F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.018

================================================================

◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.18 ; 2013. 4/24(水)[旧暦 弥生十五日]発行

================================================================

 

 4月も下旬、間もなくゴールデンウィーク到来です。

 時の流れを感じ取って頂く一助とするため、旧暦の毎月1日と15日に

配信している本メルマガ、今回は弥生十五日の配信です。

 さる420日(土)は二十四節気の「穀雨(こくう)」でした。この

頃に降る雨は百穀を潤すとされます。夏も近づいています。

 


—————————————————————-

  F.M.豆知識

   3 フード・マイレージを考える背景

  (5)「食の激変」の悪影響 ウ 食に対する不安感の高まり

 

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

—————————————————————-

 前回は、「食の激変」が栄養バランスの崩れを招き、私たちの健康面

に大きな問題をもたらしていることを紹介しました。

 

 今回は、「食の安心」の問題を取り上げます。

 農林水産省「食料品消費モニター定期調査」(2007年度第3回)では、

食品について安心と感じているか、それとも不安と感じているかについ

て、項目・段階毎(注)に聞いています。

 

(注:農畜水産物の生産過程、輸入農産物・輸入原材料等、製造・加工

  工程、流通過程、小売店、外食店舗、家庭での取り扱い方)

 

 それによると、「家庭での取り扱い方」については安心感が極めて高

い(「安心」と「どちらかというと安心」の計が91%)のに対して、

「輸入農産物・輸入原材料」「外食店舗」については、逆に大きな不安

感を有しています(「不安」と「どちらかというと不安」の計が92%、

69%)。

 

 一方、厚生労働省「食中毒統計」によると、20022011年の10年間に

おける食中毒による死者数は64人ですが、そのうち6割近い37人は家庭で

亡くなっています。

 これらは、ふぐ毒や毒きのこ等による特殊なケースではありますが、

食に関して客観的にみて安全性が最も低い(リスクが高い)のは家庭と

いうことになり、先のモニター調査結果とは大きく異なっています。

 

 このように、客観的・科学的な「安全(またはリスク)」の大きさと、

消費者の主観に基づく「安心感」とは、大きくかい離しているのです。

 

 それでは消費者はなぜ、輸入品等に対して大きな不安感を抱いている

のでしょうか。

 その背景には、2008年の輸入冷凍餃子による健康被害の発生など個々

の事件・事故もあるものの、基本的には、食(食料消費の現場)と農

(食料生産の現場)との間の距離が離れてしまっているという事情があ

ると思われます。

 つまり、自分たちが食べているものが、どこで、誰によってどのよう

に生産されているかが目に見えにくくなっていることが、食に対する大

きな不安感につながっているものと考えられるのです。

 

 「食と農の間の距離の拡大」の一因に、輸入食料の増加があります。

 このこともまた、食生活の激変(国内で自給できる米消費の半減、飼

料や原材料を輸入に依存せざるを得ない畜産物や油脂の消費の急増)に

よってもたらされた結果なのです。

 

(参考)

 農林水産省「食料品消費モニター調査結果」

  http://www.maff.go.jp/j/heya/h_moniter/

 

 厚生労働省「食中毒事件一覧速報」

  http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/04.html

 

—————————————————————-

  オーシャン・カレント −潮目を変える−

 

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

—————————————————————-

 

 吉田俊道さんという、すごい方がおられます。

 1959年の生まれ。九州大学大学院を修了し長崎県職員(農業改良普及

員)になられましたが後に退職、現在は、自ら有機農業に取り組みつつ、

NPO法人「大地といのちの会」の代表として、「生ごみリサイクル元気野

菜作り」の実践指導や講演活動を全国で展開されている方です。

 

 調理くずや食べ残しを混ぜた土は微生物(菌ちゃん)で豊かになり、

そこで栽培すると、無農薬でも虫はほとんど来ず、切ってもなかなか腐

らない生命力の強い「元気野菜」(菌ちゃん野菜)ができます。

 

 この「元気野菜」は微量栄養素やミネラルが豊富で、これを給食等に

使って食生活改善に取り組んだ保育園では、病気で欠席する児童が激減

した事例もあるそうです。

 

 吉田さんが子ども達に伝えているのは、単なる野菜作りのノウハウだ

けではありません。

 

 自分は食べ物のいのちに支えられているという感謝の気持ち、地球の

いのちの循環を肌で感じること。壮大な文明論(自然界の循環と共生等)

にもつながります。

 

 これまで食育推進や地域振興の関連で多くの表彰等も受けられている

吉田さんの話は、実践に根ざすとともに、自ら収集・分析したデータに

裏付けられているなど、強い説得力があります。

 

 私は九州農政局在勤中、食育推進協議会の委員に就任頂くなど大変お

世話になりましたが、それから10年近く、吉田さんは、ますますパワー

アップされています。

 

 来る426日(金)には、埼玉県ふじみ野市で「ワンデイ講演会」が開

催されます。たっぷりと吉田ワールドに浸れること、間違いありません。

 ぜひ一人でも多くの方に、吉田さんの話を聞いて頂きたいと思います。

 

  吉田俊道さん「ワンデイ講演会」

  日時 4月26日(金)

   10001200 生ごみからすごい発酵力の元気野菜の作り方

   12001300 食事交流会

   13301530 食事で変わる、子どもたちの体、心、未来

  場所 大井中央公民館(ふじみ野市大井中央2-1-8

  (東武東上線ふじみ野駅西口から大井循環バスで大井総合支所下車)

  参加費 1000円(半日500円、食事会300円)

  申込 電話070-5458-0889まで。

 

(参考)NPO法人「大地といのちの会」ホームページ

  http://daititoinotinokai.web.fc2.com/

 

—————————————————————-

  情報ひろば

 

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

—————————————————————-

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」更新情報

 ・ 420日(土)の『あすか倶楽部』第151回定例会における説明資

  料「私たちの食と農を考える−フード・マイレージからみえてくる

  もの−」を掲載しました。

   http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/130420_ASUKA.pdf

 

 ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 410日付け]旧暦・弥生−「いやおい」の月

   410日は旧暦・弥生一日、草木がいよいよ生い茂る春爛漫の「い

  やおい」の月です。

   金沢でお世話になった方が「野菜ソムリエアワード」銀賞を受賞

  されました。

   http://food-mileage.jp/2013/04/10/

 

 411日付け]食べることを楽しむには訓練が必要

   國分功一郎「暇と退屈の倫理学」はエキサイティングな本でした。

  ファストフードとスローフードとの違いなど、「食」に対する鋭い

  洞察も含まれています。

   http://food-mileage.jp/2013/04/11/

 

 414日付け]「さいはらプロジェクト2013」スタート! 

   今年も、山梨・上野原市西原(さいはら)を舞台にしたプロジェ

  クトがスタートしました。第1弾は在来種のジャガイモ等の植付け。

  地元の方たちとの交流活動は4年目に入りました。

   http://food-mileage.jp/2013/04/14/

 

 415日付け]市民農園もスタートしました。

   今年は無事に抽選をクリアした市民農園。これまでは野菜苗を買っ

  ていたのですが、今年は種から、しかも在来種を植えてみました。

   http://food-mileage.jp/2013/04/15/

 

 419日付け]「共奏」の5カ条 

   16日の夜、久しぶりに参加した「共奏キッチン」、今回も充実し

  た時間を過ごすことができました。

   「共奏ナニカ」が拡がっていく予感がします。

   http://food-mileage.jp/2013/04/19/

 

 422日付け]消費生活アドバイザーの皆様への期待

   消費生活アドバイザーの方達の自主的なネットワーク『あすか倶

  楽部』にお招き頂きました。消費者と企業や行政の架け橋の役割等

  を担うアドバイザーの方達の活躍に期待です。江戸東京野菜のPRも。

   http://food-mileage.jp/2013/04/22/

 

 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   満席等となっている場合がありますので、参加を希望される方は、

  必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

  ひご野菜を愉しむ夕べ−伝統野菜「ひご野菜」を食す、優雅な今宵−

  日時:425日(木)、59日(木)19:00〜【完全予約制】

  場所、主催:熊本交通センターホテル ダイニングバー桜

  内容:会席料理または創作フルコースと、北亜続子さんの講話

  (詳細、お問合せ等

   http://www.kyusanko.co.jp/hotel/restaurants/pdf/higonabi_vege.pdf

 

  吉田俊道氏「ワンデイ講演会」【オーシャン・カレント欄の再掲】

  日時:4月26日(金)10:0015:30

  場所:大井中央公民館(埼玉県ふじみ野市大井中央2-1-8

  (申込み、お問合せ等)電話070-5458-0889まで

 

  2013年度有機米作り体験会 第1回「籾ふり」

  日時:427日(土)10:0015:00(東武東上線小川町駅集合)

  場所:埼玉県小川町

  主催:US.Peace ファーム

  (詳細、お問合せ等

   http://www.uspeace.jp/user_data/event.php

 

  わいがや勉強 交流会

  日時:427日(土)10:30〜講座、12:00〜交流会

  (講師)坂本和彦氏(埼玉県環境科学国際センター総長)

   「微小粒子状物質(PM2.5)」汚染の現状と課題

  場所:埼玉県新座市西分集会所(新座市野火止3-5-15

  主催:環境教育支援ネットワーク きづき

  (詳細、お問合せ等

  メール:un.ecoffice.kiduki(アットマーク)jcom.home.ne.jp

   または 電話(荻原さん)090-1802-1568

 

  代官山 春花祭

  日時:53日(金)〜6日(月・祝)、10:0017:00

  場所:渋谷区代官山(東急東横線 代官山駅周辺)

  主催:代官山春花祭 実行委員会

  (詳細、お問合せ等

   http://www.gw-daikanyama.org/

 

  開墾 ゴマ畑を作ろう! in 檜原村

  日時:511日(土)9:3017:00

  場所:東京都西多摩郡檜原村(9:30JR武蔵五日市駅に集合)

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   http://www.greensmile.asia/2013/04/10/goma511/

 

 * 次号は510日(旧暦 卯月朔日)に配信予定です。

 

================================================================

 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

================================================================

  発行者:中田哲也