押上よしかつ(墨田区業平)で東京の食を楽しむ。

 2015年6月12日(金)。
 和暦では卯月二十六日。もうすぐ皐月を迎えます。
 去る6日(和暦では卯月二十日)は二十四節気の芒種(ぼうしゅ)。作物の種を播く時期とされています。現在は、稲のもみをまく時期はずっと早くなっていますが。
 さらに七十二候では「かまきり、生まれ出る」(6日)、「草の中から蛍が光を放つ」(11日)も過ぎました。
 作物も虫達も、ますます盛んに成長する季節を迎えています。
150612_1_convert_20150614094454.jpg 関東地方が梅雨に入って5日が過ぎました。晴れる日があったり、不順な日もあったり。
 そのようななか、久しぶりに東京・墨田区の業平へ。
 運河にかかる西十間橋の上からは、西の方に「逆さツリー」が望めます。
 あいにくとこの日は曇りがちで、夕焼けに映えるツリー(三丁目の夕日?)は拝めませんでした。
 車の通行の多い浅草通りから、静かな脇道に少し入ったところにあるのが「押上よしかつ」です。
 緑提灯や「東京の地酒と本格焼酎」の看板、江戸東京野菜の幟などが出迎えてくれます。
 「食育推進全国大会」(後述)の幟も飾られていました。
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 扉を開けると、ご主人の佐藤勝彦さんと奥さまが迎えて下さいました。
 壁には、きき酒師、焼酎アドバイザー、ソムリエ、ジュニア野菜ソムリエ等の資格認定書が飾られています。佐藤店主は本当に勉強家です。
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 ここ「押上よしかつ」は、知る人ぞ知る、東京を丸ごと味わえるお店です。
 まずはビールからとご主人に聞いてみると、幸いにも「練馬金子ゴールデンビール」がありました。
150612_4_convert_20150614094628.jpg 国産初のビール麦「金子ゴールデン」は、明治時代に現在の練馬区で金子丑五郎氏が作成した品種です。平成に入ってから練馬区内のJAと生産者により栽培が復活し、地ビールが作られています。
 季節限定、しかも練馬区内のJA直売所等でしか手に入らない、なかなか貴重なものです。
 この日は、「TOKYO BLUES」と飲み比べ。
 清酒「多満自慢」で有名な石川酒造(福生市)が地下天然水で醸した地ビールだそうです。今年4月に発売されたばかりとのこと。
 どちらも、個性のあるコクと深みのあるテイストです。
 料理の方は、東京産の食材がふんだんに使われているセットメニューがお薦めです。
 佐藤さんと奥さまが、一つひとつ、食材の産地などを説明して下さいます。
 いくつかの小鉢に盛られた前菜は、練馬産キュウリのミョウガタケ添え、江戸川区産の後関晩生小松菜と亀戸大根の漬物、しんとり菜とスモーク東京シャモ、自家製の豆腐(大豆は青梅産、にがりは青ヶ島産)。
 お好みで青ヶ島の「ひんぎゃ」の塩(蒸気の出る噴気孔で海水から作られた自然塩)で頂きます。
 2品目は、東京の野菜たっぷりの一皿。
 葛飾区産の枝豆。練馬産の馬込半白キュウリは豪快に。八王子のトマト。自家製のマヨネーズ(卵は町田産)が添えられています。
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 もちろん、お酒も東京産。
 都区内に唯一残る酒蔵・小山酒造(北区岩淵)の4種類飲み比べセット。
 丸真正宗の大吟醸純米「吟の舞」、純米吟醸、辛口吟醸、それに吟醸酒「荒川物語」。
 青ヶ島焼酎(あおちゅう)の飲み比べも。自然麹、さつまいも、水を同時に仕込む昔ながらの製法で少量ずつ作られているそうです。
 銘柄ごとに、香りも味も違います。
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 続いて、江戸前中心の刺身盛り合わせ3点盛。カルパッチョにしてもらうこともできます。
 お任せで選んで頂いたのは、江戸前の小肌酢〆と地たこ、神津島の金目鯛。
 近藤醸造(あきるの市)のキッコーゴ丸大豆醤油と、奥多摩産のワサビとともに頂きました。
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 町田産の卵を使った卵焼きはふんわり。
 東京の銘柄豚・TOKYO X(東京エックス)と、後関晩成小松菜と川口エンドウ(八王子産)の蒸し物。川口エンドウの旬はそろそろ終わりとのこと、何とか間に合いました。
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 以上のセットでほぼ満腹なのですが、ここに来てもんじゃを食べないで帰るわけにはいきません。
 お願いしたのは、押上よしかつ名物の「monjya 赤と黒」。
 まず、佐藤店長が焼いて下さった「赤」の方は、寺島ナスとトマト、TOKYO Xのソーセージ等。
 トマトの色と香りが食欲をそそります。少し酸味のある味はちょっとイタリアン風。ちなみに粉は東久留米の柳久保小麦とのこと。
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 奥さまが焼いて下さった「黒」の方は、江戸前イカやタマネギ入りのイカ墨風味。濃厚でコクがあります。
 お好みでとバケットを添えて下さいました。これには伊豆大島産のバターが塗られています。
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 今回も東京の豊かな食を堪能させて頂きました。ご馳走様でした。
 もっとも、東京産食材の多くは、必ずしも一般的に市場流通しているわけではありません。佐藤さんは、自ら東京中の生産者を回って食材を調達されているのです。
 その佐藤さんには、『江戸東京野菜』(マガジンランド、2014)というご著書もあります。
 綺麗な写真とともに、それぞれの野菜の由来から美味しく頂けるレシピまでが掲載されています。お店でも求めることができます。
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 ところで、今週末の20日(土)、21日(日)には、墨田区で「食育推進全国大会」が開催されます。
 その「まちなかプログラム」の一環として、押上よしかつを会場にランチ付きセミナーが予定されているそうです。
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 江戸東京野菜など、その名前は知っていても、なかなか一般の消費者には実際に口にする機会は多くありません。
 その意味で、東京の食材を美味しく料理して提供して下さる押上よしかつは、本当に貴重な、有難い、(もちろん美味しい)お店です。
 さらには、ここで料理やお酒を頂くことは、東京の農業や農地、生産者の方達を守っていくことにもつながるのです(注:席だけでも予約して行かれることをお勧めします)。
150612_12_convert_20150614094927.jpg ところで、この日同行して下さったのは名古屋学院大学のK先生。
 学会で上京された機会に、ぜひ、押上よしかつに行きたいとのリクエストにお応えしてご案内、喜んで下さいました。
 そのK先生から、大学と地元の菓子屋さんが共同制作した焼き菓子「カステラスク」を頂きました。
 大学の「みつばちプロジェクト」で作った蜂蜜の小さなボトルが添えられています。
 サクサクとして美味でした。
 【ご参考】
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