F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.057

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.57; 2014.11/22(土)[和暦 神無月朔日]発行

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 出雲(島根県)に神々が集まるとされる神無月。落ち葉を巻き上げる

風は「神渡し」、冬ざれていく寂寥感は「神の留守」と呼ばれます。

 今日は二十四節季の「小雪」。朝夕の冷え込みも増してきました。

 

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月朔日

付けです。

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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6 「食と農」豆知識

(2) 日本は世界最大の農産物輸入国か

 「日本は世界最大の農産物輸入国」というと、輸入額だけをみれば、

日本は世界最大ではないという反論が返ってきます。

 

 2011年における日本の農産物輸入額は685億ドル。

 これはアメリカ(1071億ドル)、中国(951億ドル)、ドイツ(950

ドル)等よりも小さな値です。確かに日本は世界最大の農産物輸入国で

はありません。

 

 しかし、貿易というものは、輸入もあれば輸出もあります。

 世界の主な国の農産物輸出額をみると、アメリカ(1399億ドル)、オ

ランダ(893億ドル)、ドイツ(803億ドル)等となっているのに対し、

日本の農産物輸出額は33億ドルに留まっています。

 

 そこで、農産物純輸入額(輸入額−輸出額)でみると、日本は652億ド

ルと際立った大きさとなります。この意味で、日本は世界一の農産物輸

入大国なのです。

 

 (図16

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/16_boueki.pdf

 

 アメリカは世界最大の農産物輸出国ですが、同時に世界最大の農産物

輸入国でもあります。得意な穀物等を大量に輸出すると同時に、多額の

野菜や果実、飲料等を輸入しています。よく引き合いに出される世界第

2位のオランダは、野菜や花、乳製品等を輸出すると同時に穀物等を輸入

しています。

 

 このように多くの国では、農産物貿易においても言わば「水平貿易」

が行われているのですが、その中で、日本の農産物貿易はバランスを欠

いた特異な状況にあると言わざるを得ません。

 

[参考]

 平成25年度
食料・農業・農村白書より(農林水産省ホームページ)

 http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h25/h25_h/trend/part1/chap1/c1_1_01_3.html

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 大南信也(おおみなみ・しんや)さんの講演を初めて聴いたのは、20

14111日(土)、東京・三田の慶応義塾大学で開催されたシンポジウ

「ご近所イノベーションの時代」の場でした。

 

 大南さんは、1953年、徳島県神山町の生まれ。米国スタンフォード大

学院を修了後に帰郷し様々な地域づくりを実践、特定非営利活動法人グ

リーンバレー理事長を務められています。

 地域創生のカリスマとして、講演等で全国から引っ張りだこの方です。

 

 この日の演題は「やったらええんちゃう?
できない理由よりできる方

法を!〜過疎のまちが『せかいのかみやま』になるまで〜」。

 

 最初に出てきたキーワードは「創造的過疎」。

 人口減少が避けられないという現実を受け入れ、「人口構成の健全化」

を図っていく視点が大事ということのようです。

 過疎地の最大の課題は雇用・仕事がないこと。それではと発想を転換

し、仕事を持った人を受け入れることとしたそうです(ワークインレジ

デンス)。

 しかも、町の将来デザインに必要な起業家やアーティストを呼び込む

ことで、多くのサテライトオフィスサテライトオフィスや飲食店が開業

し、移住者はこの4年間で約60世帯100名にのぼるとのこと。

 

 また、イノベーションを起こすために必要なものは、お金ではなく

「場」。

 例えば移住者が始めたビストロでは、定期的に「みんなでごはん」と

いうイベントを実施。その日にたまたま集まった人たちが、シェフとと

もに同じ食卓を囲むことで、血の通う異業種交流の場となるそうです。

 ビストロ等で使う有機農産物の需要も増え、中山間地域の「本丸」農

業の振興にもつながっているとのこと。

 

 ところで、何かやろうとすると必ず現れるのが「アイデアキラー」。

いわく「難しい」「無理だ」「前例がない」等と何でも反対する人。

 このアイデアキラーの撃退法は、とにかく始めること。阿波弁で

「やったらええんちゃう?」。やってみて初めて、課題も明らかになる

そうです。

 

 そして、大南さんが最後に言われた言葉。

 「皆さんは住んでいる場所が『すき(好き)』でしょう。そこを、

『すてき(素敵)』な場所に変えていくことは、実は簡単なんです。

『て(手)』を加えればいいんです。行動を起こせばいいんです」

 

 ところで、私は徳島市の出身。

 子どもの頃は神山町と聞くと「山」「田舎」のイメージしかありませ

んでした。その中山間地域の典型のような神山町が、今や日本の地域づ

くりの最先進地域とあがめられているのです。

 さらには、大南さんの阿波弁バリバリの話ぶりが懐かしく、同時に誇

らしく感じました。

 「やったらええんちゃう?」という言葉を、座右の銘に加えたいと思

います。

 

 参考

 特定非営利活動法人グリーンバレー
ウェブサイト「イン神山」

 http://www.in-kamiyama.jp/gv/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 浸透する江戸東京野菜 (11/07)

  明治神宮での東京都農業祭。江戸東京野菜の展示コーナーには多く

 の見学者が。

  http://food-mileage.jp/2014/11/07/

 

 ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2014(最終回)(11/11)

  JKSK主催、福島・広野町を訪ねるツアー最終回は、収穫祭と防災緑

 地見学、地元の方達との意見交換会。昼食には「天のつぶ」おむすび。

  http://food-mileage.jp/2014/11/11/

 

 「脱成長ミーティング」公開研究会人口減少と脱成長社会(11/13)

  PP研で開催された研究会は、人口減少問題をめぐって白川真澄さん

 と小口広太さんからの報告と意見交換。

  http://food-mileage.jp/2014/11/13/

 

 11月の「結イレブン」とドキュメンタリー「原発のとなり村」(11/16)

  お洒落な小料理屋さんに模様替えした新宿「結」で、福島・川内村

 を舞台にしたドキュメンタリーが上映されました。

  http://food-mileage.jp/2014/11/16/

 

 筆者が説明者として参加する予定のイベント等です。

 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座(総合コース)第4

 日時:1122日(土)10:3013:00

 場所:東京アグリパーク(JA東京南新宿ビル3F

 主催:江戸東京コンシェルジュ育成協議会

  http://edocon831.seesaa.net/article/404927871.html

 

 NPO法人 土とみどりを守る会「晩秋の集い」

 日時:1123() 13:3016:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢 2-32-11

 主催:NPO法人
土とみどりを守る会

 (詳細、お問合せ等

  http://tsuchimidori.net/2014bansyuu-tsudoi-poster.pdf

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 東京朝市・アースデイマーケット

 日時:1122日(土)10:0024日(月)16:00

 場所:代々木公園けやき並木

 主催:アースデイマーケット実行委員会

  http://www.earthdaymarket.com/

 

 アベノミクスと地域経済

 日時:2014112519:0021:30

 場所:大田文化の森(大田区中央2-10-1

 基調講演:同志社大学経済学部 浜矩子氏

 主催:市民シンクタンク まちづくり
エンパワメント(縁ぱわ)

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/309220545929661/

 

 TPPに対抗する『置賜自給圏構想』の動き

 日時:1129日(土)15:0018:00

 場所:連合会館5階(地下鉄・新御茶ノ水駅、JR御茶ノ水駅)

 お話:菅野芳秀さん(山形・長井市、農民)

 主催:TPPに反対する人々の運動

 (詳細、お問合せ等

  http://antitpp.at.webry.info/201410/article_1.html

 

 子ども体験教室 第2回「お米について学ぼう!

 〜小学生と大学生がお米について一緒に考えるワークショップ〜」

 日時:1130日(日)13:0014:30

 場所:「食と農」の博物館2階(世田谷区上用賀2-4-28

 共催:NPO法人農業情報総合研究所、東京農業大学「食と農」の博物館

 (詳細、お問合せ等

  http://www.nodai.ac.jp/syokutonou/recentNews/detail.php?new_id=440

 

 ECOM出版記念パーティ&望年会

 日時:125日(金)19:0021:00

 場所:雑司ケ谷・子供村2F交流サロン(豊島区雑司ケ谷3-12-9

 主催:ECOM エコ・コミュニケーションセンター

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/573358539458865/

 

 ミシュカの森2014「涙も笑いも力になる」

 日時:1227日(土)14:00 16:30

 場所:日比谷コンベンションホール(日比谷図書文化館)

 主催:ミシュカの森

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/402447126575586/

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.58126日(土)(げっ12月!)[和暦
神無月十五日]の

 配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

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