“まち食”サミット&おたがいさま食堂

 2014年4月20日(日)、代々木公園のアースディ東京の会場を後にし、JR阿佐ヶ谷駅に着いたのは13時40分頃。
 南口を出て右に折れ、高架沿いの路地を進んだところにあるのが「阿佐ケ谷市庭スタジオ」。お洒落なフレンチレストラン脇の階段には「“まち食”サミット&おたがいさま食堂#009」の手書きの看板。
 2階に上がると、清潔で明るいスタジオに40名ほどの人が集まっています。 
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 進行役の影山知明さん(この方も西国分寺でカフェを営業されているそうです。)から、都市部で孤立感や不安感が広がるなか、「食」をきっかけにしたコミュニティづくり(「まち食」)の事例を学び合いたい、との趣旨説明でスタート。  
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 最初の報告は「地域リビング プラスワン」の井上温子さん。
 板橋区高島平団地の空き店舗に年中無休で「リビング」をオープン。「おうちごはん」、教室・イベント、フリーマーケット等の活動をされているそうです。
 様々な年齢、国籍のごはん当番(ボランティア)による「おうちごはん」は、2013年度は149回実施したそうです。
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 続いて、「おかんめし。」の三宅ようこさん。
 最初は主婦3人と、健康的なご飯を食べたい大学生が、地元・国立市で始めたのが「おかんめし。」(末尾の「。」が大事だそうです。)
 なるべく地場のものにこだわり、公民館や大学のゼミで、一緒にご飯を作って食べて仲良くなる場づくりに取り組んでおられるそうです。
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 続いて、我らが「たかったー」こと高田彰一さんから「共奏キッチン♪」の取組について報告。
 みんなで作って食べることをきっかけにした対話の場づくりの取組。「共奏5箇条」(多世代、オープン、主体性、等しく発言、共同体験)を紹介しつつ、一人ひとりが「自分」でいられる、生き生きと暮らしやすい社会を作っていきたいと話されました。
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 そして、この日の主催者の一人でもある「阿佐谷おたがいさま食堂」の齊藤志野歩さんからは、「「まち食」どうでしょう」と題した報告。
 商店街で買ったものを持ち寄って食べる「もちより食堂」、一緒に作って一緒に食べる「おたがいさま食堂」の取組について紹介頂いた後、どこで・どんな関係性で“ごはんをたべる”かの重要性・可能性など、奥深い内容の報告がありました。
 哲学者・國分功一郎さんの「インフォ・リッチ・フード」の紹介も。
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 第一部の後半は、「「まち食」から広がる可能性」と題したパネルトーク。
 まず、パネリストがお互いに質問と回答することで報告を補足。
 「「日常」だから年中無休。食べに来てくれるだけでも嬉しい。デイサービスに通っている高齢の方が、ここで晩ごはんを食べられて幸せと言ってくれた。赤ちゃんの面倒を見てくれたりもする」(井上さん)
 「まずは来て頂き、FBのグループに入ってもらったりして次第に輪が広がっていく。続けていると、色んなところから声がかかるようになった」(三宅さん)
 「食材にはこだわっている。毎回、ご縁のできた自然農、有機農業に取り組んでいる農家の方の野菜等を取り寄せている。足らないものは近所のスーパーでも調達」(高田さん)
 「産休を取ったのが地域とつながるきっかけに。仕事との往復だけだったのが時間ができ、商店街の空き店舗で地域の人たちと一緒に食べる取組(もちより食堂)を始めた」(齊藤さん)
 スタッフや参加者の間の人間関係についても話題に。
 「長く時間をともにすると遠慮が無くなることも。円滑な人間関係を保つためにコーディネータの役割が重要」(井上さん)
 「連絡はメール中心なので、感情的な行き違いが生じないよう注意している。顔文字一つ入れるだけでも印象が違ってくる」(三宅さん)
 「魚をさばくなど、自分が苦手なことをテーマにすると人間関係がつながりやすくなる。自分の苦手は誰かの得意」(齊藤さん) 
 「オープンなので色んな人が来る。ある時、酒乱気味で声の大きい人が来てちょっと困ったが、参加者の一人が「まずはこの人の言いたいことを聞いてみましょう」と言ってくれた。主催者としてやることは次第に減ってきている」(高田さん)
 壁に貼られた紙に、書記役の篠原さんがどんどんとメモしてくれます。発言内容が的確にまとめられており、これを見かえしながら話を聞くことで、さらに理解が深まります(ファシリテーション・グラフィックと呼ぶそうです)。
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 続いて、運営にかかる経費等についても話題に(進行の景山さん、みんな知りたいけれど少々聞きにくいようなことにズバズバと切り込みます)。
 今は皆さん、基本的にボランティアで運営されているようですが、無料の公共施設は抽選で定期的に確保できないという事情、料理を作ってくれる人やコーディネータ的な役割の人の人件費位は賄いたいため、少しは使えるお金を確保したい等の意見がありました。
 会場の方との間でも意見交換。
 杉並区での「水曜夜ごはん部」など、実際に「まち食」の活動に取り組んでおられる方も多数おられます。
 市庭スタジオのオーナー・東島さんからの「皆さんは、食べることが大好きな人を増やしていく活動をされているのですね」というご発言が、強く印象に残りました。なお、この方も、地域づくりや生涯学習の活動に取り組んでおられるそうです。
 メモは、とうとう壁一面を覆ってしまいました。
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 続いて、第2部「おたがいさま食堂#009」。
 椅子を壁際に動かして大きな調理台とテーブルが運びこまれると、たちまち、会場は広い調理スペースに早変わり。
 たかださんの指揮の下、参加者全員で(子ども達も一緒に)調理に取りかかります。
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 この日のメニューは、ジャーマンポテト、鶏肉のソテー(オレンジソース添え)、にんじんのしりしり、キャベツ等の温サラダ、そして様々な具(参加者の持ち寄りです。)が入ったおにぎりなど。
 どんどんと料理ができていく様は壮観で、「共奏キッチン♪」とはだいぶ趣が異なります(もっとも「三田の家」は、あえてキッチンは狭くデザインされていたそうですが)。
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 たちまち、テーブルには豪華な料理が並びました。色とりどりの外見、中身の具も様々な沢山のおにぎりも。
 みんなで「頂きます」。
 途中、照明が暗くなったと思ったら、偶然この日が誕生日だったスタッフの方にサプライズのケーキが贈呈されました。
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140420_2_12_convert_20140425015122.png 書記もして頂いた篠原さんが、料理の内容を即興で素敵なイラストにまとめて下さいました。不動産関係の仕事をされていて、日頃、物件の立地や間取りをスケッチするのには慣れておられるそうですが、それにしても素晴らしい。
 3年ほど前に初めて「共奏キッチン♪」に初めて参加した時は、こんな素晴らしい取組が大都会の真ん中にあったのかと驚いたものです(当時、「無縁社会」などという嫌な言葉も流行っていました)。
 しかし、このような事例は稀なものと思っていたところ、今回、同じように食をきっかけとしたコミュニティづくりの取組が各地で広がっていることを知り、心強く感じた次第。
 今日、報告を頂いた各地の取組を、まずは自分でも訪ねてみたいと思っています。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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