図23 消費支出額とエンゲル係数の推移


◆ F.M.豆知識
 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 今回は、前回に引き続きエンゲル係数を取り上げます。
 おさらいですが、エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費支出の割合。一般に食料は必需財的な性格が強いため、仮に家計が厳しくても節約するには限界がある一方、生活が豊かになるにつれて「ぜいたく品」に対する支出が増えることから、エンゲル係数は低下していきます。
 これが「エンゲルの法則」です。

 前回は総務省家計調査のデータから、戦後、経済が高度成長を続ける中でエンゲル係数は大きく低下してきたものの、近年は横ばい、さらには上昇に転じつつあることを紹介しました。
 そして、エンゲルの法則に従うなら、私たちの生活は貧しくなりつつあると言えるのでは、と問題提起しました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/22_kakei.pdf

 今回は同じデータを、別のグラフの形でお示しします。
 横軸に家計(農林漁家世帯を除く2人以上世帯)の消費支出全体の金額(1月当たり平均)を、縦軸にエンゲル係数をとって描いたグラフが図23です。

 これによると、全体の消費支出額は、ニクソンショック(1971)、2度のオイルショック(1973、79)、バブル崩壊(1991)等に見舞われつつも、1993年までは一貫して増加しています。
 そしてエンゲル係数も、多少のデコボコはあるものの低下傾向で推移してきました。エンゲルの法則どおり、グラフは右肩下がりでした。
 ところが、消費支出額は1993年をピーク(33.5万円/月・世帯)に減少に転じてしまいます。一方、エンゲル係数は低下を続けました。つまり、1993年から2005年の間は、エンゲルの法則に反する特異な動きがみられたのです。

 そして2005年以降は、再びエンゲルの法則が当てはまることになりました。ただし、かつての動きとは逆に、消費支出額が減少する中でエンゲル係数が上昇しているのです(左肩上がり)。

 やはり、私たちの生活は貧しくなりつつあるのでしょうか。
 それを確かめるためには、食料費支出の内容を、もう少し詳しくみる必要がありそうです(次号に続く)。

[参考]
 総務省『家計調査』(5.長期時系列データ(年)、農林漁家世帯を除く結果)
  http://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.htm
 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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