F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.056

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.56; 2014.11/7(金)[和暦 閏長月十五日]発行

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 一昨日は「後(のち)の十三夜」でした。

 閏長月があったため、3度の「名月」が楽しめたのは171年ぶりのこと

だそうです。東京地方でも薄雲を透かして望むことができました。

 そして今日は立冬です。季節は冬に入りました。爽やかに晴れる日が

あるかと思うと、冷たい時雨が落ちる日もあります。職場近くの日比谷

公園の紅葉は遅いのですが、ようやく色づき始めました。

 

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は閏長月十五

日付けです。

 

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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6 「食と農」豆知識

(1) 世界の人口と食料自給率

 前回まではフード・マイレージについて述べてきましたが、今回から、

毎回、1点ずつ食や農に関するグラフを紹介していきます。

 

 今回、取り上げるのは穀物自給率です。

 自給率にはいくつかの種類がありますが、穀物自給率は計算も簡単で

あるため、国際的には最も一般的に用いられています。

 

 2011年における日本の穀物自給率は28%(よく用いられる金額ベース

67%、カロリーベースの39%よりも低い水準です)。これは、世界の

178の国・地域中125番目、OECD加盟34か国中29番目に当たります。

 

 さて、同年の世界の人口は約68億人。人口が1億人を超える国(ここで

は仮に「人口大国」と呼びます。)は世界に11ありますが、これら11

国で全世界の人口の6割強を占めています。

 日本も人口大国一つです。人口は1.3億人で、中国(13.5億人)、イン

ド(12億人)、アメリカ(3.2億人)等に続き、世界第10位に当たります。

 

 これら人口大国の穀物自給率をみると、アメリカ(人口3位)118%、

ロシア(9位)124%を始めとして、中国100%、インド109%、パキスタ

ン(6位)117%など、多くは100%以上またはそれに近い自給率を達成し

ているのです。

 

 図15は、横軸に人口、縦軸に穀物自給率をとり、世界全体の穀物需給

の状況を表したものです。このグラフからも日本の穀物自給率が際立っ

て低い水準にあることが分かります。

 

(図15

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/15_kokumotu.pdf

 

 なお、日本の穀物自給率が低いのは、大量の飼料穀物(家畜のえさ)

を輸入しているためですが、仮に主食用に限って計算しても59%までし

か上昇しません。

 

 逆に、国内の需要が十分満たされていない(飢餓人口がいる)ような

国でも、外貨が乏しく穀物を輸入できなければ自給率は高くなるように、

自給率という指標には様々な限界があります。

 しかし、仮に世界が同時不作等に見舞われた際に、1億人以上いる日本

国民全員に十分な食料が供給できるかどうかについては、このグラフか

らは心許ないと感じられます。

 

[参考]

 農林水産省「食料需給表」(自給率は10頁目以降に掲載)

  http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/pdf/140805-03.pdf

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 熊本市に「環境ネットワークくまもと」(愛称・かんくま)という

NPO法人があります(代表・宮北隆志先生)。

 持続可能な農的暮らしと健康な地域社会の実現に向け、熊本県内外で

環境保全活動に取り組各団体・個人によるネットワークで、行政や企業

とのパートナーシップも含め、様々な活動に積極的に取り組んでいます。

 

 その活動は、以下の「3つの柱」に沿って進められているとのこと。

  ・環境保護に取り組む個人・NGOのネットワークの構築

  ・市民への環境問題の啓発活動

  ・行政・企業・NGOのパートナーシップの推進

 

 私事で恐縮ながら、熊本市に赴任(人生初の単身赴任でした。)した

のは20054月のこと。熊本に赴くに当たり、戦後最大の公害事件・水俣

病について、少し勉強しようと決心していました。

 しかし特に手掛かりはなく、そのような時に「かんくま」のことを知

り、しかも、近く「水俣エコツアー」を主催されると聞き、早速、申し

込みさせて頂きました。

 

 しかもこのツアーには、「かんくま」代表(当時)の原田正純先生が

同行されるというのです。

 原田先生に対する私のイメージは、医師・研究者として水俣病の原因

究明等に尽力されただけではなく、患者達の支援のため企業や行政とも

闘っている強面(こわもて)の方というものでした。

 ところが当日朝、バスに軽やかに乗り込んでこられたお姿をみて、そ

の勝手なイメージは鮮やかに覆されました。12日のツアー期間を通し、

ガイド役として、バスの中でも訪問先(患者さん宅や共同作業所など)

でも、複雑な水俣病の背景や現状等について、「素人」にも分かりやす

く丁寧に説明して下さったのです。

 

 涙ながらに体調不良を訴える患者さんもいらっしゃいました。その話

に真剣に耳を傾ける原田先生の姿は、あくまで穏やかで優しく、真摯な

お人柄が伺われました。

 宿泊した旅館では、夕食後の学習会に続いて、先生の部屋で焼酎を飲

みながらの雑談にも参加させて頂きました。私にとって忘れえない思い

出、貴重な財産です。

 

 その後、熊本学園大学での「水俣学」講義を(モグリで)聴講させて

頂いたり、東京に戻ってからも講演会に参加したこともあったのですが、

20126月、原田先生は逝去されました。

 多くの人が、強い喪失感にさいなまれました。

 

 その原田先生が呼びかけ人代表となって「かんくま」が発足したのは

1994年のこと。本年10月1日には設立20年を迎えました。127日(日)

には、熊本市内で記念シンポジウム・祝賀会が開催される予定です。

 

 原田先生の遺志も受け継がれ、「かんくま」がますます発展されてい

くことをお祈りしたいと思います。

 

[参考]

 NPO法人環境ネットワークくまもと(かんくま)

 http://www.kankuma.jp/pc/

 

 かんくま通信(第82号に原田正純先生追悼号があります。)

 http://www.kankuma.jp/pc/component/option,com_docman/task,cat_view/Itemid,34/gid,43/orderby,dmdatecounter/ascdesc,DESC/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 若手八百屋ツアー第2 @ 三軒茶屋
(10/21)

 三軒茶屋で八百屋を新規開店された方の話を伺いながら、野菜中心の

食事を頂くイベントに参加しました。

  http://food-mileage.jp/2014/10/21/

 

 神田「fune」、ご近所ラボ新橋など(10/28)

 ちよだプラットフォームスクエアの神田・なみへい2号店のランチ。

ご近所ラボ新橋では慶應大・坂倉杏介先生をゲストに対話の会。

  http://food-mileage.jp/2014/10/28/

 

 ご近所イノベーション・「やったらええんちゃうん」(11/02)

 冷たい雨が落ちる中、慶應大で開催された熱いシンポジウム。ご近所

での実践報告と、大南信也さん(徳島・神山町)の講演。「好き」を

「素敵」に変える簡単な方法とは。

  http://food-mileage.jp/2014/11/02/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 品川新鮮野菜マルシェ 第18回全快野菜ちゃん開催!

 日時:118日(土)10:0015:00

 場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

 主催:グリーンスマイル

  https://www.facebook.com/events/1517933481779712/

 

 棚田新米おにぎりと物々交換!BBQ 〜焼く材料は現地調達?!〜

 日時:119日(日)10:0017:00

 場所:城南島海浜公園(大田区城南島4-2-2

 主催:我楽田工房(http://garakuta.tokyo/)/地元びいき

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/461645997310107/

 

 「脱成長ミーティング」公開研究会−人口減少と脱成長社会

 日時:119日(日)14:0017:00

 場所:ピープルズ・プラン研究所(地下鉄有楽町線「江戸川橋」歩5分)

 主催:脱成長ミーティング

 (詳細、お問合せ等(高坂勝氏ブログより)

  http://ameblo.jp/smile-moonset/entry-11935028231.html

 

 シェアハウス de おかんめし。

 日時:1115日(土)16:0021:30

 場所:くにたちシェアハウス「OWL(オウル)」(国立駅徒歩3分)

 主催:おかんめし。

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/874119099267321/

 

 燻製作って!食べて!飲もう!第11回燻製イベント
in
錦糸町

 日時:1116日(日)13:0018:30

 場所:海鮮地鶏「坊々樹」(江東区東橋3-8-7錦糸町プラザビル)

 主催:greensmile

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/550356501763075/

 

 2014年度農業体験会「収穫祭」

 日時:1116日(日)10:00東武東上線小川町駅集合

 場所:埼玉県小川町

 主催:US.Peace ファーム

 (詳細、お問合せ等

  http://uspeace.jp/user_data/event.php#taikenkai

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.571122日(土)[和暦
神無月朔日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

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