「みんな独り」な東京で、動き出した、ゆるやかな解決

 2015年2月8日(日)。
 オルガン堂で浅見彰宏さんのお話を聞き、美味しい福島の地酒を頂いた翌日、頑張って朝から東京・飯田橋の東京ボランティア・市民活動センターに向かいました。
 ここでは6日(金)から、「市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO2015~今を想い、未来を創る~」が開催中。
 多彩なゲストをお迎えしての様々なプログラムが行われています。 
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 3日目(最終日)の午前10時から開催された分科会の一つのテーマは「『みんな独り』な東京で、動き出した、ゆるやかな解決」。
 同じ地域で暮らす人同士が出会い、ゆるやかに関わりあうことで「無縁社会」解決のヒントを探してみよう、という趣旨のようです。
 登壇されるゲストは、佐藤美千代さん(ひの・まちの生ごみを考える会)と齊藤志野歩さん(株式会社N9.5)という、素晴らしいお2人。
 佐藤さんとは、2月1日(日)に国立・やぼろじで開催された食育セミナー(吉田俊道先生、則久郁代先生)の際にお会いし、日野での実践活動の内容を伺い、強い関心を覚えたばかりです。
 一方、齊藤さんとは、昨年3月24日(月)の「共奏キッチン♪」で初めてお会いし、その後、4月20日(日)の「まち食サミット」等に参加させて頂いたご縁です。
 定刻の10時、進行役の鈴木佑輔さん(世田谷ボランティア協会)から、
 「今日は、地域とともに暮らすとはどういうことかみんなで考え、終わったら、早く地元に帰って地元の人に会いたいという気持ちになってくれるような会にしたい」との挨拶で開会。
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 最初に話されたのは佐藤さん。スライドで農園の様子などを映写しながら説明して下さいます。
 「ひの・まちの生ごみを考える会の詳細はお配りした10周年記念誌をみて頂きたいが、200世帯の玄関先から週1回、軽トラで生ごみを回収(年間3万トン)、畑(コミュニティガーデン・せせらぎ農園)で堆肥化して野菜や花を作っている。
 農園では、年間延べ2000人以上が定例農作業に参加。来訪者も多い」
 「『人間は、愛するものと仕事があれば幸せ』という言葉がある。仕事があれば充実感を得られる。働くとは、傍(周囲)を楽にするということ。
 せせらぎ農園のポリシーは『たすけ愛』、『はた楽』。基本的にすべてボランティアで運営」
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 「農地、農業には多くの役割がある。
150208_6_convert_20150210222619.png 自然の循環に沿った環境に優しい農作業には様々な仕事があり、それまでの経験を活かすこともできる。大地と触れ合う安心感、食べ物をつくる喜びも得られる。健康にもいい」
 「地元の福祉施設とも連携しており、障がいのある方も来られる。
 パーキンソン病で電動車椅子の方は、つらい経験もされてきたそうだが、元は職人で手先が器用で、今は農園ではアイドルのようにみんなに慕われている」
 「畑には調理の設備はないが、水を持参し薪で火をおこし、天ぷらなどの食事会をすることも。一緒に食事をするだけで、みんな楽しくなる」
 「また、畑は食農教育の場にもなる。
 最近は園庭のない保育園等も多く、しょっちゅう子ども達が農園に来て遊んでいる。多くの生き物と共生していることも知ることができる。また、土と触れ合うことは免疫力アップにもつながるのではないか」
 続いて齊藤さんが壇上へ。スライドのタイトルは「セイサンしない関係をゆるやかにつくる」。
 「杉並区・阿佐谷に越してきた時は、まだ勤めていたが、子どもが小さく、比較的地元で過ごす時間があった。夫は帰りが遅く、子どもと2人だけの夕食が毎日続くのはつらい面もあった」
 「そこで、まずは商店街で色々なお手伝いをすることで知り合いを増やし、こんなことやろうと思っているんだけど、と話し合った。そのうちに空き店舗を貸してくれる人が現われ、商店街活性化の助成金も活用して『阿佐谷もちより食堂』を始めた。商店街でお惣菜などを買って、みんなで食べるという内容。
 これが現在の『阿佐谷おたがいさま食堂』につながっている。
 まちの人がご飯を一緒に作って一緒に食べるというだけのイベント。2013年7月からなので、まだ日も浅い」
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 「現在は助成金なしで運営。22回の参加者は延べ1000人ほど、うちリピーターが半分以上。
 肩書でも、『○○ちゃんのママ』でもなく、名前やニックネームで呼びあえる場。面白いから、楽しいからと参加してくれている。
 『場所づくり』より『仲間づくり』、『仕組み』より『体験』を重視している」
 
150208_5_convert_20150210222600.png 「まちの人とご飯を食べることを『まち食』と名付けた。
 『共奏キッチン♪』への参加等を通じて他の地域で活動している人との繋がりもできた。最近はマスコミで取り上げられたり、広告関係の専門誌福祉関係の情報誌でも紹介して頂いたりしている」
 「『凸凹(デコボコ)を身近なところで清算しない関係』を創っていきたい。いつか、どこかで、誰かとの間で清算するという適度な負担感が大事。誰でも参加できる頼母子講のようなもの」
 「問題の『解決』はできなくても『解消』はできる。仮につらいことがあっても、月1回は忘れることができる場でありたい。
 声かけは『ご一緒にどうぞ』。『来て下さい』とは言わない。『楽しいから来る』を大事にしたい」
 お2人の報告の後、鈴木さんから「取組を通して、ご自身の、あるいは参加される人達の生活に変化はあるか」との質問。
 佐藤さん
 「もともと転勤族だったのが、日野に落ち着くことになって、自分が住むところを居心地のいい場所にしたいと思ったのがきっかけ。今はワクワクしながら活動している。
 農園に来る人は最初は知らない同士でも、一緒に農作業をするうちに開放的になり、おしゃべりを通じて人間関係ができていく」
 
 齊藤さん
 「自分が住むまちの中で、多くの可能性を感じられるようになった。自分の周りに様々な人がいることも分かった。多様性とは、あるものではなく認めるもの。
 駅で降りて自宅までの間に、おたがいさま食堂で一緒だった人と偶然会う楽しみもできた、と言ってくれる人もいる」 
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 後半は、5人ずつほどのグループになってのワールドカフェ方式で、今日の話を受けて地元で始めたくなったこと等について話し合い。
 せせらぎ農園に実際に参加されている方、障かい者支援のボランティア等に取り組んでおられる方、大学の先生、市役所でボランティア支援の仕事をされている方など、様々な参加者の方がおられます。
 岩手から来られた女子大学生の方は、公民館で地域の人たちと学生が鍋を囲むという取組をされているそうです。
 八王子在住の女性の方は、「家族と夕飯が食べられないような子ども達のことが気になっている。自宅に呼んで一緒にご飯を食べるような取組ができないか」と考えておられるとのこと。
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 地域で何か始めるためには自分の心をオンにするきっかけが必要という若い男性は、まずは、交差点の信号待ちで隣の人に声かけしてみる、と。(拍手)
 最後に報告者のお2人から。
 佐藤さん
 「小さくとも、参加できる場所が地域にたくさんあればいいと思っている。情報は常に発信してきたい」
 齊藤さん
 「半径2メートルから一人で始められることもある。イベントにこだわる必要はないし、みんなが言いだしっぺになることもない。誰かに巻き込まれることも重要」
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 盛会のうちに分科会は終了。
 参加者の皆さんは、それぞれワクワク感を地元に持って帰られました。この日、新しく播かれた種のいくつかが、やがて芽を出し、生長していくことを期待したいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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