図29 エンゲル係数の比較(年間収入五分位階級別)


◆ F.M.豆知識
 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 2005年を底にエンゲル係数が上昇に転じている要因として、本稿では、国際需給動向と円安を反映した輸入食料品価格の上昇、食生活のパターンの変化(欧米化、外部化等)を指摘してきました。
 つまり、近年におけるエンゲル係数の上昇は、必ずしも家計が「貧しく」なっていることを示しているわけではないことを説明してきたわけです。
 それでは、いわゆる「エンゲルの法則」は、現代日本では当てはまらなくなっているのでしょうか。

 データを統計的に分析する際の手法としては、大きく分けて、時系列(タイムシリーズ)分析と、横断的(クロスセクション)分析の2種類があります(両方の要素を取り入れたパネルデータ分析という手法もあります)。

 これまで本稿では、主に時系列分析を行ってきました。
 つまり、2005年と2014年の消費支出のデータを比較して「エンゲルの法則」の妥当性に疑問を呈してきたのですが、今回は2014年のデータについてクロスセクション分析を行います。

 リンク先の図29は、総務省『家計調査』(2人以上の世帯)のデータを用いて、2014年のエンゲル係数を年間収入別にみたものです。
 
 これによると、2人以上世帯のうち年間収入が334万円未満の世帯におけるエンゲル係数は30.9%であるのに対し、820万人以上の世帯では23.2%。うち勤労者世帯でみても、26.5%から21.7%という差があります。

 このようにクロスセクション分析をしてみると、現代の日本でも明らかな「エンゲルの法則」が認められるのです。

[出典等]
 総務省『家計調査(家計収支編)』(二人以上の世帯、2014年)
  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001135068

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
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