ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2014(第1回)

 2014年6月1日 (日) 朝7時の新宿西口、今年も1台のバスが福島に向けて出発しました (ちょっとアクシデントがあって一旦戻りましたが)。
 「ふくしまオーガニックコットン・ボランティアバス2014」 の第1回です。
 主催は認定NPO法人 女性の活力を社会の活力に(JKSK)
 アルファベッ トの略称はそのままですが、名称は 「女子教育奨励会」 から 「女性の活力を社会の活力に」 と変更されたとのこと。
 担当理事の伊藤陽子さんと事務局の小暮さん(ランドブレイン(株))から、この日の行程と作業内容等の説明。
140601_1_convert_20140605230747.png
 続いて大和田順子さん(JKSK新理事長)から、プロジェクトの概要について説明がありました。
140601_2_convert_20140605230818.png 福島・いわき市を中心に、オーガニックコットンの栽培、太陽光などコミュニティ電力、被災地復興スタディツアーを実践する「いわきおてんとSUNプロジェクト」は、JKSKが2011年8月に開催した「結結(ゆいゆい)プロジェクト第2回車座 in いわき」をきっかけに誕生したものとのこと。
 今年はコットンプロジェクトへの参加農家も増え、いわき市、広野町を中心に22か所、2.5haで栽培される予定だそうです。
 製品化されたTシャツや手ぬぐいも、披露して頂きました。
 その後、マイクを回して30名ほどの参加者から1人ずつ自己紹介。
 昨年から引き続いての参加者(私も昨年は4回参加させて頂きました。)に加え、デザイナーである伊藤さんの知り合いの方(アート関係等)も多く、ボランティアへの参加や福島は初めてという方もいらっしゃいます。
 渋滞もなく、友部、四ツ倉SAでの2度の休憩を経て、10時半頃にいわき市の北隣・広野町の現地に到着。快晴です(途中、常磐道脇の温度計表示は33℃!)。
140601_3_2_convert_20140605230919.png バスを降りると、光景が変わっているのに気付きま した。
 昨年来た時には、津波の被害を受けた水田跡地に一面に消波ブロックが並べられていたのですが、これらは姿を消し、一部には稲が作付けられ、防災緑地 (堤防) の工事が始まっています。 高台には真新しい復興住宅が建ち並んでいるのが見えます。
 その向こうには東電・広野火力発電所の高い煙突。これは昨年と変わりません。原発は止まっていますが、福島は今も首都圏への電力供給基地です。
140601_3_convert_20140605230857.png
 いわきおてんとSUN企業組合の吉田恵美子代表と職員の新妻さん、農作業を指導して下さ る松本公一さんと矢口さん達が出迎えて下さり、ご挨拶を頂きました。
140601_4_convert_20140605230941.png
 常磐線の低い鉄橋をくぐり、今年、作業する畑へ。
140601_5_2_convert_20140605231030.png ざっと100坪ほど(3アール強)。さほど広くはありませんが、雑草が生えている更地を畑に変身させ種播きするまでが今日のプログラム。終わるまで帰れません、との説明。
 担当が伊藤さんに代わられたせいか、去年より作業はハードのようです(後で伊藤さんに聞くと「理事長のご意向」とのことでしたが)。
 除草から取り掛かりました。柔らかい砂地ながら、スギナなど根の深い草が多く厄介です。
140601_5_convert_20140605231003.png
 端から耕うん機で耕し、溝を切っていきます。
 初めて機械にさわる参加者も多く、松本さんが手を取って指導してくれますが、まっすぐ進むのも大変です。
140601_6_convert_20140605231054.png
 鶏糞を散布し、その後から鍬で土をかぶせて混ぜるようにしながら、畝を立てていきます。幅、高さを揃えるのは、なかなか難しい作業です。
140601_7_convert_20140605231117.png
 この間、別働隊の数名はすぐ近くを流れる浅見川の河原へ。綺麗な流れです。軽トラの荷台に据え付けた大きなポリバケツに、パケツリ レーで水を汲んでいきます。
 戦時中はよくやりましたね、と軽口を叩くと、「震災時のボランティアでもやりましたよ」と事務局の方。
 畑に戻り、じょうろで水を掛けていきます。
140601_8_convert_20140605231141.png
 続いての作業はビニールマルチ敷き。
 女子2人組がロールを引っ張っていき、その後から、畝とのすき間ができないように裾を踏んで土をかぶせていきます。さらに足で踏み固めるようにします。
 初めての作業に最初は戸惑っていた女子2人組、最後は慣れて商売できるほどに上達しました(これぞ「マルチ商法」?)。
140601_9_convert_20140605231204.png
 半分ほど敷き終わった頃に正午を回り、休憩と昼食の時間。
 日射しは強いものの、テン トの下や木陰は風が心地よく感じられます。海が近いせいかも知れません。
 今回もお弁当はいわき食彩館・スカイストアのもの。地元の農作物や加工食品の販売と地産地消に取り組む市民グループのお店だそうです。
 時折、頭の上の鉄橋を常磐線の電車が通過します。
 常磐線は広野から先が不通になっていましたが、まさにこの日(6/1)、2駅先の竜野まで3年2カ月ぶりに運転が再開されたとのこと。
 ちなみに、広野ICから先は通行止めだった常磐自動車道も、今年1月に常磐富岡ICまで再開通しています。
140601_10_convert_20140605231229.png
 吉田さんが、地元特産の大ぶりなイチゴを差し入れて下さいました。「いわきの女王」(新舞子ファーム・キダ)というブランドだそうです。
 参加者の間から美味しい、ぜひ買って帰りたい、との声が上がります。
 地元の農家・根本さんが来て下さり、広野町の農業の現状等について話を伺うことができました。
 もともと広野町は兼業中心で大規模農家は少なかったそうです。原発事故後はいったん全町民が避難、現在は帰還が進められ稲の作付も再開されているものの、まだ避難先から戻られない方も多いとのこと。
 また、建設中の防災緑地にミカン(広野町は温州ミカンの北限とのこと)を植える運動をされていることも、紹介して下さいました。
 この間、他の視察やボランティアのグループも(外国人や学生のグループも)来られ、交流も。
 
140601_11_convert_20140605231253.png
 13時を回って午後の作業を再開。
 敷いたマルチに、竹尺で計って等間隔に指で穴をあけていきます。そこに、空き缶を半分に割りギザギザをつけたような器具で、直径8cmほどの穴をあけていきます。ちょっとコツと力が必要です。
 その穴に、数日、水に浸しておいて芽が出かかっている綿の種を、4粒ほどずつ播いて軽く土を被せます。さらに水をやり、一連の作業は終了となります。
140601_12_convert_20140605231318.png
 慣れない作業、そもそも農作業は初めてという参加者もおられ、最初はどうなるかと思いましたが、14時過ぎには予定されていた作業は終了しました。
 松本さんや矢口さんのご指導のお陰です。
140601_19_convert_20140607095708.png ここで、事務局の方から川向うに移動するように促されます。事前には知らされていなかった企画のようです。
 いったん川を下り、橋を渡った対岸の山裾で待っていて下さったのは、ジョン・ムーアさん。
 アイルランド出身、コピーライターとして多くの国際的な賞を受賞された後、パタゴニア日本支社長等を経て、現在は一般社団法人 SEEDS OF LIFE(高知) の代表として在来種の保存・普及運動に取り組んでおられる著名な方です。
 サプライズ企画の自然農法ワークショップが始まりました。
 日本語も達者な上手なムーアさん。
 今までの常識は全て忘れて大自然の姿を見るようにと、1人ひとりに熱く訴えられます。植物は24 時間、何も言わずに働いているのに、人間は横柄。土は神様。それを踏みつける長靴は邪魔。
 足もとの土(昨年、コットンを植えていた畑です。)を一握り取るように言われ、さらに一段高い山際の土地へ誘われます。一面に野草が生い茂っている土を取り、先ほどの土と比べてみるようにと。確かに匂いは強く、甘いような味がします。
140601_13_convert_20140605231351.png
 土団子の作り方を実演してくれました。
 蕎麦を3粒、大豆を2粒、クローバーと唐辛子も加え、水を加えた畑の土とこね合わせます。これを畑に置くと、数日で発芽するとのこと。
 自然のバランスがいかに大切かということを、何度も強調されていました。
140601_14_convert_20140605231414.png
 そのムーアさんと握手し、あるいは肩を叩かれて、バスに戻りました。
 ここで松本さんと矢口さんに見送られ、国道6号線を南下します。やがて左側に太平洋。津波があったとは想像もできない穏やかな海です。
 吉田さんが同乗し、いわきの現状等について話して下さいました。
 こんなに検査して安全であることが証明されているのに風評被害が払拭されないと嘆く農業関係者の隣には、地元の農産物を学校給食に使ってほしくないと訴える若いお母さんもおられるとのこと。どちらも、現在のいわき市の本当の姿であり住民の意見、どちらがいいとか悪いとかは言えない、と吉田さんはおっしゃっていました。
 初日の出の名所・波立薬師を過ぎて間もなく、太平洋健康センターいわき蟹洗温泉に到着しました。
 昨年は毎回、いわき湯本温泉・古滝屋さん(ご主人の里見さんは、いわきおてんとSUNプロジェクトのスタディツアー「ふよう土」担当理事)だったので、ここは初めてです。
 海を望む露天風呂で汗と土埃を流しました。
140601_15_convert_20140605231442.png
 私たちが風呂に入っている間に、吉田さんは車を飛ばしてイチゴを調達に行って下さっていたようです。その吉田さんとも、ここでお別れです。今回もお世話になりました。 
 今度は、いわきおてんとSUN企業組合の新妻さんが、道の駅よつくら港まで案内して下さいました。
 昨年来た時は、港湾敷地内におびただしい数の被災した漁船が積み上げられて壮絶な光景だったのですが、全て片付けられて綺麗になっていました。
 道の駅では、新妻さんから地元の名産などを説明して頂きながら、思い思いに食品や野菜、飲みもの等を購入。
140601_17_convert_20140605231530.png
 その新妻さんに見送られ、いよいよバスは東京へ。道の駅で買い込んだビール等で、車内では談笑の輪が拡がります。
 友部SAでの休憩の後で再びマイクが回され、参加者1人ひとりから一言ずつ今日の感想など。
 暑い中、それなりにハードな作業でしたが、青空の下で流した汗に満足し、また参加したい等と多くの方が話されました。
 充実した楽しい一日でした。地元の方達も明るく前向きで、震災の爪痕を感じさせる光景も少なくなるなど、復興は確実に進みつつあるようにも見えました。
140601_18_convert_20140605231552.png しかし、松本さんも新妻さんも、実は双葉郡からの避難者です。
 松本公一さんは、広野町の北隣・楢葉町で白鳥を餌付けして冬みず田んぼ(冬季湛水稲作)を手掛けておられましたが、今もいわき市内の仮設住宅住まいです。
 楢葉町は現地での役場業務を一部再開、来春以降の住民帰還を目指していますが、松本さんに伺うと、ご自宅周辺の線量は下がっておらず、帰還のめどは立っていないとのことでした。
 いわき市でも、双葉郡からの避難者や原発関連の作業員を多数受け入れていることから、地元住民との間では様々な溝や混乱が生じているそうです。
 このように、震災からの復興は、まだまだ途上にあると言わざるを得ません。そのようななかで、ふるさとを再生しようとする様々な取組が、現地では続けられているのです。
 ふくしまオーガニックコットンプロジェクトもその一つです。それを応援するJKSK主催のボランティアバスは、今年はあと3回(7月、 9月、11月)、実施される予定です。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
(↓ランキングに参加しています。よろしかったらクリックして下さい。)

人気ブログランキングへ