6年目の「しごと塾さいはら」

 2015年4月11日(土)は、「しごと塾さいはら」の2015年度の第1回目の初日。
 この日は後述する通り大事な「区切り」の開催なのですが、生憎と前日からの雨が止みません。
 「しごと塾さいはら」とは山梨・上野原市の西原(さいはら)地区を舞台に、山里に伝わる様々な手仕事を学び、手伝い、伝えようというプロジェクトして、2010年から続いているものです。
 東京・高尾からJR中央線で3駅、20分ほどで上野原駅到着。
 ここで自家用車で来られた方の車に分乗させてもらい、雨に煙るさいはらに到着したのが9時40分ころ。
 冷たい雨を別にすれば、まだ桜も残り、春爛漫の風情。淡く黄色いミツマタの花も満開です。 
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 かねて「しごと塾さいはら」の活動に協力して下さっているNさん宅は、私は初めて伺いました。
 鴨居から吊るされた様々な雑穀の束と、こたつの猫が出迎えてくれました。
 雨天により予定していた畑仕事(ジャガイモの植え付け等)ができないので、急きょプログラムを変更。
 コンニャク作りにチャレンジすることになりました。
 そのためには、濡れずに作業できるように納屋の前庭にブルーシートの屋根を張る「仕事」から。
 山で伐ってきた竹を紐で結び、木の支柱にかけてシートを張っていきます。
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 並行して、コンニャク芋をすり下ろす作業に取りかかります。
 たらいに水を張り、ゴム手袋をしてタワシでごしごしと表面の泥を落としていきます。簡単なようですが、冷たい水の中でヌルヌルとたコンニャク芋を洗うのは力とコツが必要です。
 しかも、素手で触ると痛くなるとのこと。
 洗い終わると、銅製の金だらいの中ですり下ろしていきます。
 この時点では見慣れたコンニャクの色とは違い、赤みがかっています。
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 薪で火を焚き、金だらいを架けます。そして、大きなしゃもじでかき回しながら水分を飛ばしていきます。
 次第に固くなってきて、なかなか力が必要です。
 学生時代はボート部に所属していたというS氏、さすがのオールさばきと皆から称賛(おだて)。
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 20分ほどかき混ぜ続け、弾力が強くなり、見慣れたコンニャク色に変わった頃に火から下ろします。
 ここで凝固材(水酸化カルシウム)を投入。しゃべりながら作業していると、素早くかき混ぜないとムラができと、Nさんから指導が入ります。
 Nさんに惹かれて西原に移住された太郎さんも、色々と教えてくれます。
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 昼を回って昼食の時間。
 今回も、地域の観光・交流センター「びりゅう館」へ。
 桜の下では水車が回っています。
 館内には直売所。ウドなと春の山菜もあります。奥のギャラリーには地元出身の降矢組人(ふるや・そじん)画伯の作品が展示されています。
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 びりゅう館の名物は何といっても蕎麦ですが、この日は新メニューのドライカレーをチョイス。
 きびご飯に、根菜や豆腐が入ったカレーソース。もちあわコロッケが2個、添えられています。それなりのボリュームもありながら、優しい味です。
 レジ脇では、食べるラー油、ゆずジャム、地大豆「せんごく」の味噌など加工品も販売されています。
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 昼食が終わり、再びNさん宅へ。
 固まっていたコンニャクは10センチ角程度に切り分け、再び火に架けます。
 午後も雨は上がらず、気温も上がらず、湯気に包まれます。
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 並行して、インゲン豆の種採り作業。「たかとうインゲン」という品種だそうです。
 カラカラに乾いたサヤの中から、うずら豆のような綺麗な豆が顔を出します。一つひとつ、模様は違います。
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 さらに並行して(山里には、たくさんの仕事があります。)、丸太の皮はぎ作業。
 山で伐ってきた広葉樹の丸太は、鍬の柄などの材料として使います。
 チェーンソーで切れ目を入れ、楔を打ち込んで4分の1に割り、ナタを使って丁寧に樹皮を剥いでいきます。皮を綺麗に剥いでおかないと、虫の害が出るとのこと。
 綺麗になった材は、3~4年かけて乾燥させるとのこと。山里の仕事は、数年先を見越したサイクルで動いているようです。
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 さらにさらに並行して(本当にたくさんの仕事!)、木炭の仕分け・袋詰め。
 窯で焼いた木炭を適当な大きさに割り、重さを計りながら袋に詰めていきます。
 昔ながらの俵にも詰めました。たろうさん、Nさんから教わることばかりのようです。
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 結局、1日、雨は止みませんでした。山ももやに包まれたままです。
 納屋には、一度茹でたカブの葉が吊るされていました。冬の間の保存食だそうです。
 母屋に戻ると、これまで「しごと塾さいはら」の活動を支えて下さってきた「畑の先生」・もりおさんが顔を出して下さいました。
 奥さま手作りのピザを差し入れて下さいました(美味しかったです)。
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 みんなで夕食の準備。
 教えてもらいながら蕎麦を打ちます。地元の野菜はてんぷらに。煮物やおむすびを持って来て下さった地元の方も。
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 そして夕食。手打ちの蕎麦、自分たちで作ったコンニャク等が並びます。
 何ともぜいたくな食卓です。
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 地元で作られた芋焼酎を初めて頂きました。すっきりとした味わいで美味です。
 そしてこの日は、実は「しごと塾さいはら」にとって大事な区切りの日。
 プロジェクトの立ち上げからこれまで、献身的に支えて下さってきたリーダー・Sさんが、このたび、素敵なパートナーを得て和歌山に移住することになったのです。木桶づくりを学びつつ、棚田の米を作る暮らしを始められるそうです。
 この日の夕食は、そのSさんの送別パーティーを兼ねていたのでした。
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 メンバーから、お礼の意を込めて竹かごを贈呈。
 太郎さんによると、これを作ることができる地元の方も少なくなっているとのこと。しかし、次に会う時までに自分も作れるようになっているから、と力強いはなむけの言葉。
 ほんわかとしたお人柄で回りの人たちを惹きつけ、繋いできたSさんの、新天地でのお幸せを祈りたいと思います。
 そして、Sさんの思いを受け継いだ「しごと塾さいはら」は、6年目に入りました。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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