図12 カーボンフットプリント表示がある商品における各段階別CO2排出量


5 フード・マイレージ基礎知識
(12) フード・マイレージ指標の限界-2 (LCA)

フード・マイレージ指標は、地産地消が輸送に伴う環境負荷を低減する効果があることを説明する上で、単純で分かりやすい指標である一方、限界や問題点もあります。

前回は、どのような機関(輸送手段)によって運ぶかによって、輸送に伴う二酸化炭素排出量は大きく異なるということ、現在の日本の食料の9割以上はトラックにより輸送されており、これを環境負荷の小さな鉄道や船舶で輸送するよう変更していくこと(モーダルシフト)が重要性であること説明しました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/4_CO2keisu.pdf
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/11_yusou.pdf

今回は、フード・マイレージ指標の限界の2点目を説明します。
食料(工業製品も考え方は同じです。)は、その生産から包装、流通、加工、消費、そして廃棄・リサイクルの過程全体を通じて、二酸化炭素を排出しています。この全ての過程を通した環境負荷を定量的、客観的に評価する手法を、LCA(ライフサイクルアセスメント)と呼びます。
(フード・マイレージは、輸送の部分のみに着目した指標です。)

そして、そのライフサイクルの各段階における二酸化炭素の排出量を、カーボンフットプリント(炭素の足跡)と呼びます。

どのようなものか、今回は、まず、一つの試算例をお示しします。
2010年度『食料・農業・農村白書』においては、北海道のコープさっぽろ(札幌市)によるカーボンフットプリントの算定、表示の取組が紹介されています(ちなみに、この前段ではフード・マイレージも紹介されています)。

例えば、みそ(規格は500g)の二酸化炭素排出量は合計で564gとなっていますが、その内訳をみると、原材料(生産段階)が47%と最も高く、次いで店舗(小売段階)34%、工場(加工段階)12%となっており、輸送(原材料及び製品)は7%程度です。

さらに加工度が高いほたてピラフの場合は、輸送段階における二酸化炭素排出量の割合は、全体の2%弱に過ぎません。

このように、食品のライフサイクル全体を通じた二酸化炭素排出量のの中では、輸送段階における排出量の割合は大きくないのです。つまり、フード・マイレージ指標に着目して地産地消を心がけたとしても、それだけでは「環境にやさしい食生活」の実現には必ずしもつながるわけではないのです。

このLCAやカーボンフットプリントの問題は重要なので、次回も説明を続けます。

[参考]
平成22年度『食料・農業・農村白書』
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h22_h/trend/part1/topics/t3_01.html