雪の下にあった野菜たち

 関東甲信を襲った大雪から2週間。ようやく雪もほぼ消えました。
 ここ数日は暖かい日が続き(花粉の季節到来!)、気がつくと近所の梅は満開。地面にはフキノトウが顔を出しています。蝋梅の花はすでに盛りを過ぎていて、季節の早さに慌てさせられます(ロウバイだけに)。
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 2014年3月1日(土)は、一転して冷たい雨の一日となりました。
 和暦では如月の朔日(何とかメルマガを配信)。如月(きさらぎ)の語源は、まだ寒い日が続く「衣更着」とも、草木が萌え始める「生更木」ともされます。
 雨の合間に、近所に一画を借りている市民農園へ。
 先週は一面の雪原でしたが、昨日までの暖かさと今日の雨で、雪はほぼ消えています。 
 トンネルの支柱は折れ曲り、見事に潰されています。積もった雪の重さが想像されます。
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 雪に覆われていたにもかかわらず、ニンジンは地表から鮮やかな紅の色を覗かせています。ブロッコリも健在です。
 雑草のホトケノザはピンク色の花を咲かせていました。
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 寒冷紗をベタ掛けしていたままの亀戸大根。緑色の葉が茂っているのが見えるので期待して寒冷紗をはがしてみると、ここでも盛んに生育していたのは雑草の方でした。
 肝心の亀戸大根の生長は今一つですが、根もとの土をどけてみると、まだ鉛筆の直径の倍ほど小さな大根ができています。厳しい冬は、何とかクリアできたようです。
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 トンネルを補修。中の雲仙こぶ高菜、温海カブも健在です。
 キャベツをみると、雪に当たった表面の葉は、茶色く変色してどろどろに腐っていました。
 しかし、その外葉を手で覗いてみると、中は、鮮やかな黄緑色です。思わず手に取って口に入れると、何とも言えないシャキシャキ感と甘さ。
 厳しい雪の中でも野菜たちは耐えてくれ、恵みをもたらしてくれています。
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 このような趣味の市民農園だからこそ、簡単に補修もでき気楽なことが言えますが、今回の大雪は関東甲信地方に大きな被害をもたらしました。
 これまであまり大雪が降ったことがない、施設野菜や果樹の栽培が盛んな地域です。
 実は月2回、埼玉・小川町の生産者さんの野菜を届けて頂いているのですが(「おいしいお野菜届け隊」)、先日、仲介されている方から「先日の大雪で小川町でも大変な被害が出ており、お届けがかなり難しい状況です」とのメールが入っていました。
 それで今回はあまり期待していなかったのですが、2月28日にはちゃんと段ボールが届きました。
 さっそく開けてみると、ネギの白さ、ニンジン(2種類)の紅色が、目に鮮やかです。加工品(梅干しと小麦粉)も入れて下さっています。梅干しは、見た目にも大粒で美味しそうです。
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 今回も、生産者のKさんの手書き(のコピー)の手紙と「お品書き」が添えられていました。
 Kさんは、数年前に退職して小川町で新規就農された若い女性です。 
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 「2月14日の大雪では、幸いビニールハウスは補強していたものの、トンネルやマルチは50cm以上の積雪で潰されてしまい、4割ほどの野菜はダメになってしまいました。
 色んな天災がありましたが、雪で被害が出るとは思いませんでした。自然には勝てないので、早め早めの対策が必要ですね。
 厳冬に加えて大雪で、2~4月にお出しする予定の野菜もかなりの危機、今回も決していい状態ではありません。ご了承ください。申し訳ありません。」
 また、「お品書き」には、
 「ねぎ 緑色の部分は良い状態ではありません。
  かぶ 葉の部分はやられてしまったので今回は実の部分だけです。
  キャベツ 雪で形がつぶれています。すみません
  梅干しは昨年漬けた自家製、小麦粉は地粉(農林61号)」等と説明が書かれていました。
 (キャベツは届いた日の夜に頂いてしまったので上の写真にはありません。美味でした。)
 淡々とした文面からも被害の大きさが伺えます。
 その一方で「東京も大変だったと思います」とこちらを気遣う言葉もあり、Kさんの人柄が偲ばれます。
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 いずれにしても、農業は自然の影響を大きく受けざるを得ません。しかも近年、地球全体の気候変動が大きくなってきているのかもしれません。
 天候等のリスクを生産者と消費者がシェアするCSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれて取組がアメリカ等で拡がっています。シーズン前に契約して代金は一括で前払いし、商品は収穫量に応じて受け取るという仕組みです。
 実はこの取組、日本の「産消提携」が原型とされています。
 1978年、日本有機農業研究会が発表した「提携10か条」には、単なる商品の売り買いではなく、有機的な人間関係に基づく「相互扶助」を理念とすること等がうたわれています。
 ところが、その後の日本の「提携」は、消費者サイドの一方的なニーズ(安全性や美味しさの追求)に沿った産直や宅配に姿を変えてしまっていたことは、福島や東日本の有機農家等と「提携」していた消費者の多くが、原発事故後、生産者の苦境に心を配ることなく、離れていってしまったという現実からも明らかです。
 今、改めて産消提携の理念を思い起こし、新しいタイプの日本型CSAを拡げていくことが必要です。
 「おいしいお野菜届け隊」は、その先駆的な取り組みの一つです。
 ちなみに3月16日(日)には、小川町の農場見学&プチ農業体験会が計画されているそうです。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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