高円寺「うおこう寄席」

2013年2月10日は旧暦元旦でした。ということで、明けましておめでとうございます。
風が冷たい日もありますが、立春を過ぎ、朝、明るくなる時間も早くなってきました。
もっとも、杉花粉の飛散が確認され、加えて隣国の大気汚染も。浮き浮きするばかりの春ではありません。
先日、埼玉・小川町の農家の方が霞ヶ関に見えられ、有機栽培の野菜を頂きました。消費者との提携のみで生産されているので、一般には入手できない貴重なものです。
早速、他の人参との食べ比べをしてみました。生と茹でたもの。私のような味音痴にも、甘さとコクの違いがはっきりと分かりました。
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2月9日(土)も快晴です。
15時から東京・高円寺の魚料理専門店「うおこう」の2階で、恒例の「うおこう寄席」が開催されました。
2月8日~17日の間、開催されている「高円寺演芸まつり」の関連企画の一つです。
いつもながら、高円寺駅北口の庚申通り商店街は多くの人出。
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2階に上がると、会場は、約20名ほどの参加者でぎっしり。吊るし雛や布絵が飾られ、華やかな雰囲気です。
主催者の「うおこう」の女将さんでもある松井つるみさんの挨拶。
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後の幕間には、江戸東京野菜の普及に取り組んでおられるNPOミュゼダグリの納所さんから、三河島菜のミニ講座もありました。
130209_3-2_convert_20130211083417.png この日の出演は、立川笑二さん(前座)と立川吉笑さん(二つ目)。
ともに20代、新進気鋭の江戸落語の実力者のお2人です。もっとも笑二さんは沖縄出身、吉笑さんは京都出身で、いずれも立川流にあこがれ上京して噺家になられたとのこと。
笑二さんは、前座暮らしの悲しさをマクラに笑わせた後、古典「初天神」をそつなく演じられました。きかん気の子どもに、丸顔の笑二さんはお似合いです(童顔とはちょっと違いますが)。
(ちなみにこの日は笑二さんの写真を取り損ね、右の写真は昨年8月の時のものです。すみません。)
続く吉笑さんの1席目は、お馴染み「大根や」騒動。
江戸の町を舞台に、亀戸大根、練馬大根、伝統大蔵大根の販売合戦が繰り広げられるという「江戸東京野菜落語」。吉笑さんの創作です。
130209_3_convert_20130211083358.png 実はこの演目を観たのは3回目です。
大きな設定や枠組みは変わらないのですが、販売合戦の果てに「ブランドや売り言葉ではなく、大事なのは地産地消」といった科白が入るなど、ストーリーやオチは確実に「進化」していると思いました(素人がエラそうに恐縮です)。
休憩後のもう1席は「くじ悲喜」。
キャストは、箱の中で引かれるのを待っている3本の「くじ」という奇抜な設定の創作落語。何とこちらは関西弁、バイリンガルです。
鬼才・吉笑さんの面目躍如で、楽しませてもらいました。
そして、お2人も参加して下さってお楽しみの懇親会。
テーブルの上には、生産者も書かれた手書きの献立表が置かれています。
「うおこう」定番の刺身の盛り合わせと鰤カマ焼きは、いつも通りの豪華さ、大きさです。
落語にも出てきた大蔵大根は、伝統種のもの(伝統大蔵大根)と一般に流通しているものの2種類について、大根おろしの食べ比べ。それに、ふろふき大根も。生産者は杉並区の井口幹英さんです。
説明のあった三河島菜は、都立園芸高校の産。揚げと醤油で炒められました。
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日本酒も東京のものということで、東村山・豊島屋酒造の白酒、純米無濾過生原酒「十右衛門」、そして「金婚」本醸造辛口など。
練馬大根の酵母を使ったパンのカナッペは、金婚の酒かすとクリームチーズが乗せられています。
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豪華で美味しい料理が並ぶ中、メインの食材は「北浜わかめ」のしゃぶしゃぶでした。
ざく切りされた皿の上のわかめは黒褐色。これを熱湯にくぐらせた途端、鮮やかな緑色に変わります。
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このわかめ、岩手・大船渡の「北浜わかめ虹の会」のものです。
東日本大震災の大津波により、養殖施設や船、加工施設は壊滅的な打撃を受けた中から、名産の北浜わかめを復興するために取り組んでおられます。
三陸に春を告げる「末崎のまっさきわかめ」は、この時期しか食べられない旬の味です。
この日は、北浜わかめ虹の会を支援されている中野区の手芸グループ「夢布人」(ゆめふじん)の皆様により提供頂きました。
吊るし雛を創って下さったのもこの方たちだそうです。
また、壁の布絵は、やはり東北支援で割烹着を縫っているブレーメングループの方たちによるものとのこと。
主催者の松井さんの人脈の広さには、毎回、驚かされます。
しゃぶしゃぶには、伝統小松菜と一般の小松菜も入れて食べ比べも。
昨年末の「共奏キッチン!」で食べて美味しかったので、と大根餃子も。これは餃子の皮の代わりに大根を薄くスライスしたもので、鰯つみれと豚のひき肉を挟んで焼き上げるもの。
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埼玉・小川町の人参も、1本持参したものを生のまま薄くスライスして出して下さいました。皆さん、かなりお腹は足りていたはずですが、すぐにお皿は空に。
デザートには、珍しい「焼酎屋のぼんぼん」(黒木本店)も。
気がつくと、時間がかなり過ぎていました。
わかめは、少しお土産にも頂きました。
美味しい落語と美味しい料理と美味しいお酒に、心もお腹も豊かに膨らむ夜でした。
江戸東京野菜実の知名度も、多くの関係者の皆さんの努力によって、かなり上がってきましたが、食べものや農業にあまり関心のない「普通」の人たちに、まずその存在を知ってもらうという意味では、落語を通じた取組は大いに有効なものと思われます。
「大根や騒動」のますますの進化にも、期待したいところです。30年後には「古典」になっているかも。
【ご参考】
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