!畑で汗かいて!乾杯!」

  (greensmilein檜原村〜檜原村のこんにゃく作り体験〜)

 日時:1215日(土)9:2017:00

 場所:檜原村(9:20 JR武蔵五日市駅集合)

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

 http://www.facebook.com/#!/events/298518156925239/

 

 国際有機農業映画祭2012

  「こんな世の中、ひっくり返さなあきまへん」

 日時:1216日(日)10:0020:30

 場所:法政大学市ケ谷キャンパス

 共催:国際有機農業映画祭運営委員会、

    法政大学サステイナビリティ研究教育機構

 (詳細、お問合せ等) http://blog.yuki-eiga.com/

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也(フード・マイレージ資料室 管理者)