F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.029

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.29 ; 2013.10/5(土)[旧暦 長月朔日]発行

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 長月に入りました。

 長月とは「夜長月」の略とされます。天は高く月は冴え、紅葉が始ま

り、肌寒さが増してきます。

 震災から3回目の秋も深まりつつあります。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日(朔日=新月の

日)と15日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は旧暦長

月朔日の配信です。

 


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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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日本は「農業大国」か

 (3)日本農業の実力−土地−

 前回は、日本の農業は生産額だけ見れば確かに5位かも知れませんが、

これをもって日本を農業大国と断じることは適当ではないことを説明し

ました。

 

 それでは、日本の農業の実力(国民に食料を供給する力)とは、諸外

国と比べてどの程度でしょうか。

 

 生産活動に必要となる基本的な要素は、土地、労働、資本とされてい

ますが、今回は、農業にとっては他産業(例えば製造業)と比べ、より

重要な土地(農地)について取り上げます。

 

 日本の農地面積は約5百万ha(2010、農水省『耕地及び作付面積統計』)

で、これを人口で割ると一人当たり0.04ha400平米)となります。

 

 諸外国はどうでしょうか。

 例えばアメリカの農地面積は411百万ha、オーストラリアは410ha

それぞれ日本の約90倍です。国土面積も大きいのですが、一人当たりに

すると、アメリカは1.31ha(日本の約30倍)、オーストラリアは18.7ha

(同500倍)となります。

 

 また、フランスやドイツの国土面積は日本とそう違いませんが、農地

面積については、フランスは日本の約6倍、ドイツは約3倍あります(日

本は山林が多いため)。一人当たりでみると、それぞれ0.47ha、ドイツ

0.20haと、日本とは一桁違います。

 

 さらに、国土面積は小さいながら農産物の輸出大国であるとして引き

合いに出されることの多いオランダも、一人当たり0.11haと日本の約3

です。

 

 ちなみに、日本が輸入している主な農産物の生産に必要な海外の農地

面積は1,245haと、日本の農地面積の2.7倍に相当する農地を海外に依

存しているとの試算もあります(平成19年度食料・農業・農村白書)。

 

 以上のように、日本は農地という資源には決して恵まれていません。

これは主として地理的条件によるものですが、実はそれだけではないの

です。

 

 というのは、経済の高度成長が始まる前の1960年の農地面積は607ha

あったのが、2010年には459ha4分の3へと減少しました。

 この間、耕地利用率(作付延べ面積/農地面積)は134から92へと低下

しているのです(少なくとも6%の農地には、1年間、何も作付されてい

ないということです)。

 さらに、現在、耕作が放棄されている農地が41haあります(埼玉や

滋賀県の面積と同程度)。

 

 つまり、日本の農地資源が乏しいのは、私たちが貴重な農地を減らし

てきて、かつ、有効に利用していないという現状を反映したものでもあ

るのです。

 

[参考]主要国の農業関連主要指標

 農林水産省「平成23年度食料・農業・農村白書」参考統計表

 (p.6465に「農業関係指標の国際比較」が掲載されています。)

  http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h23/pdf/t_data_3.pdf

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 根本二郎さんは、1948年、福島県いわき市の生まれ。

 東京都内の高校・大学を卒業された後、国会議員の秘書等を経て、現

在は新宿区議会議員を務められています。

 

 大都会の象徴のような新宿区(農地はありません。)ですが、根本さ

んの視線の先には、常に農山村や農業があります。

 

 例えば、年に数回、区立の大久保公園(歌舞伎町2丁目)において

「歌舞伎町農山村ふれあい市場」を企画・開催されています。

 ここには毎回、全国各地から生産者や加工業者の方がみえられ、特産

物等を新宿区民等に直接販売します。単なる直売ではなく、農山村・地

方の生産者等と都会の消費者が、直接顔を合わせて交流する場となって

います。

 つい先日(929日)には第9回目が開催され、多くの来客で賑わいま

した。ゼミ等で地域おこし活動に取り組む学生さん達もブースを出して

おられました。

 

 また、根本さんは、区役所屋上での菜園作りや、新宿の伝統野菜「内

藤とうがらし」を地域興しのシンボルとして復活させる取組にも携わら

れています。

 

 さらに、20113月の東日本大震災と原発事故以降は、被災地支援にも

積極的に取り組んでおられます。

 

 震災直後から被災地に何度も足を運ばれるとともに、都内の避難者等

を支援するNPO法人の設立、東京・檜原村での保養者の受け入れ等の活動

に加え、本年3月には、新宿における被災地支援のための拠点として、ダ

イニングカフェ「結・YUI」をオープンされました。

 

 ここでは、被災地等の農水産物やお酒を頂くことができます。

 先日(921日)に伺った際は、さほど広くない店内は、テラス席も含

めてほぼ満席、根本さんとお手伝いの女性はてんてこ舞いでした。

 東北の水産物や福島の地酒など、美味しいもの、珍しいものをたくさ

ん頂くとともに、根本さん達からは福島等の貴重な話を伺うことができ

ました。

 

 また、店先では、月に1回程度、福島や埼玉・小川町の有機野菜等を販

売するマルシェ「すずめの未来市(みらいち)」が開催されています。

 さらに、様々なセミナーや交流会等のイベントも定期的に開催される

など、このカフェは、被災地の復興支援のための情報発信と交流の拠点

になっています。

 

 ちなみに「結・YUI」の営業は原則として月曜から金曜の1723時。

 いつでも空いているからと根本さんはおっしゃっていましたが、先日

(金曜日でしたが)の混雑を思うと、予約していった方が無難かも知れ

ません。

 

[参考]

 根本二郎さんブログ「あしたのために 活動日誌」

 http://nemoji.blog.ocn.ne.jp/

 

 ダイニングカフェ「結・YUI

 http://www.geocities.co.jp/yokoze/yui/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 

 920日付け]久松達央さん出版記念パーティー

  赤坂の「分店・なかむら食堂」で開かれた茨城の農家・久松達央さ

 んの新著「キレイゴトぬきの農業論」の出版記念パーティーは、大勢

 の人で盛り上がりました。

   http://food-mileage.jp/2013/09/20/

 

 922日付け]新宿で福島の風を感じられる「結・YUI

  復興に向けての情報発信・交流の拠点でもあるダイニングカフェ

 「結・YUI 」。ここで美味しい東北の水産物や地酒等を頂きました。

   http://food-mileage.jp/2013/09/22/yui/

 

 922日付け]白石さん(練馬菅野さん(二本松) @オルガン堂

  下北沢の「ふくしまオルガン堂」で開かれた都会と中山間という対

 照的な地域の2人のリーダーによるトークショー。参加者も含め、復興

 に向けての連携の方向等について語り合いました。美味しい懇親会も。

   http://food-mileage.jp/2013/09/22/oru/

 

 926日付け]ゴマプロ番外編 @ 檜原村

  東京ゴマ01(ゼロワン)プロジェクトの前回、刈り残したゴマ

 を収穫するための番外編。リーダーが試作した炒りゴマ等の美味しか

 ったこと。

   http://food-mileage.jp/2013/09/26/

 

 929日付け]「共奏キッチン@シェア奥沢

  自由が丘のシェア奥沢で開催された「共奏キッチン」に久しぶり

 に参加、今回も美味しい料理と楽しい話を堪能しました。

   http://food-mileage.jp/2013/09/29/

 

 102日付け]ふくしまコットン・ボラバスvol.4−旧警戒区域内へ 

  福島・いわき市周辺でオーガニックコットンの栽培をお手伝いする

 ツアーの4回目。柔らかいコットンの手触り。そして、楢葉、富岡町の

 被災した時のままの姿。

   http://food-mileage.jp/2013/10/02/

 

 103日付け]第9 歌舞伎町農山村ふれあい市場

  新宿の区立大久保公園で開催されたふれあい市場は、単なる直売の

 場にとどまらず、都会と農村との間の顔の見える関係を作り、地域の

 コミュニティづくりの場でもあります。

   http://food-mileage.jp/2013/10/03/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   募集締切等の場合がありますので、参加を希望される場合等は、

  必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

  福島の今を知り、私たちの未来を考える旅

  日時:106日(日)7:0021:30(新宿発着)

  場所:福島・二本松市東和地区ほか

  主催:きぼうのたねカンパニー

  (詳細、お問合せ等

   http://www.his-j.com/kanto/corp/group/inspection/fukushima/

 

  東京ゴマ01(ゼロワン)プロジェクト in 檜原村Part5

  日時:1012日(土)9:3017:30JR武蔵五日市駅集合)

  場所:東京・檜原村

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/542554209150755/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  農業体験会「稲刈り」

  日時:1012日(土)10:0015:00(東武東上線・小川町駅集合)

  場所:埼玉・小川町

  主催:U. S. Peace ファーム

  (詳細、お問合せ等

   http://uspeace.jp/user_data/event.php#kusatori

 

  しごと塾さいはら<番外編>西原ふるさと祭りのお手伝い

  日時:1013日(日)(12日には前夜祭も。)

  場所:山梨県上野原市 西原(さいはら)地区

  主催:しごと塾さいはら

  (詳細、お問合せ等

   http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

 

  小紺有花さん講演会「地球に優しい糀のお話」

  日時:1014日(月、休)13:0015:00

  場所:石川県女性センター2 大会議室(金沢市三社町1-44

  主催:金沢エコネット

  (詳細、お問合せ等

  http://kanazawa-econet.main.jp/img/kouji.pdf

 

  品川マルシェ「全快野菜ちゃん」

  日時:1019日(土)10:0015:00(売り切れ終了)

  場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/1379423202293890/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  「有機農家と八百屋が語るキレイゴトなしの安全な野菜・うまい野菜」

  日時:1029日(火)18:3020:00

  場所:東京ウィメンズプラザ(渋谷区神宮前5-53-67

  講師:久松達央氏(有機農家)、野村知司氏(「やさいやふうど」)

  主催:食生活ジャーナリストの会

  (詳細、お問合せ等

   http://www.jfj-net.com/3932

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は、全て、筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は1019日(土)(旧暦・長月十五日)の配信予定です。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也