蔦谷栄一先生「地域資源活用で中山間イノベーション!」

 3連休明けの2015年10月13日(火)。
 JR東京駅の日本橋口を地上に出ると、まるで摩天楼。ここ数年で再開発が進み光景も一変しました。
 ふとビルの中をみると、展示されているのはどう見ても稲穂(?)。
 総合人材サービス大手・パソナの本社。
 お断りして見学させて頂くと、畑や野菜工場もありました。農業分野での雇用創出につなげることを狙いとした「アーバンファーム」だそうです。
 何とも不思議な感覚のスペースでした。 
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 隣の日本ビル6階にあるのが3×3 Labo(さんさんラボ)。2016年3月までの間、コミュニティ活動の活性化やビジネス創発拠点として設けられている登録制オープンスペースとのこと。
 入ってすぐのスペースは「触れる地球ミュージアム」。5台の地球儀が刻々と変化しています。気候変動、生物多様性、自然災害と防災など様々な“地球目線”から未来を考える実験空間とのことです。
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 奥まったスペースで19時から開催されたのは、「地域資源活用で中山間イノベーション!~農業と林業の融合による持続性~」をテーマとした農業情報総合研究所/森林環境保全研究会。
 冒頭、NPO農業情報総合研究所の植村春香理事長、事務局の茂木正光さんから、挨拶と研究会の趣旨等の説明。
 本年2月に公表された日本農林漁業振興協議会の提言「地域資源活用で中山間農業のイノベーションを!中山間は地域資源の宝庫 農業・農山村は国民共有の財産」をとりまとめた蔦谷栄一先生農的社会デザイン研究所代表)から講演を頂き、質疑応答を行うとのこと。
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 20名ほどの参加者一人ひとりからの自己紹介に続き、蔦谷先生の講演が始まりました。
151013_4_convert_20151017215155.jpg 日本農林漁業振興協議会は、天皇杯等を受賞された方などを会員として、情報交換や技術研鑽の場の提供、政策に関する提言等を行ってきており、都市農地・農業についての政策提案(2012年)は、本年、成立した都市農業振興基本法の骨格となったとのこと。
 これに続いて本年2月に発表したのが今回の提言であり、この日は、蔦谷先生が『農林金融』に発表された論文「地域資源活用による農業展開と地域自給圏の創出-政策提言『地域資源活用で中山間農業のイノベーションを!』を踏まえて-」をテキストにして紹介して下さいました。
(注:以下の紹介は一部のみ、しかも理解が不十分な点があるかもしれません(文責:中田)。関心を持たれた方は原文をお読み下さい)。
 「日本農業は、産業としての農業と、コミュニティや土地・自然・環境が一体化しており、豊富な地域性・多様性、高水準の農業技術、高所得かつ安全等に敏感な大量の消費者の存在、都市と農村のきわめて近い時間距離、優れた景観と豊かな水等の特質を有している。
 これら特質を活かすことが、日本農業の未来への希望、展望になる」
 「地域農業はプロ農家だけでは維持していけない。アマチュア農業、市民参画型農業などを含む多様な担い手がバランスを取りながら展開していくことが必要」
151013_5_convert_20151017215213.jpg 「これらの問題意識も踏まえ、現場の感度をできるだけ尊重しつつ今回の提言が取りまとめられた。
 そのポイントは3つ。
 (1)中山間地域の特性を生かしての農林漁業の再生と多業型経済(半農半X等)の振興。(2)国民・消費者の理解・支持が得られるように国民共有の財産としての地域循環が可能な農林漁業の創出。(3)地域社会、共生社会をリードしていく人材の育成・確保、担い手のレベルアップ」
 「地域資源活用型農業のポイントは、
 (1)放牧畜産の振興(林間放牧、水田放牧等による飼料自給化)、(2)地形別対応型水田農業の展開、(3)特産品化・高付加価値化、(4)森里海を一体的に流域圏としてとらえての管理、(5)景観づくり」
 「私の唱える『日本農業辺境論』とは、世界標準(大規模・効率化等)とは異なる日本型のモデル(共生等)を提案していけるのではとの思いを込めた言葉。中山間地にこそ、その「ゆりかご」となり日本農業をリードしていくポテンシャルがある。
 そのためには、人と人との関係性、人と自然との関係性を重視した『コミュニティ農業』の展開が重要」
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 その後、会場との間で質疑応答が行われました。
 その中で蔦谷先生が、この8月に福島・浜通りを訪ねた際、避難指示区域内の農地が荒れている様子をみて心が痛んだと仰られたのが印象に残りました。
 研究だけではなく、自ら山梨に拠点を設けて都市農村交流活動等も実践しておられる蔦谷先生のお話は、何度伺っても大変参考になります。
 同じ会場で、引き続き懇親会に。
 主催者からは、ふゆ・みず・たんぼ米仕込みの「一ノ蔵」特別純米原酒も提供して頂きました。農業情報総合研究所を含む戦略経営研究会グループでは、様々な被災地支援にも積極的に取り組んでおられます。
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 この研究会では、今後、CSA(Community Supported Agriculture;コミュニティに支えられた農業)も取り上げていくそうです(FBのコミュニティページも準備中)。
 その一環として、11月14日(土)15時から池袋で「CSAなないろ畑」研究会&懇親会を開催する予定とのこと。
 CSAには私も強い関心を持っているので、今後の展開が楽しみです。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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