F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.023

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.23 ; 2013. 7/8(月)[旧暦 水無月朔日]発行

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 去る72日(火)は「半夏生(はんげしょう)」。田植えを終える目

安の日とされ、習慣として蛸(近畿地方)、うどん(香川)、焼き鯖

(福井)等を食べる地域もあるそうです。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日と15日に配信し

ている本メルマガ、今回は水無月(みなづき)1日の配信です。

 田が水で満ちた「水張り月」、農作業が一段落した「皆仕尽」等が由

来とのことです。

 


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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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   3 「食の激変」と食料自給率

  (6) カロリーベースの総合食料自給率は「過小」か。

 

 前回は、生産額ベースの総合食料自給率(2011年度概算値:66%)は、

日本農業の実力に比べ、やや過大ではないかと考える理由を述べました。

 

 今回はカロリー(供給熱量)ベースの食料自給率を取り上げます。

 その数値(39%)は、一部の議論にあるように日本農業の実力に比べ

て過小なのでしょうか。

 

 前々回のおさらいですが、カロリーベースの総合食料自給率は、様々

な食料を熱量(カロリー)に換算した上で足し上げて算出します。

 

 ここで大事なことは、畜産物については飼料(エサ)の自給度合いが

勘案されていることです。

 

 畜産物(肉、乳製品、鶏卵等)は、カロリーベースで64%が国産です。

いわば最終製品の段階では、それなりに高い自給率と言えます。

 しかし、畜産物の生産に不可欠な飼料の自給率は、TDN(可消化養分総

量)換算で26%しかありません。日本の畜産は、米国産のとうもろこし

等の大量の輸入飼料によって成り立っているのです(トウモロコシとい

っても、私たちが野菜として食べるスイートコーンではなく、乾燥した

実の部分を家畜のエサにする品種で、デントコーンと呼ばれます)。

 

 つまり、国内で生産されている肉や卵は、8割近くは輸入された飼料に

よって生産されており、このことを勘案すると、畜産物のカロリー(オ

リジナルカロリーと呼ぶこともあります。)ベースの自給率は、18

(製品ベースで64%の自給分の内、輸入されたエサで生産された部分が

46%)ということになるのです。

 

 農地が狭い日本国内で生産しようとすると、トウモロコシや小麦等の

価格は高くならざるを得ません。このため、安価な米国産等に依存する

ようになったのは、経済効率的には適切な選択であったと言えます。

 しかし、実は現時点もそうなのでが、産地の作柄や円安等によって、

常に飼料価格が高騰するリスクがあるという不安定さを、日本の畜産業

は抱えているのです。

 

 飼料が無ければ畜産は成り立たないのですから、食料の安定供給とい

う観点からは、39%というカロリーベースの食料自給率(先進国中で最

低水準)は、残念ながら、それなりのに日本農業の「実力」を表してい

ると言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

 カロリーベースの総合自給率については、そもそも世界中で日本しか

用いていないとの批判もあります。

 次回は、このことについて取り上げたいと思います。

 

(参考)

 農林水産省「平成23年度食料自給率をめぐる事情」

 (注:最終頁に自給率における輸入飼料のウェイト等があります。)

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/23slide.pdf

 

 農林水産省「平成23年度 食料需給表」

 (注:食料自給率はp.10に掲載されています。)

  http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/pdf/zyukyu_120810.pdf

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 「食(消費)と農(生産)に関わるすべての人びとが共に学びあい、

育みあうことで食の問題を解決していきたい」という思いを込めた造語

が「食農共育(しょくのうともいく)」。

 

 この「食農共育」をコンセプトに、様々な学びの場をコーディネート

しているのが、特定非営利活動法人コミュニティスクール・まちデザイ

ン(CSまちデザイン)です。

 

 CSまちデザインの事業は、大きく分けて3本の柱から成ります。

 

 その1番目は「食・環境に関する教育事業」。

 総合的な学習の時間において「ものごとの向こう側」に気づくことを

大切にする授業づくりを、学校、保護者とともに進めています。

 

 2番目は「研修・セミナーによる人材育成事業」。

 暮らしを豊かにするための様々なテーマを取り上げる「まちデザイン

市民講座」、食に関する知識を学びおしゃれに提案するセンスも磨く

「食のコンシェルジュ養成・アドバンス講座」等を実施しています。

 また、各地の市民講座等に講師の派遣も行っています。

 

 さらに、福島など被災地の実態を知るためのセミナーやスタディツア

ーにも積極的に取り組んでいます。

 

 3番目は「食を中心とした生活提案事業」。

 常設のクッキングスタジオにおいて、調理技術の習得はもとより、食

をとりまく問題を共に考えていく料理教室の企画運営を担当しています。

 

 理事長の近藤惠津子さんは、早くからフード・マイレージにも注目さ

れ、現在も総合的な学習の時間や市民講座においてフード・マイレージ

を素材の一つとして活用して下さっています。

 また、2009年の「伝統野菜サミット」(北陸農政局主催)の際には、

金沢まで基調講演に来て下さいました。

 

 外見は小柄で、華奢にもみえる近藤さんですが、消費者の立場から、

食や環境を何とか良くしていきたいとの、熱い思いとエネルギーに満ち

ています。

 

 近藤さんは訴えられます。

 

 「食への不安を解消し、身体と心と地球の健康をつくる力は、私たち

一人ひとりの毎日の生活にあります。一人ひとりの暮らし方、生き方を

『学び=共育』を通して少しずつ変え、つなげていくことで、より豊か

な生活ができるのではないでしょうか。」

 

 なお、今後は、学びの場を提供するだけではなく「食と農と地域をつ

なぐ」ということを強く打ち出していく方針とのこと。

 

 消費者目線で食と農を考え、地域(生産地も含めて。)づくりに貢献

していくという活動の拡がりにも、期待したいと思います。

 

(参考)

 特定非営利活動法人コミュニティスクール・まちデザイン

  CSまちデザイン)

  http://cs-machi.com/

 

 近藤惠津子さん著「わたしと地球がつながる食農共育」

  http://cs-machi.com/?p=55

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 624日付け]

  第2回「ふくしまオーガニックコットン ボランティアバス」

   前回に引き続き、JKSK(女子教育奨励会)主催のバスツアーに参

  加させて頂きました。津波被災地や仮設の商店街等の見学、ついに

  完成したTシャツのお披露目式も。広野町でのオーガニックコットン

  の草取りと補植作業は、生憎の雨にたたられてしまいました。

   http://food-mileage.jp/2013/06/24/

 

 628日付け]

  映画「パワー・トゥ・ザ・ピープル」といわき市の取組

   626日、浜松町で開催された試写会と、いわきおてんとSUNプロ

  ジェクトの吉田恵美子代表による取組報告。ヨーロッパの先進的な

  取組事例(コミュニティ金融)は、実は伝統的な日本の「頼母子講」

  と同じという気づきも。

   http://food-mileage.jp/2013/06/28/

 

 630日付け]コミュニティを育てよう

   28日に自由が丘「シェア奥沢」で開催された「共奏ミーティング」。

  みんなでカレーを作って食べた後、「コミュニティを育てよう

  とのテーマで話し合いました。

   コミュニティの大切さが問い直されています。

   http://food-mileage.jp/2013/06/30/

 

72日付け]オーガニックカフェで聞く福島のはなし

   直売所・カフェでもあり、交流と情報発信の拠点でもある下北沢

  「ふくしまオルガン堂」。

   ここで菅野正寿さん(福島県有機農業ネットワーク)、大江正章

  さん(コモンズ)の話を伺いました。

   東京には福島の実態はきちんと伝わっておらず、学び合うこと、

  「耕す」ことの大事さが強調されました。

   http://food-mileage.jp/2013/07/02/

 

 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   満席等となっている場合がありますので、参加を希望される方は、

  必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

  ゴマ畑を作ろう in 檜原村 (3)

  日時:713日(土)9:3017:00

  場所:東京都西多摩郡檜原村(9:30JR武蔵五日市駅集合)

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   http://www.greensmile.asia/2013/07/03/goma01-3/
/

 

  オーガニックランチ&トーク「福島の有機農家からお話を聞く会」

  日時:713日(土)12:0015:00

  場所:ふくしまオルガン堂 下北沢(世田谷区代沢4-44-2

    講演者:菅野正寿氏(福島県有機農業ネットワーク理事長)

      谷山由子氏(JVC震災被災地支援(南相馬)担当)

  主催:日本国際ボランティアセンター(JVC)

  (詳細、お問合せ等

   http://www.farm-n.jp/yuuki/organ/pdf/20130713.pdf

 

  品川マルシェ「全快野菜ちゃん」夏!

  日時:720日(土)14001600

  場所:品川寺(ほんせんじ、南品川3-5-17

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   http://www.greensmile.asia/2013/07/03/0720yasai/

 

  2013年度農業体験会「草取り」

  日時:720日(土)10:0015:00

  場所:埼玉県小川町(10時に東武東上線小川町駅集合)

  主催:US.Peace ファーム

  (詳細、お問合せ等

   http://uspeace.jp/user_data/event.php

 

  江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座(入門編・第2回)

  日時:720日(土)13:0017:00

  場所:JA東京南新宿ビル3F(渋谷区代々木2-10-12

  主催:江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座事務局

  (詳細、お問合せ等

   http://edocon831.seesaa.net/article/366777075.html

 

  第23 参議院議員通常選挙 投票日

  日時:721日(日)7:0020:00

  注)投票時間は市区町村の選挙管理委員会により繰り上げ又は繰り

   下げられる場合があるそうです。

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分については、全て、筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は722日(月)(旧暦 水無月十五日)に配信予定です。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也