2015年7月18日(土)。台風11号は四国・中国地方から日本海に抜け、前日までの雨も上がりました。
大宮8時26分発のやまびこ175号で郡山、ここで9時40分の磐越西線・フルーティアふくしま号に乗り換え。さらに会津若松で新潟行き快速あがのに乗り継ぎ、山都駅(喜多方市)に到着したのは11時26分。
久しぶりの乗り鉄の旅は、NPO法人CSまちデザイン主催の「福島ツアー 会津・山都を丸ごと味わう」。
現地(山都駅前)に集合した東京からの参加者は9名ほど(うち2人は遅れて参加)。
Iターン移住・就農者である浅見彰宏さんと、大友治さんが出迎えて下さいました。
浅見さんは千葉県出身。
大手鉄鋼メーカーを退職し埼玉・小川町の霜里農場で1年間の研修の後、1996年に山都町に移住された方。「ひぐらし農園」主宰で福島県有機農業ネットワークの事務局長も務められています。
本年2月7日(土)、東京・下北沢のふくしまオルガン堂で開催された市民講座で浅見さんのお話を伺い、ぜひ、現地を見学したいと今回のツアーに参加したのです。
なお、浅見さんの移住・就農の経緯やご活動の様子は、ご著書『ぼくが百姓になった理由』(2012)にも詳しく紹介されています。
大友さんとは、今回、初対面です。
やはりIターン移住者で、浅見さん同様、本木・早稲谷 堰と里山を守る会のメンバーとして活動されているとのこと。
ツアーの案内を頂くなか、地域の歴史等について博識で、かつ、写真の腕前はプロ級であることを知りました。
車に分乗させて頂き、最初に向かったのは茶房 千(さぼう・せん)。
2000年に東京から移住された秋庭千可子さんが運営されているカフェで、交流の場となっています。
古民家(旅籠)を改装した建物は、外観も内装も素敵です。ちなみに阿賀川沿いにある山都町は、水運の拠点だったそうです。
昼食は、地元名産の十割蕎麦と飯豊うどん。
ボリュームたっぷりの野菜のてんぷらは、地元の業者さんが国産菜種で製造している菜種油で揚げたものだそうです。
いよいよ現地見学ツアーに出発。
雨が落ち始める中、車に分乗して最初に向かったのは本木集落の中平地区。
棚田の間の曲がりくねった道を、車は大きく揺れながら登っていきます。やがて舗装も途切れ、徒歩で登ったところにまとまった水田が広がっていました。
本木上堰(もときうわぜき)と呼ばれる水路の最終の受益地とのこと(この辺りでは、水路のことを堰(せき)と呼ぶそうです)。
すくすくと伸びた稲が風にそよいでいますが、ところどころに作付されていない水田も見えます。昨年の米価(概算金)下落の影響で稲作を中止された方もおられるとのこと。
浅見さんと大友さんが、交互に説明して下さいます。
次第に雨が強くなるなか、車に戻り、堰の上流に当たる早稲谷集落へ。
集会施設の駐車場に車を止め、雨の当たらないところで本木上堰の説明を受けました。
大友さんによると、地元に残る石碑に、延享4(1747)年に12年間の工事の末に完成したとの記述が残っているそうです。山肌の等高線に沿うように開さくされた全長6kmの水路は、250年の間、この地区の田んぼに水を供給し続けてきたのです。
ところが近年、地域の方達の高齢化や離農等によって、その歴史的遺産の維持管理が難しくなってきていました。そこで、浅見さんや大友さんが、都会の方達をボランティアとして募集し始めたのが2000年のこと。1年目は7名程度だったのが、現在は毎年50名ほどがゴールデンウィーク中の「堰さらい」に参加しているそうです。
その後、徒歩で棚田の間の道を登っていきます。
最も高いところにある田んぼの、さらに上の山際を、本木上堰が流れていました。
豊かで、清冽な水です(ふだんの水量はもっと多いそうです)。
250年にわたって、連綿と水を供給し続けてきた水路。
困難な事業を成し遂げた先人達の偉業。それを守り続けてきた地域の方達。そして現在は都会のボランティアとも協働して維持管理されているといった話を聞いた後でもあり、水面を見つめる参加者一同、感じ入ってしばらく言葉が出ませんでした。
「堰として、声なし」。
登ってきた道を逆に下っていきます。下りの方が眺望が開けます。
道端には様々な花が咲いています。
途中で神社に参拝。
見上げると、境内には巨大な杉の木が何本も天を突いています。地域の住民の方達が守ってきた氏神さまです。
浅見さんの豚舎も見学させて頂きました。
以前は採卵用の地鶏を飼っていたのですが、鳥獣害の被害が大きく、豚に切り替えられたそうです。この庭先養豚の2頭の豚をシェアするという試みを実施中とのこと(ブログで参加者募集!)。
傍らに置かれた米袋には「放射性物質検査済」とのラベルが貼られていました。、福島県産のお米は全量全袋検査が行われています。
この後は浅見さんの農場で野菜の収穫体験等を行う予定でしたが、強い雨のために断念。
代わりに集会所で、大友さんが撮った写真に音楽をつけた映像を鑑賞させて頂きました。目に染みるような四季の美しい光景です。冬の雪深さには驚かされました。
続いて「いいでのゆ」で温泉入浴。足やズボンの裾はびしょ濡れだったのが、熱いお湯で癒されました。
茶房 千に戻り、地元の方達との交流会。地域おこし協力隊として東京(しかも近所!)から来られた女性もおられました。
大きなアスパラなど、野菜をふんだんに使った料理が並びます。身欠きニシンもあります。
UFOズッキーニの詰め物など、珍しい料理もあります(びっくり!)。会津名物の「小づゆ」も出して下さいました。
上堰米で作った日本酒なども。
美味しい料理とお酒、心地よい会話を楽しんでいるうちに気がつくと21時過ぎ。
お開きとなって、2階に上がって休みました。木造建築の心地よさを感じつつ、たちまち眠りに落ちた次第。
(後半に続きます。)