「コミュニティ農業」への期待

 冬晴れの寒い日が続きます。気がつくと街はクリスマスのイルミネーション。
131120_1_convert_20131124093350.png 2013年11月20日(水)の19時から、銀座三丁目の「銀座会議室」において「銀座農業政策塾/第3期/プレ講座」が開催されました。
 主催は、NPO法人農業情報総合研究所とNPO法人銀座農業環境イニシアティブ。
参加者は様々な年齢、職種の方達20名ほど、それぞれに農業に強い関心を持っておられるようです。
 高安和夫塾長の開会挨拶に続き、講師である蔦谷栄一(つたや・えいいち)先生から「コミュニティ農業のすすめ ~生産者と消費者、地域と地域をもっと身近に~」と題した講演が始まりました。
 蔦谷先生は、永く勤められた農林中金総合研究所をこの10月に退職され(引き続き客員研究員として在籍)、新たに、ご自身で「農的社会デザイン研究所」を立ち上げられたそうです。
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  (写真は農業情報総合研究所から提供頂いたもの。)
 その新たな研究所の活動の柱の一つとなるのが、来年1月にスタートする「銀座農業政策塾・第3期」です。
 これまで、第1期では農業・農業政策を学び、第2期では参加者自らが政策提言を行いました。そして第3期(毎月開催、全6回、山梨への現地調査も予定。)では、自分の身近なところから何ができるか、より実践的な内容となるそうです。
131120_2_convert_20131124093423.png この日の講座は、言わばその予告編です。
 日本農業の大きな問題は都市住民(消費者)と生産者との間の距離が離れてしまっていることですが、蔦谷先生によると、最近、顔が見える関係(コミュニティ)が構築される動きが出てきているそうです。
 「コミュニティ農業」とは、人と人(生産者と消費者等)、農村と都市、さらに人と自然との関係性を活かして展開される農業とのこと。
 その典型が1960年頃から日本で始まった産消提携。
 ドイツやスイスを経由してアメリカに渡ってCSA(Community Supported Agriculture)として盛んになり、最近はヨーロッパに逆輸入されているそうです(フランスのAMAP、イタリアのGAS等)。
 そもそも農業は、土地・自然・環境(自然資本・資源)、地域コミュニティ(社会的関係資本)があってこそ成り立つもの。
 その意味で、大規模経営の育成だけではなく、安全性や環境、地域の多様性を重視する視点が必要であること。
 また、成長志向の資本主義社会は今や限界に直面し、いかに成熟国家に移行していくかが重要であり、地域自給圏:FE3C2(Food, Energy, Environment, Education, Care, Culture)という考え方の重要性を提唱されました。
 引き続き参加者との間で意見交換。
 自然農法と微生物の働きの重要さ等について話し合われました。
 また、蔦谷先生からは、自宅近くに直売をしている農家があり、以前から勝手に会員と称して前払いで農産物を買っていたのが、改めて思うと実質的にはCSAだったというお話もありました。
 さらに、場所を変えて懇親会もセットされていたのですが、風邪気味だった私は残念ながら失礼することに。
131120_3_convert_20131124093445.png 改めてご著書も拝読しました。
 蔦谷先生が強調されるように、身近なところ(足元)からの生産者との「顔の見える関係」づくりや地域循環等は、非常に重要な方向です。
 しかし、その一方で、東京など大都市圏に安定的に食料を供給していくためには(都市農業もむろん大切ですが)、遠隔地の大産地に頼らざるを得ないのも事実です。
 既存の大量・長距離流通システムとどうバランスを取っていくか、あるいは、価格重視の既存のシステムに、いかに「コミュニティ」的な要素を取り込んでいけるかが大きな課題と思われます。
 ところでこの日(11月20日)、「1票の格差」について最高裁は「違憲状態」判決。
 純粋な人口比例による定数是正は、都市住民(消費者)の政治的発言力のさらなる強化につながります(投票価値の平等が尊重されるのは当然ですが)。
 つまり、都市(消費地)の住民の農村(生産地や生産者)に対する想像力が、ますます重要になってきます。
 その意味で、「コミュニティ」を切り口にした第3期の銀座農業政策塾(1月21日スタート)が大都会・東京の象徴と言える銀座で開催されることは、大きな意義を有しています。
 食べ物や農業に関心を持つ都会の人たち、とり分け若い方達に、ぜひ、参加して頂きたい講座です。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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