SJF アドボカシーカフェ「自然と共生する農業」

 今年の桜は見事、という声をよく聞いたような気がします。
150402_0_convert_20150404014450.png 2015年4月2日(木)は和暦では如月十四日。
 「きさらぎのもちづきのころ」、花は満開を過ぎて散り始めています。
 朝、スマホを見ると、この拙メルマガのアクセスカウンターが19999を示していました。
 何と、2万件の大台目前。
 2011年8月から始めて3年半ほど、1日平均すれば10件ほどのささやかなものですが、塵のように積み重なりました。
 訪ねて下さった読者の皆様に感謝しつつ、しばし自己満足に浸った次第。
 その日の夕方、終業後に向かったのは新宿区立四谷地域センター11階の集会室。
 アドボカシーカフェ「自然と共生する農業-ネオニコチノイド系農薬から考える-」が開催されています。
150402_1_convert_20150404014519.png 主催はソーシャルジャスティス基金(SJF)。「社会正義」をテーマに、普通の市民とNPOがともに社会を良い方向に変えていくことを目的にした市民ファンド。
 そしてアドボカシーカフェとは、様々な社会課題について議論し解決に向けていくための対話の場という位置づけとのことです。
 今回のテーマは、日本の農業の現状を踏まえ、農薬に頼らない自然と共生する農業について。
 最初に報告されたのは、元・朝日新聞論説委員で食の安全や環境問題に詳しいジャーナリストの岡田幹治さん。
 ご著書の『ミツバチ大量死は警告する』(集英社新書)は、農薬など環境化学物質の生態系への影響について、一般の方向けに分かりやすく解説されている好著です。
 会場についたのは開会30分を過ぎた19時頃で、岡田さんの話はすでに終わり近く。
 幸い、詳しいレジュメを何種類も配って下さっています。
 農薬の種類とネオニコチノイド系農薬の特徴、疑われるミツバチなど生態系への影響、EUや米国による規制の状況、クロチアニジンの残留基準緩和問題等を説明されたのち、農薬を使わない農業の3方式(IPM=総合的有害生物管理)、有機農業、アグロエコロジー(生態系を守る農業や社会のり方を求めていく)について紹介されました。 
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 続いて登壇されたのは、菅野正寿(すげの・せいじ)さん。
 福島・二本松市東和地区で30年以上有機農業を営み、NPO法人 福島県有機農業ネットワークの理事長を務められています。
 菅野さんの話は、原発事故から4年目の福島の現状から始まりました。
 「現在も県内外に12万人が避難しているという異常な事態が続いている。震災関連死者数は津波による犠牲者数を上回った。山林の除染は進んでいない。汚染水の漏出など国や東電の隠ぺい体質も変わっていない」
 「米は全袋検査をしているがほとんどが不検出。
 原発から16kmにある試験田に仮設から通って耕作している方がいる。セイタカアワダチソウや柳の木が茂るなか、ここだけには赤とんぼが戻ってきた。感動した」
 「大学研究者との共同調査で、肥沃な土壌がセシウムを固定化するメカニズムが明らかになってきた。有機的な土づくりが農業再生の光になることを、科学的な根拠をもとにしっかりと伝えていきたい」
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 また、農薬については、
 「昔に比べて田植え時期が早くなっているため、春先の害虫が増えている。カメムシが増加しているのは、温暖化も影響しているのではないか。
 カメムシの害による斑点米は、現在は機械で判別・除去しているが、以前は消費者から苦情が出たこともあった」
150402_4_convert_20150404014656.png 実際に選別し除てた斑点米を持参し、見せて下さいました。
 確かにこれをみると、安全性や食味に問題はないと言われても、なかなか食べる気にはなりません。
 続いて、コーディネータの黒田かをりさん(一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事)から、日本で有機農業が広がらない理由について質問。
 岡田さん 「韓国では有機農業が進んでいる一方、防除のために導入したジャンボタニシが生態に影響を与えている等の問題が起きている。
 有機農業を広げることは簡単ではないが、それでも日本での取組が低調なのは、できるだけ便利で安い農産物を供給しようとする近代的なシステムが変えられないからではないか。どこかに突破口を見出していくことが必要」
 菅野さん 「米の主産地ほどコストを下げるために大型化が進み、農薬の大量使用につながっている。身の丈に合った規模、農業技術が重要。天敵を利用するなどの技術開発も必要」
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 後半は、まず、グループごとに感想や意見を交換し対話する時間です。
 
 生協活動をされている女性からは、多くの消費者は、聞かれれば有機がいいと言うが、その一方で無意識に家庭用の殺虫剤等を使っていることに疑問を感じる、との意見。
 もともと食に関心があって熱心にセミナー等に参加されているという女性は、子ども達を含め、少しでも回りに伝えられる人になっていきたいと、現在、栄養士の資格を取るために学校に通っているそうです。
 埼玉の任意団体で農村と都会を結ぶ様々な活動をされているという男性の方は、健康な土壌を次世代に継承していく責任がある。有機農業はその象徴として応援していきたい。アメリカのCSAも参考になるのでは、等と述べておられました。
 その後、それぞれのグループから対話の内容を発表。
 農協や生協の組織が大きくなり過ぎているのが現状。消費者と生産者がつながり、お互いの声を反映していけるような取組が必要では。
 戦後になってDDTなど農薬を使うことが当然になった。自分たちが自然の方に合わせないと病気になる、等の意見が出されました。
 なかには、これから新規就農して有機農業を始めたいという若い男性もおられました。
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 最後にお2人からまとめのコメント。
 岡田さん 「日本の国は2つの経済から成り立っている。ひとつは、より安く便利にというグローバル経済。その一方にローカルな経済がある。FEC(食料、エネルギー、福祉)自給圏という考えもある。これらを念頭に置くことが重要」
 菅野さん 「今日の昼間は、ある大手広告代理店を訪ねてきた。昨年から、福島で一緒に大豆を植え味噌作りまで行う取組を行っている。種をまいて作物を育てることが、人や企業を育てることにつながるとのこと。ぜひ、多くの人に現地に足を運んでもらいたい」
 等の言葉で締めくくられました。
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 終了後は、お2人の講師の方とともに近くの中華料理店で懇親会。
 偶然、隣になった方から紹介頂いたのが「J-ONE(ジーワン)」。
 「福島の声を聴き、語り合い、その声を届け、3.11以降の生き方を模索する新雑誌」とのことです。
 そして、この雑誌を紹介して下さったのは、福島・南相馬で「アグリ・ウォッチャー・クラブ」を主催されている方。福島有機農業ネットワークの会員で、食農教育や環境教育に取り組んでおられるそうです。
 同じテーブルの別の女性の方からは、「絵はがき紙芝居」を紹介して下さいました。
 絵はがきとして送るだけで、あるいは拡大コピーすれば紙芝居として、子ども・孫に歴史を語り継げるというものです。
 
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 このアドボカシーカフェは、講師の方の話を聴いて勉強できるのはもちろんですが、様々な活動をされている参加者の方たちと交流できるのも、楽しみの一つです。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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