東京で出会う会津・山都の人と食

 実りの秋が到来。各地では様々なイベントが開催されています。
 10月最後の日、31日(土)は東京・世田谷区の経堂へ。
 いつもの農大通りから反対側、歩いて3分ほどのところに生活クラブ館があります。生活クラブ生活協同組合・東京の本部が置かれ、店舗「デポー」もあり、クッキングスタジオBELLEも併設されています。
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 ここで11時から開催されたのは、<食と農をつなぐイベント>福島応援企画 in 東京「東京で出会う会津・山都の人と食」。
 主催は、やはりここに事務所を置くNPO・CSまちデザイン
 食(消費)と農(生産)に関わるすべての人びとが共に学びあい、育みあうことで食の問題を解決していこうという「食農共育(しょくのうともいく)」など様々な事業を行なっています。
 理事の榊田みどりさんの進行により開会。
 理事長の近藤惠津子さんから、
 「原発事故から4年半。放射能汚染の直接被害をほとんど受けなかった会津地方の農業も、風評被害にさらされ続けている。7月に現地を訪れた際、都市に住む私たちも知ること、忘れないことからできる支援があるという気持ちを強くした。本日のイベントが、皆さんの実践のきっかけになればと思う。東京・経堂にいながらして、山都の食を堪能して頂きたい」等の挨拶。
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 続いて榊田さんから、会津・山都(福島県喜多方市)の紹介。
 今年7月のCSまちデザイン主催「福島ツアー 会津・山都を丸ごと味わう」には、私も参加させて頂きました(大満足)。
 引き続いて、大友治さん(「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」事務局長。Iターンされた方です。)作成による映像「堰と里山の四季」を鑑賞。
 次々と映される目が洗われる光景に、7月に訪問した時のことを思い出しました。
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 この日は、山都からお2人のゲストが招かれていました。
 お1人目は、ひぐらし農園の浅見晴美さん。
 長野県の高原野菜農家のご出身。研修先の埼玉・小川町の霜里農場(金子美登氏)でご主人の彰宏さんと出会い、山都に移住されて16年目とのこと。
 「喜多方・山都でも特に山間部で有機農業を営んでいる。米と野菜(売るものだけで30種類ほど)、それに養鶏。最近は豚も始めた。金子さんには、堆肥づくり等ほ場内循環と消費者との提携の重要性を学んだ」
 「回りには専業農家はほとんどいない。小学校が廃校になり、子どもは10kmほどをスクールバスで通っている。廃校跡を活用しようと集まった仲間が中心になって、毎週、「百姓市」という直売イベントを実施。コンサート等も行い、県内はもとより新潟から来て下さる方も。野菜を買うよりも交流を楽しみにしてくれている」
 「有機の生産者を中心とした生産組合を結成し、東京の宅配事業者と提携して在来種(昔やさい)の宅配セット等も販売」
 「近くに江戸時代に開削された本木上堰(もときうわぜき)という水路がある。
 主人は千葉から移住してきた時、この堰を地域の方達が支えている様子に感動し、一方で農家が減少し維持管理が困難になりつつある様子をみて、都会から『堰さらい』のボランティアを募集するようになった。現在は「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」として運営。参加者の半分はリピーター」
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 もうお1人は、秋庭千可子さん。
 東京・世田谷のご出身で、高齢者や障がい者の見守りの仕事をされたのち山都に移住。2010年に「茶房 千」をオープン。
 「自分は志があって移住したわけではなく、たまたま連れ合いが山都のドキュメンタリ番組をみて訪問し、気に入って2000年に家族で移住。私も目の前にコンビニがあるような都会の暮らしに疑問を持っていた。本当は農業をやりたかったが、蕎麦打ちの講習会に通ってみると面白く、お蕎麦屋さんで10年働いたのちに今の店をオープンした。地元の人と移住者が交流できる場を作りたいという気持ちもあった」
 「東日本大震災と原発事故が起こって観光客が来なくなった時、地元の人たちが『この店を潰してはなんねえ』と通ってくれた。現在も客の7割は地元の方。
 震災後、毎週水曜に地元の方と移住者が集まって放射能等についての勉強会を行った。むしろ今回の事故は、この地域を持続可能な社会に変えていくチャンスではないか、と3年間続いた」
 「まずは『お試し』で、関心を持って来てもらうことが大事と考えている。農業体験等だけではなく、一日何もせずぼんやりと過ごせる『居所』にもなれればと思っている」
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 続いて、秋庭さんによる蕎麦打ちのデモンストレーション。
 進行役の榊田理事「後ろの方は、どうぞ『そば』でご覧下さい」。(うまい!)
 蕎麦粉は、全量、山都を始めとする会津産だそうです。
 ちなみに蕎麦粉は挽きたてよりも、一日置いた方が美味しく打てるとのこと。
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 手でこねて丸くし、麺棒で平たく伸ばしていくのは江戸風のやり方だそうです。ただし、打ち粉は上には振りかけません。
 伸ばした後は包丁で切っていきます。
 ちなみに蕎麦の後は、うどんも打って下さいました。
 山都は蕎麦たけではなく、うどんも名物です(7月に伺った際にも頂きました)。
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 料理が準備される間、CSまちデザインの大江正章理事(コモンズ代表、PARC共同代表)から福島の農業の現状について解説がありました。
151031_11_convert_20151101212119.jpg 「米は全袋検査を実施するなど安全性は確保されいるものの、例えばもぎとり園等の来場者数は回復していない。リンゴをシードルに加工するなど、何とか農業を継続していけるようにとの取組も始まっている。熊本で米焼酎を作る等の取組もあるが、特に有機農家は苦労しているのが現状」
 「風評被害」という言葉は個人的にはあまり好きではありませんが、全体として安全性は確保されているにもかかわらず販売が回復しないのは、やはり「風評」のせいかも知れません。
 ちなみに大江さんの新著『地域に希望あり』(岩波新書)では、放射能被害に対峙する福島・二本松市東和町の事例も紹介されています。
 そのような話を伺っているうちに、料理ができてきました。
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 打ち立てのお蕎麦のほか、会津地方の郷土料理が並びました。
 こづゆは冠婚葬祭に欠かせないそうで、具は7種か9種。めでたい席とお悔やみの席では色合いなども変えるそうです。ホタテ、キクラゲ等が美味です。
 身欠きニシンの山椒漬けも、会津の郷土食とのこと。ひぐらし農園の新米も出して下さいました。
 NPO法人福島県有機農業ネットワークのオリジナル純米酒「きせき」の試飲も。
 食事の後は、浅見さん、秋庭さんとの間で質疑応答。
 浅見さんは、鳥獣害の被害が深刻になっていること等についてお話をされました。
 秋庭さんは古民家を借りて、もう一つの交流の拠点とする構想をお持ちとのことです。
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 最後に、関連するイベントの告知等もありました。
 11月の7日~8日と21日~22日の土日は、「ふくしまオーガニック旅 2015」が予定されており、二本松・東和での大豆収穫、広野町の里山再生めぐり等を体験します(福島県有機農業ネットワーク主催)。
 11月28日(土)には、国分寺カフェスローで「ふくしま有機交流カフェ」が開催されるとのこと。
 また、CSまちデザインでも、和食や食品表示等をテーマにした多彩な市民講座が予定されています。
151031_10_convert_20151101210602.jpg 終了後には、物販も行われました。
 秋庭さんの打ち立ての蕎麦、うどん。蕎麦のプリンやシフォンケーキ。浅見さん(ひぐらし農園)のお米。日本酒「きせき」、それに関連する書籍など。
 東京にいながらして、会津・山都の食を堪能できた一日になりました。
 食事の時、隣の方が「山都に行ってみたくなった」と仰っておられました。もちろん私も、また訪ねたいと思っています。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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