第1回*江戸コン交流会

 お盆も過ぎましたが、残暑厳しい日々が続きます。
 2013年8月17日(土)13時30分から、新宿駅南口からほど近いJA東京南新宿ビルの3階「東京アグリパーク」において、「第1回*江戸コン交流会」が開催されました。
130817_1_convert_20130819213708.png 「江戸コン」とは、江戸東京野菜の普及とそれによる地域振興に貢献する「江戸東京野菜コンシェルジュ」の方々のことです。
 小金井市や地元NPO「ミュゼダグリ」等が主催し、東京都「新しい公共支援事業」の助成を受け、昨年度、「江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座」を2期にわたり開催し、約70名が受講されました。
 修了後もメーリングリストでの情報交換等を続けてきましたが、時にはリアルに顔を合わせたいとの声が上がり、交流会が開催される運びとなったのです。
 この日は、修了生や事務局の方に加え、これから講座を受けてみようという方たちも含めて約30名が集いました。
 まず、主催者を代表して、江戸東京・伝統野菜研究会の大竹道茂会長からご挨拶。
 改めて紹介するまでもない江戸東京野菜普及の第一人者で、ブログ「江戸東京野菜通信」等を通じた情報発信にも積極的に取り組んでおられる方です。
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 続いて、江戸東京野菜の大先達・植松敬先生から、「下山千歳白菜と伝統大蔵大根の種取りと品種登録について」というテーマで講演を頂きました。
 植松先生は1923(大正12)年8月のお生まれ、つい先日、90歳の誕生日を迎えられたそうです。
 東京農業大学専門部拓殖科をご卒業後、1949(昭和24)年に東京都の農業改良普及員として採用され、初任地の城南農業改良相談所(世田谷、目黒、大田を担当)に勤務された間に、「大蔵大根」「下山千歳白菜」の栽培と育種、登録指導を担当されました。
 その後は東京都総務局主幹、労働経済局主幹等を歴任され、現在も世田谷区から依頼されて農業関係のアドバイス等をされているそうです。
 なお、「大蔵大根」は石井泰次郎氏が育成し1949(昭和24)年に発表。「下山千歳白菜」は、下山義雄氏が育成し1953(昭和28)年に発表されたものとのこと。
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 約2時間、パワーポイントを使って講演を頂きましたが、声にも張りがあり、かくしゃくとされています。
 大竹さんがパワーポイントに加工した写真は、昭和20~30年代に、植松先生が自らのカメラで撮影されたもの。
 当時は、相当高価なものだったそうですが、そのお陰で、当時の世田谷の「農村」風景や、農作業の様子を知ることができます。
 今では失われてしまった農法もあるようです。
 ちなみに普及員だった植松先生が、当時、農家を訪ねると、靴をはいたまま畑に入ることはできなかったとのこと。それだけ土づくりに手をかけていた生産者が多かったそうです。
 その伝統ある大蔵大根も、近年はF1が主流となっていたところ、固定種である「伝統大蔵大根」を復活させようという動きが生産者の間で盛んとなっていて、どのタイプの大根を残すかは植松先生のアドバイスを頂いているとのこと。
 この日は生産者の大塚信美さんも見えられており、その様子を補足して説明して下さいました。
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 伝統作物や固定種は、(例えはよくありませんが)ガラパゴス島の生き物のように、自然に進化したものではありません。生産者の方々、植松先生のような技術者の方々の永年の不断の努力の結果、生まれ、繋いできている財産であることを、改めて知ることができました。
 植松先生は、江戸東京野菜の栽培に熱心に取り組んでいる都立園芸高校の生徒達にも授業を行われているそうです。世代を超えた伝承が行われています。
 講演の後は参加者の間で交流会。
 一人ずつ、それぞれの分野で活動されている近況について報告しあい、情報交換を行いました。
(植松先生も交流会の終了までお付き合い下さり、杖もつかず、大塚さんとともに電車で帰られました。)
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 その後の会場近くの居酒屋での懇親会も通じて、色々な話を伺うことができました。
 その中で特に印象に残ったのは、若い生産者の方々か吐露された悩みでした。
 伝統野菜は直売所に出しても、必ずしも消費者の受けは良くないと言うのです。
 普通のF1品種の方が、消費者には受け入れられやすいとのこと。つまり、伝統野菜は(栽培にも苦労しますが)、形が不揃い、えぐみや苦みがあって調理も簡単ではないようです(味が濃い、ということですが)。
 そのため、売り先も自分で開拓しなければならず、こだわりを持った料理屋やレストラン以外では、手間に見合った値段で引き取ってもらうことは難しい、という現実があるとのこと。
 週末のゴールデンタイムのテレビにも出演された若い生産者の方は、放映された直後は問い合わせ等もたくさんあるものの、一過性で継続しない、とのことでした。
 最近、マスコミで取り上げられる機会が増えていることに、能天気に心強く感じていた私にとっては、いささかショックというか、考えさせられる話でした。
 伝統野菜の安定的な販路確保と、一般の消費者の認知度向上のためには、生鮮品として供給するだけではなく、食育の一環として子ども達に教えたり、料理店と連携したり身近な総菜等に加工して販売していくような取組が重要です。
130817_6_convert_20130819213924.png その意味で、生産者、事業者(市場、飲食店等)、学校の栄養教諭、マスコミ関係者や作家など、様々な立場の方達が集う「江戸コン」の取組は、大きな意味を有していると考えられます。
 さて、その「江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座」は、9月7日(土)の入門編(3回目)に続き、秋には第1・2期同様の7回講座も開催する予定と聞いています。
 伝統野菜のみならず、食べものや農業、地域づくり等に関心のある方は、参加してみてはいかがでしょうか。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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