F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.024

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.24 ; 2013. 7/22(月)[旧暦 水無月十五日]発行

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 土用の丑の日も過ぎ、明日723日(火)は「大暑」。1年で最も

気温が高い季節を迎えています。皆様、どうぞご自愛ください。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日と15日に配信し

ている本メルマガ、今回は水無月(みなづき)15日の配信です。

 


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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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   3 「食の激変」と食料自給率

  (6) カロリーベースの総合食料自給率は「ガラパゴス」か。

 

 前回は、カロリーベースの食料自給率について、食料の安定供給とい

う観点からは、飼料を勘案した39%という数値(先進国中で最低水準)

は、それなりに日本農業の「実力」(食料供給力)を表していることを

説明しました。

 

 一方で、そもそもカロリーベースの総合自給率という指標自体、世界

中で日本しか用いていないとの指摘もあります。この議論は、わざと低

い数値を出すことによって世の中の危機感を煽り、予算を獲得しようと

しているとの「陰謀論」につながっています。

 

 結論から述べると、確かにカロリーベースの総合自給率という指標は、

日本の農林水産省において独自に開発された指標であり、諸外国の数値

についても、日本の農林水産省が試算しているものです(例外的に、韓

国においても類似の指標が用いられているそうです)。

 

 なお、繰り返しになりますが、政府の計画等においては、カロリーベ

ースと生産額ベースの2種類の自給率の指標が併用されています。

 

 また、畜産物については飼料に遡って計算するという、いわゆるオリ

ジナルカロリーまで遡るカロリーベースの自給率については、多くのデ

ータを用いた複雑な計算が必要という事情も、世界的にみて広くは用い

られていないことの背景となっています。

 

 それでは、世界で最も一般的に用いられている自給率の指標は何かと

いうと、それは穀物自給率なのです。

 

 穀物自給率は重量ベースで簡単に計算できることから、途上国を含め

て、ほとんど全ての国や地域について計算し、比較できるというメリッ

トがあります。

 

 それでは、穀物自給率でみると、日本は世界の中でどのような位置に

いるのでしょうか。次回は、これについて紹介したいと思います。

 

(参考)

 農林水産省「食料自給率目標の考え方及び食料安全保障について」

 (20101月)

  http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/18/pdf/data1-1.pdf

 

 農林水産省で試算した諸外国・地域の食料自給率等

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 上田昌文(うえだあきふみ)さんが1992年に立ち上げた学習グループ

を前身に、2005年に特定非営利活動法人となったのが「市民科学研究室」

(略称「市民研」)です。

 

 その活動理念は「リビングサイエンス」と「市民科学」。

 身近な生活を基点とした市民の問いかけから出発し、「市民にとって

よりよい科学技術とは」を考え、提言しています。

 

 現代の私たちの生活には、複雑で高度な科学や技術が様々な形で入り

込んでいます。

 それらの科学技術を、市民自らが主体的に選択し活用していければい

いのですが、現実には現代の科学技術は高度で専門的過ぎて、一般の市

民(私たち)はなかなか理解できず、ついつい専門家と言われる人たち

に任せてきたという現状にあります。

 

 そのことが大きな問題として顕在化したのが、原発事故でした。

 未曾有の事故を目の当たりにして、放射能に対する基礎知識も乏しい

私たちの多くは立ちすくみ、恐れ、あるいは絶望しました。福島産の農

産物に対するいわゆる「風評被害」など、混乱は今も続いています。

 

 そのような中で、上田さんは、放射能についての難しい専門的な知識

を分かりやすく伝え、ともに考えていこうという活動に熱心に取り組ん

でおられます。

 

 その代表的な取組が「親子放射能ワークショップ」です。

 これは、食に対して不安を抱く東京・世田谷区のお母さん達から、子

ども達を含めて放射能についてともに学べるような取組をと依頼された

のがきっかけとのこと。

 お母さん達とともに作り上げたワークショップは、単に知識を伝える

だけではなく、疑問や不安を共有し、自分達で身近な場所の放射線量を

測定すること等を通じて、自ら考え解決していくきっかけとすることが

主眼となっています。

 

 被災地を含む多くの地域で開催されているこれら学習会等に、上田さ

んは講師として積極的に足を運ばれています。

 

 放射能だけではなく、電磁波、ナノテクノロジー、子ども料理科学教

室、科学コミュニケーション等の幅広い分野でも様々な学習会や研究を

進めている市民研。

 「科学リテラシー」(読み書きできるといった基礎的な能力)がこれ

まで以上に求められている現代社会において、ますます重要な役割を

担っていくことが期待されます。

 

(参考)

 NPO法人 市民科学研究室

  http://www.shiminkagaku.org/

 

 ワークショプ「親子で知ろう!いっしょに考えよう!放射能のこと」    

  http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2011/09/post-64.html

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 76日付け]わが市民農園の現況について

   在来種を中心に種から育てている猫の額ほどの市民農園の一画。

  多くの作物が芽を出し、ぐんぐんと成長しています。水不足気味な

  のが気懸かりです。

   http://food-mileage.jp/2013/07/06/

 

 78日付け]グリスマ平米ファーム in 秋川、カンタ!ティモール

   都会と農村をConnect!(つなぐ)取組を行うグリーンスマイルの

  新たな拠点が東京・あきるの市にできました。眺めのいいロケーシ

  ョンです。映画「カンタ!ティモール」はすごい映画でした。

   http://food-mileage.jp/2013/07/08/

 

 713日付け]じぇじぇじぇ、岩手・久慈の特産コース!

   「東京からふるさとおこし」がコンセプトの神田・なみへい、7

  の特産品コースはNHK「あまちゃん」の舞台、岩手・久慈がテーマで

  す。他では食べられない「まめぶ汁」、短角牛たたき、うに鍋など。

   http://food-mileage.jp/2013/07/13/

 

 714日付け]「放射能」子どもにどう伝える?

   練馬のお母さん達のグループが開催した学習会の講師は、市民研

  の上田昌文さん。複雑な放射能の問題を子どもにどう伝えていくか、

  対話型の「親子放射能ワークショップ」の取組等が紹介されました。

  内部被ばく量が分かる「買い物ゲーム」も行いました。

   http://food-mileage.jp/2013/07/14/

 

 718日付け]「本など」(20139月)

   CSOネットワーク『持続可能な社会をつくる共生の時代へ』、中村

  靖彦先生『いつまでもあると思うな、水と食』など、最近読んだ本

  についての備忘的メモです。

   http://food-mileage.jp/2013/07/18/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   満席等の場合がありますので、参加を希望される方は、必ず事前

  に主催者にお問い合せ下さい。

 

  はたけっとまーけっと in 西原(さいはら)

  日時:728日(日)10001700

  場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区

  主催:NPO法人さいはら他

  (詳細、お問合せ等

   http://hataketto.jimdo.com/

 

  三富農業体験イベント「えだまめがり」

  日時:727日(土)、28日(日)10:0013:00

  [小雨決行、予定数量に達し次第終了]

  場所:埼玉県三芳町上富2282-1

  主催:三富落ち葉野菜研究グループ

  (詳細、お問合せ等

   http://www.ochiba-ken.com/

 

  平成25年度「子ども霞が関見学デー」(農林水産省)

  日時:87日(水)、8日(木)10:0016:00

  場所:農林水産省(千代田区霞が関1-2-1

  内容:大臣室の見学、食文化クイズ、田んぼの生き物観察等

  (詳細、お問合せ等

   http://www.maff.go.jp/j/kids/k_d/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分については、全て、筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は87日(水)(旧暦 文月朔日)に配信予定です。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也