東京・檜原村でゴマを栽培する意味。

 2013年5月11日(土)。
 日本と世界を変えるキッカケとなった日として、将来、記憶に残ることになるかも知れません。
 グリーンスマイル(略称・グリスマ)が主催する「ゴマ畑を作ろう in 檜原村~休耕地を開墾してゴマ畑をつくって収穫してマルシェ販売プロジェクト~」(仮称・ゴマ畑プロジェクト)がスタートしたのです。
 生憎の雨模様。
 朝の9時20分頃にJR武蔵五日市駅に降り立つと、改札の向こうにスタッフの鮮やかな緑色のジャンパー。その回りに、この日の参加者25名ほどが集合です。
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 バスで現地に向かうのですが、一般の乗客の方もおられ(当然ですが)、西東京バス会社は増発し2台で運行してくれました。
 約30分ほどで「小沢」停留所で下車、北秋川の清流に架かる橋を渡ってベースキャンプでもある竹さん宅へ。
 かなりの雨が落ちていて、山の姿も煙っています。
 「竹さん」こと竹本亮太郎さんは、自然を活用した企業研修や健康管理プログラム等を提供する健康プロデュース企業の社員の方。
 ゼネラルマネージャーとして檜原村休耕地活用プロジェクト等に携わる内に、とうとう自ら村に移住して農業を始められたという方です。
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 グリスマ代表「てーさん」(今中徹也さん)と知り合ったことをきっかけに、昨年から檜原村を舞台にした活動が始まっており、今回の「ゴマ畑プロジェクト」(仮称)も受け入れてくれることとなったのです。
 着替えなど準備の後、初参加の方も多いことから、まずは参加者の自己紹介から。
 (私も品川でのマルシェには何度か参加しましたが、檜原村でのイベントは初めてです)。
 「この雨だから大した作業はできないかな」と竹さん。
 ところが参加者の熱気が天に届いたか、雨は次第に小降りとなり、ついに出発する頃にはほとんど上がったのです。
 スタッフの皆さんの日頃の行いがよほどいいのか、強力な晴れ女・晴れ男が揃っているのか。
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 再び橋を渡りバス通りを横切って、反対側の山裾を登っていきます。
 山藤の花、小松菜や大根の花の間を10分ほど歩いて着いたところが、山の斜面を開墾した今日のフィールド。
 耕作放棄されていたのを竹さんが借り受けて再び開墾している場所で、その一部、幅15メートル、長さ40メートルほどが、今回ゴマを植える予定地です。草刈りをしてくれてあります。
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130511_5_convert_20130513235924.png それにしても、地面が濡れていることもあって、立っているだけでも足が滑りそうになるほどの傾斜地。
 3班に分かれ(私は「うまさん」チーム)、横に並んで、耕しながら斜面を下っていくように作業が始まります。
 まず、竹さんが手本を見せてくれました。
 表面にある草の切れ端をすき込むように鍬(クワ)で耕し、さらに3本歯の鋤(スキ)でならしていきます。
 土の中には草や灌木の根っこが残っていて、引っ張っても抜けないものはシャベルの歯を打ち付けて切断します。
 太くて固いものに当たると、なかなかの重労働になります。
 この作業がひと通り終わると、今度は小型耕うん機(その名も「こまめ」、Honda製)が登場。
 ハンドルのレバーを握るとロータリーが回転して前に進むのですが、押さえつける力を調整するのにコツがいります。
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 整地が終わると、いよいよ種まき。
 水平方向に足で溝をつくり、小さなゴマの種を筋播きして軽く土を被せていきます。
 今日は、白ゴマと黒ゴマの2種類を播きました(「うまさんチーム」は、そのイメージからか黒でした)。
 再び雨が降ってきたこともあり、一段落したところでこの日の作業は終了です。
 画伯の「ぼっしゅ」女史も、スケッチは中断。
 ちなみにこの方、6月17日(月)からの展覧会に出展される予定だそうです。
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 各々、途中の酒屋さんでビールなど好きなものを買って「竹ハウス」へ。
 軒先の雨除けの下で炭を起こし、バーベキューを楽しみながらの昼食です。乾杯。
 ソーセージや焼きそば等の定番に加えて、ひげまで美味しいヤングコーンやバウムクーヘンも焼きました。
 途中、今月誕生日を迎えた3人が紹介され、ケーキでお祝い。
 先ほどの永喜屋酒店のご主人も、差し入れを持って駆け付けて下さいました。ご馳走さまです。
 気がつくと、外は再び強い雨に。屋外作業中だけ止んでいたことになります。晴れ女・晴れ男の底力。
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 食べて飲んで満足したところで、この日最後のプログラム、ワークショップに移りました。
 先ほどの3チームに分かれて、このプロジェクトの名称、どのような方向を目指して活動するのが、具体的な販売の方法等について自由に意見交換。
 初対面の人も多かったのですが、農作業と食事をともにしたことですっかり打ち解けた雰囲気です。
 様々な面白い意見が出ました。
 プロジェクト名の候補として出されたのは、「東京ゴマプロジェクト」「TOKYOごまのわ」、そして「美味(うま)×ゴマ×プロジェクト」(うまさんチーム)。
 参加者にはデザイナー関係の方も複数おられ、なかなかおしゃれです。具
 体的な活動の内容と合わせ、引き続き検討していくことになりました。
 また、最も印象的な名札(各自、作って持ってくることになっていました。)を作ってきたお2人に「ベスト名札賞」の贈呈。副賞として次回の参加費が免除されるそうです。
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 最後に代表の「てーさん」から、グリスマが2013年度推進する「都会⇔田舎Connect!連盟」立ち上げの紹介。
 「都会(ニーズ)」と「田舎(シーズ)」をつなぎ、事業創造とサプライチェーンを構築することで、地域活性と地方雇用創出を目指そうというものです。
130511_10_convert_20130514001007.png 今回のプロジェクトも「コネ連」としての活動の一環として位置づけられているそうです。私も含め、多くの参加者がその場で参加の手続きを取りました。
 格好いい会員証も頂きました。
 トシを取っているだけでグリスマ「顧問」の肩書きを頂いていることもあってか、3番という若い会員番号で恐縮です。
 雨は止みません。
 片付けと打合せのため、1本後のバスに乗るスタッフの方に見送られ、17時前のバスで武蔵五日市へ。
 駅のコンビニで地酒「喜正」と豆腐の味噌漬けを買い込み、明後日以降、体の節々が痛くなりそうな予感を抱きつつ、帰途に着きました。
130511_11_convert_20130514000232.png さて、このプロジェクトには、関連する2つの重要なキーワードがあると思います。
 1つは「食料自給」。
 ゴマは栄養的にも優れ、古くから日本人の食生活に欠かせない食品でした(縄文遺跡からも見つかっています)。
 しかし、収穫や選別に手間(コスト)がかかること等から、現在、国内自給率はほぼゼロ、国内で消費されるゴマのほぼ100%はナイジェリアやパラグアイからの輸入品です。
 日本は経済成長のなかで、伝統的に食べられていたもの(小麦、大豆、そば等)も含め、多くの食料を輸入に依存するようになりました。現在、カロリーベースの食料自給率は39%です。
 ゴマは、「食の海外依存」を象徴する品目と言えます。
 2つめのキーワードは「都市と農村」。
 農林水産業の衰退や工場の海外移転等により日本経済のサービス化が進んだ結果、人口や経済は都市部(特に東京圏)に一極集中することとなりました。
 その裏腹として、農村や地方ではシャッター商店街や耕作放棄地が増加し、「限界集落」という言葉さえ聞かれるようになっています。
 つまり、大都会・東京都の中の(島しょ部を除いて)唯一の村である檜原村で、耕作放棄地を開墾してゴマを植えるという本プロジェクトは、食の海外依存と、都市と農村の格差拡大という、現代日本が抱える2つの大きな課題へのチャレンジなのです。
 このプロジェクトが成功すれば、日本の食料と農業、ひいては経済や社会全体を変えていく一つのキッカケになるものと、勝手に確信(妄想?)しているところです。
 さて、この日の模様は、グリスマ広報「豆さん」によるグリスマ公式ブログでも詳しく紹介されています。
 さすがプロのライターさん、楽しい雰囲気がよく伝わってきます。ぜひご覧ください。
 次回は6月8日(土)に開墾と種まきの2回目の作業をします。
 詳しくは、FBのイベントページまたはグリーンスマイルのHPに掲載されていますので、興味を持たれた方がおられれば、ぜひ「楽しさ」を実感しに来て下さい。
 スタートしたばかりの本プロジェクトが、日本の食と農の閉塞状況を打ち破ることを期待して止みません。
 「開け、ゴマ!(Open Sesame!)」。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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