F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.022

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.22 ; 2013. 6/23(日)[旧暦 皐月十五日]発行

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 去る621日(金)は二十四節気の「夏至」、1年で最も夜が短い季節

を迎えています。今夜は今年最大の「スーパームーン」とのこと。

 

 昨日は、福島県いわき市、広野町にオーガニックコットンの補植、草

取り作業に行ってきました。追って拙ブログで紹介させて頂きます。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日と15日に配信

している本メルマガ、今回は皐月(さつき)15日の配信です。

 

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。


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   3 「食の激変」と食料自給率

  (4) 生産額ベースの総合食料自給率の「実力」

 

 前回は、食料自給率を総合的に測る場合には、カロリーベース(供給

熱量ベース、2011年度概算値は39%)と金額ベース(生産額ベース、同

66%)の2種類の指標があることを説明しました。

 

 今回は、生産額ベースの食料自給率について取り上げます。

 

 2011年における日本の農業の生産額(統計では「総産出額」と呼びま

す。)は、約82.5兆円です。

 ちなみに最も生産額が多かったのは1984年の117.2兆円。つまり、日本

の農業生産額は、ピーク時に比べると約3割減少しているのです。

 

 品目別の生産額をみると、最も多いのは畜産(肉用牛、酪農、豚、鶏)

で、全体の生産額の30.9%を占めています。

 続いて多いのが野菜の25.9%です。これらは、比較的単価が高い品目

です。

 なお、1960年代には生産額の半分近くを占めていた米の割合は、今や

22.4%に過ぎません。

 

 しかし、畜産物に関しては、飼料の多くを輸入に依存しているという

現実があります(飼料の自給率は養分換算で26%)。

 アメリカからトウモロコシ等を大量に輸入することによって、日本の

畜産は成り立っているのです。

(現在、産地の不作や円安が輸入飼料価格を高騰させ、日本の畜産経営

に脅威を与えています。)

 

 また、野菜については、ビタミンや食物繊維など栄養や健康維持の面

から重要な食品ではありますが、生命を維持するための基礎的な栄養源

である炭水化物(カロリー)の供給という面での貢献は、大きいとは言

えません。

 

 論者の中には、カロリーベースの数値(39%)は低すぎ、むしろ、生

産額ベースの数値(66%)の方が日本農業の実力を正しく反映している

との意見もありますが、以上のような事情からみると、66%という数値

は、実力以上に過大に見積もられていると考えざるを得ません。

 

 カロリーベースと生産額ベースの食料自給率については、それぞれメ

リットとデメリットがあります。

 どれか一つの指標で十分と言うことはないのです。

 

(参考)

 農林水産省HP「食料自給率の部屋」

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html

 

 農林水産省「平成23 農業総産出額及び生産農業所得(全国)」

  http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/nougyou_sansyutu/pdf/shotoku_zenkoku_11.pdf

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

 

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 今回は、NPO法人農業情報総合研究所の理事長として、食や農に関わる

多彩な活動をされている植村春香さんを紹介します。

 

 10年ほど前、一消費者であった植村さんは、BSE(牛海綿状脳症)等の

ニュースを聞いて毎日の「食」がとても怖くなり、もっと食について学

びたいと思っていました。ちょうどその頃に大学農学部の学生たちとの

出会いがあり、色々と教えてもらい、それらの情報を広く一般の消費者

に届けようと思ったのが、活動を始められたきっかけだそうです。

 

 20045月、コミュニティ放送局FM世田谷(83.4メガヘルツ)で「農と

いえるニッポン!」(毎週土曜、午後6時から)という番組が始まりまし

た。

 植村さんは、この番組の制作とパーソナリティーを担当し、全国各地

の農や食の様々な情報をライブ発信しています。

 

 最近の回では、世田谷の伝統野菜「大蔵大根」を取り上げられました。

 そのような大根が地元にあることを知らなかったという女性の声を生

産者に伝えたところ、早速、立派な大根を提供頂いたそうです。そして、

それを女性にお渡しすると、その大きさに驚きつつ、美味しいと丸ごと

(葉も皮も)使い切られたとのこと。

 番組では、このようなエピソードを紹介されたそうです。

 

 また、植村さんは東京農業大学「食と農の博物館」の運営委員を務め

ておられるほか、「農業ビジネス研究会」等の勉強会を定期的に開催さ

れています。

 講師陣は著名で魅力的な方ばかりです。

 

 例えば昨年11月に開催された研究会は、茨城の野菜農家・久松達央さ

んによる「有機野菜の生産・販売の強みとマーケティング〜久松農園の

具体的事例から〜」。

 有機農業の通説を覆すユニークで意欲的な農業経営に対する久松さん

のお考えをお聞きすることができました。

 

 また、去る5月には(株)コーポ・サチ代表取締役の平出淑恵さんの

「日本酒をいかにグローバルマーケットへ売り込むか? Sakeから

観光立国〜ワインツーリズムをSakeツーリズムに〜」とのテーマの

研究会で、海外及び国内における日本酒の可能性を感じさせてくれる興

味深い話を伺うことができました。

 

 ご自身のパートナーや仲間の方達とともに、被災地支援の活動にも積

極的に取り組んでおられる植村さん。

 これからも生産者と消費者の相互理解を深める「農業情報のコミュニ

ケーション」を目指していきたいと、明るい笑顔で語っておられます。

 

(参考)

 NPO法人農業情報総合研究所

  http://www.agranger.jp/nougyoujyouken-index.html

 

 FM世田谷「農といえるニッポン」

  http://www.agranger.jp/setagaya-radio.html

 

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  情報ひろば

 

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ウェブサイト「フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

  2013年度 日本フードシステム学会大会における個別報告「飲食料

  品製造業における運輸コストの推移に関する考察」の説明資料を掲

  載しました。

   http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/130616_FS.pdf

 

ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 611日付け]「東京ゴマ01(ゼロワン)プロジェクト」

   「グリーンスマイル」主催の檜原村でゴマを栽培し販売まで行う

  プロジェクトが、名称も決まり正式に発足しました。食料の海外依

  存からの脱却と都市と農村の格差是正に向けたチャレンジです。

   http://food-mileage.jp/2013/06/11/

 

 619日付け]2013年度 日本フードシステム学会大会

   61516日、筑波大学で開催された2013年度日本フードシステム

  学会大会では、「フードシステム研究のニューウェーブ」と題する

  シンポジウム等が行われました。私からは飲食料品製造業における

  運輸コストに関する個別報告を行いました。

   http://food-mileage.jp/2013/06/19/

 

 621日付け]拡がる「共奏」、都心で感じた檜原村の風

   619日(水)は久しぶりに「共奏キッチン」に参加。多くの方

  の熱い思いと志に触れることができました。

   翌日は京橋のギャラリーで、檜原村の風を感じることができました。

   http://food-mileage.jp/2013/06/21/

 

 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   満席等となっている場合がありますので、参加を希望される方は、

  必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

  オーガニックカフェで聞く福島のはなし

  日時:629日(土)14001600

  場所:下北沢オルガン堂(小田急線下北沢駅下車徒歩12分)

  講演:菅野正寿さん(NPO法人福島県有機農業ネットワーク理事長)、

     大江正章さん(コモンズ代表、ジャーナリスト)

  主催:NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン

  (詳細、お問合せ等

   http://cs-machi.com/?p=884

 

  トークイベント「森・土・海は食のゆりかご、命のゆりかご」

  日時:76日(土)12:4516:30 (17:00〜、懇親会)

  場所:東京農業大学 百周年記念講堂(世田谷区桜丘1-1-1

  講演:木村秋則氏(リンゴ農家)、中洞正氏(山地酪農家)、

     畠山重篤氏(カキ養殖家)

  主催:株式会社 リンク

  (詳細、お問合せ等

   http://mori-tsuchi-umi.jp/

 

  第28回国民文化祭・やまなし2013 〜長寿食の体験宿泊ツアー〜

   2.「西原そば打ち体験ツアー」(各月1回)

    第3回 じゃがいも掘り&たまじ作り

  日時:713日(土)〜14日(日)

  場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区

  主催:公益社団法人やまなし観光推進機構

  (詳細、お問合せ等

   http://www.yamanashi-kankou.jp/y-tabi/health/bosyuchu/chojushoku-taikenshukuhakusaihara.html

 

  ゴマ畑を作ろう in 檜原村(3)

  日時:713日(土)9:3017:00

  場所:東京都西多摩郡檜原村(JR武蔵五日市駅集合)

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   http://www.greensmile.asia/

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は78日(月)(旧暦 水無月朔日)に配信予定です。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也