GWに「ふくしま」を思う。

 連休前に、福島から2通の郵便物が届きました。 
 その1つは、NPO法人「福島農業復興ネットワーク」の会報誌『FAR-Net Live』Vol.3。
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 避難を余儀なくされた酪農家たちを受け入れるための共同牧場「ミネロファーム」の運営等を行っているNPOです。
 去る3月9日、東京・有楽町で開催されたCSOネットワーク主催のシンポジウムに関係者の方が参加しておられ、名刺交換し、その場で入会させて頂きました。
 会報によると、ミネロファームが「教育ファーム認証牧場」になったとのこと。
 子どもたちに食や生命の大切さを伝えていくという新たな使命を担うことになりました。
 会報には、飯舘村と浪江町から避難され、現在はミネロファームのスタッフとして働いておられる4名の方の手記も掲載されています。
 「家族を信じ、そして仲間を信じ、前向きに悩んで歩いていきたい」等の決意が語られています。
 もう1通は、「福島ひまわり里親プロジェクト」から届いた、注文していたひまわりの種と絵本です。
 
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 福島に「復興のシンボル」としてひまわりを植えよう、というプロジェクト。ここから購入した種を育て、種を採って福島に送る「里親さん」を、今年も全国から募集しています。
 親子で楽しめる絵本『たびくまとひまわりばたけ』という絵本も制作されました。
 同封されていた『ひまわり新聞』という冊子によると、昨年夏は福島県内9000ヵ所でひまわりが開花し、全国に1万6000人の里親が誕生したそうです。
 昨年は植える時期が遅くなってしまい、かろうじて花はつけてくれたのですが、結局、種は採れませんでした。
 今年は早く植えたいのですが、気温が平年を下回って推移しており、もう少し温かくなるのを待っている状況です。
 ところで5月1日、「ふくしま会議」の新しい情報発信サイトとして『読む ふくしま会議 ふくしまの声』が開設されました。
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 「ふくしま会議」とは、原子力に依存しない安全で持続的に発展可能な社会づくりを目指し、3.11以降の福島の経験と現実を世界と共有し、新しい福島を創ることを目的として、2012年7月に設立された一般社団法人。
 民俗学者の赤坂憲雄さんが代表理事を務めておられます。
 その情報発信のため、福島県内だけでなく、県外を拠点に活動をしている方々も含めて、ふくしまのライターが定期的に声をお届けするのが『ふくしまの声』です。
 サイトを覗いてみると、様々な「声」が掲載されています。
 いずれも、福島の被災は過去のことではなく、現在進行形であることが改めて思い知らされます。
 飯館村の元酪農家、現在は避難先の北海道の農場を手伝いつつ飯舘村で「対話の場」づくりに取り組んでいる菅野義樹さんの投稿のタイトルは「農村と都市」。
 現在の飯舘村には、一人一人喪失感がちがう「あいまいな喪失」が存在し、未来に対して青写真も描けない生殺しの状態で、いつの間にか対立構造になってしまっているとのこと。
 「都市から持ってきた価値観や考え方では問題解決できないことをこの2年で痛感しました。飯舘村の文化や風土の持つ価値観を大切に脇に抱えながら、対話を今後も進めていきたいと思います」と決意を述べられています。
 「昔は地元が嫌いだったけれども、東京や大阪で暮らすうちに、福島の良さをだんだん実感するようになりました。原発事故で遠くなってしまった故郷に、いつか帰ることが目標です」と投稿されているのは、浪江町出身の松本幸子さん
 南相馬市出身で、東京のIT企業を退職して福島にUターンした鎌田千瑛美さんは「復興は友達づくりから」と訴えられています。
 「誰もが正解のない『いま』を生きているなか、大事なものを私たち自身で見定め・見極めるためには、自分の想いを伝え、相手の想いに触れ、共に分かち合うということを、1人1人が諦めず、向き合い続けることが大切。
  あなたなりの想い、生き方、大事にしたいこと、隣にいる大切な人へ、まだ見ぬ伝えたい人へ、ちょっとしたことでいいから、ありのままに伝えてみてほしい。」
 フリージャーナリスト・伊藤江梨さん(いわき市在住)は、「自立から最も遠ざかったふくしま」というタイトルで、以下のような内容の投稿をされています。
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 「知人が東京の人から『福島はもう国や東電から賠償や支援を受け続けて、日本のお荷物となって生きていくしかない』と言われた。確かに賠償金は、新たに仕事を始めることを難しくする。
 『自立』という言葉は、他方で本当に助けが必要な人が助けを求めることをしにくくし、本来、責任のある人にその責任を放棄しやすくさせる。それでも、最終的には自らの力で立っていかなければならないと思う。私は決して「可哀そうな福島県民」ではないと思っている。
 東京から来たフリージャーナリストに『あなたはここでこうして何かが変えられると思っているの?』と尋ねられた。 何をすればどう変わるのかなんてわからない。何も変わらないかもしれない。福島はこのまま日本のお荷物になるのかもしれない。
 衰退の恐怖の中で、ゆっくりと大きなものへの依存度を高めていく地域にあって、私はその状況を止めることもできずにいる。私がここにいる意味は小さい。それでもその小さな可能性の糸を少しずつ集めて行こうと思う。」
 以上、プロの物書きの方の文章をつまみ食いするなど、本来やってはならないことかと思います。
 ぜひ、著者の真意を知って頂くために、原文をお読み頂ければと思います。
 被災は進行中です。
 その中、特別のヒロインやヒーローではなく、普通の日常の生活を奪われ、どうしようもなく悩み苦しんで、それでも前を向いていこうとする人たちがおられます。
 しかもその原因は、(あきらめがつくかも知れない)天変地異ではなく、私たち都会に住む人間の便利で快適な生活を実現するための原子力発電だったという事実。
 まぎれもない、私(「私たち」ではなく「私」)自身の問題です。
 あたかも世の中はGW、株高や五輪招致で何となく気分が浮ついている中、原発の再稼働や輸出までがスケジュール化されつつあります。
 なぐさみに掘り返す市民農園の土にも、まぎれもなく関東地方にも降下したセシウムが含まれています。そして福島では、耕すことも許されない、土と切り離された方たちが多くいるという現実があります。
 それらの、もろもろの現在進行中の事象の中で、事実を知ったからといって(知ったつもりになったからといって)、自分自身のこととして何もできないという無力感。
 都市農村交流や地産地消の大切さなんて、福島の方のことを思うと、今は軽薄に口に出すことさえ恥ずべきことかも知れないのに。
 とりあえずは、無力感にさいなまれつつ、明日からの日々を送るしかないと思っています。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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