図22 家計消費支出に占める主な費目の割合の推移


◆ F.M.豆知識
 食や農について(特に私たち消費者にとって)、ちょっと役に立つかも、あるいは考えるヒントになるかも知れないような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 前回は、一年に食べるお米を買うために必要な労働時間を試算したところ、1978年には209時間だったのが2010年には57時間と、約4分の1に減少していることを紹介しました。
 これだけみると、働く人にとって食生活に対する負担は大きく軽減されているようです。

 今回は、家計における消費支出の面からみてみます。
 総務省『家計調査』によると、1世帯当たり年平均1ヶ月間の消費支出額は、1963年には4万246円だったのが、経済の高度成長の過程で1970年以降急増し、1993年のピーク時には33万5,246円と8倍以上になりました。
その後は減少傾向に転じ、2014年には29万1,862円とピーク時の87%になっています。

 この間、食料への支出額(飲食費)は、1963年には1万5,571円と全体の38.7%を占めていましたが、1993年には24.3%、2014年には24.0%と長期的に低下してきました。

 主な費目について、全体の消費支出額に占める割合を示したものが図22(リンク)です。

 これによると、飲食費の割合は長期的にみて大きく低下しているものの、依然として家計にとって最も支出の大きい費目です。

 消費支出額全体に占める飲食費の割合は「エンゲル係数」と呼ばれます。
 生活が貧しい時でも必需財的な飲食費は節約しにくいためエンゲル係数は高くなり、生活水準が豊かになるにつれてエンゲル係数は低下すると言われています(エンゲルの法則)。

 改めてグラフを見て下さい。
 食料への支出額の割合(エンゲル係数)は、1990年代半ばまでは大きく低下しています。逆に交通・通信費(自動車関係費等)や教養娯楽費の割合は上昇しており、確かに生活水準が豊かになってきたことを反映しているようです。

 ところが低下を続けてきたエンゲル係数は、2000年代に入る頃から横ばいで推移するようになり、逆に近年は、2005年を底に上昇傾向にあるのです。
 エンゲルの法則に従うなら、私たちの生活は貧しくなりつつあることになります。

 次回は、近年のエンゲル係数の上昇要因等について、考えてみたいと思います。

[参考]
 総務省『家計調査』(5.長期時系列データ(年)、農林漁家世帯を除く)
  http://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.htm

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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