今年も伝統野菜等に注目です。

 2014年の正月三が日は、当地(東京・多摩地方)では穏やかに過ぎました。
 2日には、弟の一家が横浜から来てくれました。毎年恒例ですが、新婚の姪の旦那さんも初参加。他出しているわが家の息子、娘も合わせて3世代10名の賑やかな新年パーティーに。
 おせちとともに「ひご野菜コロッケ」も。
 熊本市在住の北亜続子さんは普通の主婦(本人談)ながら、野菜ソムリエとして活動するうち、熊本の伝統野菜・ひご野菜の生産が減少していることに危機感を抱き、自ら、ひご野菜を身近なものとするためのコロッケ専門店を起業・経営されています。
 そのひご野菜コロッケは、パッケージもおしゃれなデザイン。地元(熊本市)のお店「ひご之すけ」では揚げたてを買えますが、冷凍ものを通販で入手することができます。
 東京であれば、ソニービル隣の銀座熊本館でも求めることができます。
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 一人暮らしの息子(社会人)が、器用に揚げてくれました。
 季節によって(旬の野菜を使うので)ラインナップは変わります。
 この日は、赤茄子の麻婆風(一番人気とのこと)、シャキシャキれんこん(生姜風味)、熊本いんげん(鮮やかな若草色)、水前寺菜(紫色のピロシキ風)、芋の芽(和風リゾット)、そして春日ぼうぶらのクリームコロッケ(トロトロ)。
 2つに割ると見た目も鮮やか、味や食感もそれぞれ個性があり、一般的なポテトコロッケとは全く別の食品です。
 若い人たちも喜んで食べてくれました。
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 昨年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
 寿司や懐石、一汁三菜といった献立が登録された訳ではなく、「日本人の伝統的な食文化-自然を尊ぶという日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」」が登録されたものです。
 コロッケは外見上は洋食ですが、ひご野菜という熊本の旬の伝統野菜-しかも北さん自ら生産者との繋がりの中で入手されているもの-を使っており、十分に「文化遺産」に値するものです。
 正月の習わし「おせち」の一部としても、全く違和感はありません。
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(ちなみに「遺産」という言葉は“Heritage”の訳ですが、個人的にはちょっと違和感があります。食文化は、単に過去のものを継承するだけではなく、これから自分たちで作りあげていく(作り直していく)ものだと思うからです。)
 さて、昨年12月の見学会等に参加させて頂いた際は、ひご野菜の生産が減少している一方で、熊本農業高校の生徒さん達が自分達で栽培し、年末にはお正月セットとして販売もしているという、心励まされる話も伺うことができました。
 同じ熊本に11月にお邪魔した際には、熊本の在来種「みさを大豆」(これも生産は減少しています。)を、鹿本農業高校の皆さんが栽培し、加工・販売までしている様子もお聞きしました。
 フード&ライフスタイル協会の毎熊知子さんは、菓子工房「myくま屋」を自らオープンし、鹿本農高のみさを大豆を使ったビスコっティ等を作って販売されています。
 こちらも地元紙に取り上げられたりしているのですが、口コミで受けた注文に対応されるのが精一杯とのこと。
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 農業とは縁遠いイメージのある東京(カロリーベースの食料自給率は1%)においても、今や、江戸東京野菜はすっかり有名になりました。
 昨年12月には讀賣新聞東京版で「東京菜時記」として5回にわたり連載され、今月は産経新聞の「和食」特集の中で取り上げられると聞いています。
 しかし、知名度は自然に高くなった訳ではありません。
 例えば練馬大根がほとんど生産されなくなったのは、長く中太で、収穫に労力がかかるためです。そこを逆手にとって「引っこ抜き競技大会」というイベントを仕組んだのは7年前とのこと。
 今では、これも伝統的な大道芸と連携したイベントも開催されるなど、様々なアイディアとスタイルで、江戸東京野菜は大きく知名度を高めています。
(以上、江戸東京野菜の取組の大一人者、大竹道茂先生のブログへのリンクを貼らせて頂きました。)
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 ドキュメンタリ映画「よみがえりのレシピ」が好評を博するなど、伝統野菜や在来作物は、今や「ブーム」も言える状況です。
 これは、例えば「モンサントの不自然な食べもの」が描くような行き過ぎたグローバリズムに対して、多くの人が危機感を抱いていることを反映したものでもあります。
 NPO法人「野菜と文化のフォーラム」では、ブーム以前の2010年から「伝統野菜、地方野菜」に注目した連続セミナー(「野菜の学校」)を開催してきています。
140103_6_convert_20140103223607.png これは各地の専門家による講演と試食(食べくらべ)で構成されており、伝統野菜の来歴等を頭で理解すると同時に、自らの舌で体験することもできるというセミナーです。
 地域の歴史、風土、食文化等と密接に結びついた伝統野菜等を見直すことは、すなわち、地域やコミュニティ、世の中そのものを見直すことにつながるものと思われます。
 以上、紹介してきたような各地の取組(ごく一部ですが)が、さらに拡がっていくことを期待するとともに、今年も伝統野菜や在来作物について、管見ながら、情報発信にも努めていきたいと考えています。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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