ふくしまコットン・ボラバス vol.4-旧警戒区域内へ

 2013年9月28日(土)。
 抜けるような秋空の下、第4回「JKSKボランティアバスツアー」が実施されました。
 主催はNPO法人女子教育奨励会(JKSK)。福島・いわき市周辺でオーガニックコットン栽培を手伝うツアーの4回目です。
 バスは定刻7時に新宿駅西口を出発。いつもの天ぷら油で走るバスですが、今回は大型です。
 JKSKの担当理事の大和田順子さんは、残念ながら今回は欠席。
 事務局の方からの行程等の説明に続き、マイクを回して30名ほどの参加者から一人ずつ自己紹介。私のような「常連」もいれば、初めての方もかなりいらっしゃいます。
 オーガニックコットンTシャツを作っている(株)アバンティからも、3名の女性社員の方が参加されていました。
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 車中、同行されたJKSK・木全ミツ理事長から講話を頂きました。
 JKSKの沿革と理念、本ボランティアバスツアーを実施するようになった経緯と趣旨等の説明とともに、主人公は現地のリーダーの方達、私たちは復興が完成するまで支援を継続することが重要、との話がありました。
 事務局とデザイナーの伊藤陽子さんからは、企画中のオーガニックコットンの手ぬぐいについて説明がありました。
 4種類のデザイン案が回覧されましたが、伝統的な豆絞りなど、どれも素敵なものです。
 11時頃、いつもの広野町(いわき市の北隣り)のコットン畑に到着。
 毎回、指導して頂いている松本公一さんと、いわきおてんとSUNプロジェクトスタッフの矢口さん、相川さんが出迎えて下さいました。
 今回、吉田恵美子代表は出張中とのことで、残念ながらお会いできませんでした。
 今日の作業は、川向こうの畑の草取りと支柱等の補修とのことです。
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 思えば、1回目(5月25日)のツアーの時に植えたコットンの苗は心細く感じられたのが、2回目(6月22日)には順調に育った姿を見せてくれ、3回目(8月24日)には黄色い花を見せてくれました。
 そして今回、花が落ちた後は紡錘型に肥大し(コットンボールと呼ぶそうです。)、いくつかは弾けてコットンが顔を出していました。やや濃い茶色、伝統的な茶綿の品種です。コットンの実物を見るのも、手に取るのも初めてでした。柔らかい手触りに驚きました。
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 感動もそこそこ、作業に取りかかりました。
 うねの間にはびっしりと雑草が生えています。しかも、メヒシバのような根が強い草が多く、鎌を使って根を削るようにして抜いていくのですが、なかなかの手間です。
 それでも青空の下、爽やかな風を感じながらの作業は、心地よいものです。
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 お昼は、畑の脇に張ったテントの下でお弁当。
 1回目にも頂いた地場の食材にこだわった「スカイストア」のお弁当は、野菜などボリュームたっぷり。広々とした景色を眺めながら、屋外で食べるお弁当は格別です。
 川を隔てた向こう側の資材置き場は水田だったところ。さらに向こう側には、フル稼働中の東電広野火力発電所の巨大な煙突。原発は停止中ですが、今も福島は首都圏への電力供給基地です。
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 作業を再開。草抜きは、ほぼ終了しました。
 引き続き、先日の台風で傾いた支柱等の補修作業です。支柱を立て直し、麻紐を通して、コットンの株を起こして支えるようにします。
 14時過ぎで作業は終了。
 とはいえ、全てを補修し切れたわけではありません。ボランティアで支援するなどと言いながら、結局は地元の方達の労力に負うところが大きいということです。
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 さて、今回は、この春まで人が立ち入ることができなかった楢葉、富岡へのスタディツアーが行程に組まれています。
 松本さんがバスに同乗し、ガイド役を務めて下さいます。
130928_7_convert_20131001231740.png 松本さんは、楢葉町で稲作経営をされていましたが(水田には白鳥が飛来していたそうです。)、現在はいわき市内の仮設住宅に避難中です。
 仮設住宅ではバケツで稲を栽培されているそうで、写真を回覧して下さいました。
 
 その松本さん、車窓から見える農地の姿をよく見ておいて欲しいと。
 いわき市や広野町では水稲も作付けされており、正に稲刈りの時期、水田は黄金色に輝いています。
 「道の駅ならは」は現在は営業を休止、双葉警察署の臨時庁舎になっています。玄関脇には、全国の警察署から応援派遣された警察官の皆さんの寄せ書き等が飾られていました。
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 楢葉町に入ったとたん、光景は一変しました。
 ほとんどの農地は、一面、セイタカアワダチソウやススキに覆われています。一部、除染が進められている農地は土が見えているものの、作物は作付けられていません。
 一カ所だけソバが植えられているほ場があり、ここだけは白い花が一面に咲いていました。
 あちらこちらに並べられている大量の黒いビニール袋は、除染した土などを入れたものです。現在、中間処理施設の建設場所等について話し合い中とのことですが、色々な事情があるようです。
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 沿道の建物も、大きな被害を受けています。
 警戒区域に指定され、この春まで立ち入ることさえできなかったため、がれきや落ちた屋根瓦等もほとんど片付けられていません。
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 バスは国道6号線を右折してJR富岡駅に向かったのですが、津波の被害を受けた地区の惨状は目を覆うばかりでした。
 かつて特急も停車したという富岡駅の駅舎は流され、架線を支える鉄骨の支柱は折れ曲がってホームの屋根に乗ったままです。
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 建物の1階部分は全て壊滅状態。全体が傾き、崩れている住宅等も多数あります。美容室の店先の時計は、津波が来襲したであろう時間で止まっていました。
 自動車の残骸は雑草の中に転がったままです。どこにも人の気配は感じられません。
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 市街地を離れ、やや北にある高台に向かいました。ここでバスを下車。
 眼下、左側には強い波が打ち寄せる海岸線。港湾施設も破壊されたままで、堤防や建物の残骸がそのまま残されています。
 その向こう側には、先ほど通ってきた富岡駅など町の中心部。
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 そして、さらに向こう側には、運転停止中の東京電力福島第二原子力発電所の巨大な排気筒と建屋が望まれました。
 風も強く、大きな白波が次々と押し寄せる壮絶な光景に、参加者全員、声を失いました。
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 2年半前の地震と津波で被災し、続く原発事故の影響で全住民が避難を余儀なくされた地域は、壊れた建物やがれき等もあの日のままで、時間が止まっているかのように感じました。
 そのようにFBに投稿したところ、南相馬出身の方からコメントを頂きました(首都圏で避難者等のネットワークづくりをされている方です)。
 「あの日のまま・・・、そして更なる荒廃が今も続いています。人がいないことが家や町にとってどれほど酷なことなのかを感じずにはいられません。」
 外見からは全く被害がみられない、新築間もないような住宅もあります。どのような家族が住んでおられたのでしょうか。今は、どちらにおられるのでしょうか。
 バスは来た道を南下し、広野町、そしていわき市へ。
 当たり前のように思っていた黄金色の水田の風景が、目に染みます。
 いわき湯本温泉の老舗旅館・古滝屋さんへ。
 毎回、最後はこちらの温泉に入らせて頂いています。
 この旅館も大きな被害を受けましたが、営業を再開、今回はロビーの後方が絵本の展示棚になっていたり、ロビーに大きな花が飾られていたり、毎回、改修が進んでいく姿は嬉しく感じられます。
 なお、ここの若旦那・里見喜生さんは、いわきおてんとSUN企業組合の活動の3本柱の一つであるスタディツアーを担当されており、この日も多くのツアー客で盛況だったとのことです。
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 予定より1時間ほど遅れてバスは東京へ。
 もう一度マイクを回し、参加者から一言ずつ感想など。コットンを収穫できた喜びとともに、旧警戒区域内の光景には等しく衝撃を受けたようです。
 午前中の挨拶では当たり障りのない発言が多かったのですが、若い方達を含め、帰りはしっかりと「今日、見た光景を周りの人に伝えていきたい」など、自分の言葉を絞り出していました。
 伊藤さんからは、避難を強いられている方達の気持ちを思い、手ぬぐいのデザインを練り直すとの言葉。
 それぞれの思いを乗せて、バスは21時過ぎに新宿駅西口に戻ってきました。
 週末の新宿は、多くの人たちの楽しそうなざわめきと雑踏。五輪招致も決まり、何となく街は浮かれているようです。
 平和そのもの。今朝と同じはずですが、まぶたの裏に旧警戒区域内の光景が焼きつけられているせいか、ざらざらとした違和感を覚えざるを得ませんでした。
 なお、このボランティアバスツアー、次回(最終回)は11月23日(土)に開催される予定です。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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