全国消費者大会分科会「食の今を考える」

 2013年1月25日(金)から1月26日(土)の2日間、四ツ谷駅に近い主婦会館(エフプラザ)において、「第51回全国消費者大会」が開催されました。
 大会実行委員会の事務局は全国消費者団体連絡会が担っています。
 今年の大会テーマは「発信しよう私たちの声を!行動しよう安心できる社会のために!」。
 東日本大震災被災2年を経て、必要な災害対策と消費者・消費者団体が果たすべき役割を考える全体会のほか、「消費者政策」「平和」「食」「社会保障」「環境・原発とエネルギー」の5つの分科会が開催されました。
 私はこの中で、26日(土)に開催された「食」分科会に参加しました。気温は低いながら好天の一日です。
 日本消費者連盟の山浦康明事務局長の開会挨拶に続き、「食の今を考える」とのテーマで、朝日新聞編集委員・記者の大村美香さんから講演が行われました。
 大村さんは入社以来、主に食の分野について取材を重ねられてきたとのことで、共著『あした何をたべますか?』(2003)もあります。
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 最初の話題は食品の放射性物質汚染について。
 新基準の算出方法、食品検査の現状(行政だけではなく生協等の消費者団体も行っている内容を含め。)等について説明がありました。
 
 また、行政等によるリスク評価はどうしても集合的・統計的視点(統治者の視点)となり、「市民のリスク理解は主観的で、『正しい』情報を分かりやすく伝えれば、リスクが理解される」という啓蒙的視点は的外れであるとのこと。食品の分野は選択肢がたくさんあり、科学だけでは決められず、多様な価値観の中で、ステークホルダーが話し合って対応していくしかないとの説明でした。
 続いて、腸管出血性大腸菌などによる食中毒事件が大規模化していることの背景に、発生場所が家庭から飲食店、製造業へとシフトしつつあること、大量生産と広域流通・チェーン店の増加があること等について説明がありました。
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 さらに、BSE対策の見直し案について、各国の飼料規制の有効性についての議論が不十分ではないかとの指摘、食品表示制度の見直し案については、栄養成分表示の導入は食のリスクを抑える方策として有功であること等について説明がありました。
 最後に、消費者団体に対して、政府の審議会等における議論をリードすること、大学等との連携を強化すること等の期待を述べられました。
 休憩後の後半は、8名程度ずつのグループに分かれてのディスカッションです。
 「今日の講演で心に残ったこと、ピンと来たこと」「消費者(団体)として何ができるか」について、各々付箋に書き出し、意見交換しながら大きな紙に貼っていきます。
 そして最後に、グループ毎に議論の内容を発表。
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 今日は幅広いテーマについて話が聞けてよかったという感想に加え、一般の方、特に次世代の若い人たちにアピールしていくことが大事、個人が判断するための情報をどのように提供していくかが重要等の意見がありました。
 さらには、行政や企業を含め、みんなで議論し考えていく場を作っていくことが重要であること、消費者の思いをもっと他の人に伝えていくことが必要であること等について、発表がなされました。
oguma.png 発表を聞きながら、先日読んだ小熊英二『社会を変えるには』 (2012/8、講談社現代新書) を思い出していました。
 この本においては、かつての日本社会では多くの人は「どこか」(会社、官庁、商店会、農協、労組等)に属していたのが、1990年代半ばから経済の停滞に伴い日本社会の構造が変化(「自由」が増大)し、無党派層の増加や投票率の低下につながっていると分析されていました。
 そして、社会を変えていくためには、「対話」を通して新しい「民意」を作っていくしかないとされています。
 特定の「どこか」から外れて自由になる市民が増えていく中、消費者が自ら考え対話する場を提供する消費者団体の役割は、ますます重要となっていくものと期待されます。
 また、本日のように、全国の生協等において活動されている方達が一堂に会して議論されている様子に触れ、心強く感じた次第です。
 実はこの日、偶然にも消費者団体の重鎮の方2名と同じグループになってしまい、緊張してしまったのですが、色々と貴重なご意見を聞かせて頂くことができました。
 有意義な会合でした。講演された大村様、参加者の皆様、事務局の皆様にお礼申し上げます。
IMG_6041_convert_20130128000446.jpg  ところで、この日(1月25日)は、旧暦では師走十五日の満月の日に当たります。
 冴え冴えとした夜の空に、満月が輝いていました。
 個人的には、旧暦の朔日(1日、新月の日)と十五日(満月の日)に定期配信しているメールマガジンも、12号を数えることとなりました。
 どこまで続くことやら。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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