江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座 @ 東京・小金井

 世界中を不穏な空気が覆いつつあります。
 それでも季節はめぐり、平成27年(2015年)も実りの秋を迎えました。
 11月23日(月・祝)の新嘗祭(勤労感謝の日)に向けて、今年も各地で野菜の宝船の準備やしめ縄作りが行われています。
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 11月21日(土)は東京・小金井の商工会館へ。
 第5期 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座の最終日です。
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 東京の伝統野菜・江戸東京野菜の魅力を伝えることができるスペシャリストを育成するための講座も、今年で第5期目(5年目)を迎えました。その3日間にわたる講座の最終回が、この日、開催されたのです。
 主催はNPO法人 江戸東京野菜コンシェルジュ協会です。
 これまでの2回では、協会会長(江戸東京・伝統野菜研究会代表)の大竹道茂さんによる「江戸東京野菜には物語がある」等の講演のほか、生産者、流通・飲食店関係者、野菜ソムリエの方達から、それぞれのお立場から幅広い講義が行われてきました。
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 この日の受講者は16名。会議室の後方のテーブルには、東京・八王子の伝統野菜である貴重な高倉大根と、東京長カブ(品川カブとも呼ばれます。)が展示されていました。後に、試食させて頂けるそうです。
 協会理事(多摩八王子江戸東京野菜研究会代表)の福島秀史さんから進行で開会。
 引き続き、納所二郎理事長から開講の挨拶。江戸東京野菜の普及の取組は各地で拡がっており、小金井でもこの日から12月6日(日)までの間、「秋の江戸東京野菜・黄金丼フェア2015」が開催されている旨の紹介がありました。
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 続いて私から、「フード・マイレージと地産地消」と題して、1時間20分ほどを頂き、以下のような内容について説明させて頂きました。
151121_3_convert_20151123085333.jpg  「1960年代以降、日本人の食生活は大きく変化。食の外部化(外食・中食の増加)と流通の広域化が進むと同時に、供給熱量の構成も大きく変化した(米消費の半減、畜産物や油脂消費の急増等)」
 「これらの結果、栄養バランスの崩れによる肥満の増加、食に対する不安の高まり、食料自給率の低下、耕作放棄地の増加や国内農業の担い手の高齢化など、様々な問題が生じている。さらに、このような食生活の変化による飼料や油糧種子の大量・長距離増加が日本のフード・マイレージを他の先進諸国に比べて突出して大きなものとしている。巨大なフード・マイレージは、食料の輸送の過程で大量の二酸化炭素を排出し、地球環境の相当の負荷をかけている」
 そして、「地産地消には、消費者、生産者双方にとって様々なメリットがあるが、食料輸送に伴う環境負荷を低減するという面でも効果がある」として、この会場で大根を料理講習会を開催すると想定し、地元産、神奈川・三浦市産、中国産の大根を使用する3つのケースでフード・マイレージと輸送に伴う二酸化炭素排出量の試算結果を紹介。
 さらに、伝統野菜の復活・普及の取組は、地産地消の典型であるのみならず、地域の歴史や風土を見直すきっかけとなり、生産者との顔の見える関係づくりや、地域のコミュニティを再生していくという面でも意義が大きいと考えられる旨を説明させて頂きました。
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 その後は、4人ずつ4グループに分かれてのワークショップです。
 主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品及び果実について、それぞれ2品目のうちから1つを選んで献立を作り、そのフード・マイレージと二酸化炭素排出量を計算するというもの。
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 続いて「これからの望ましい食」について議論してもらい、最後にグループごとに「キャッチフレーズ」(私たちの宣言)を発表。
 発表された各グループのキャッチフレーズは以下の通り。
 「伝統野菜を通じて農業価値を見直し、生活者を導いていく!!」
 「エコ料理で伝統行事を楽しもう!!」
 「旬の地元の食材をみんなでムダなく食べよう!!」
 「温故知新! 古き良き食文化を継承し地元産、地元の農家とつながっていく!!」
 エコや伝統文化を重視し、自分たちでできる宣言が次々と発表されました。単に消費だけする「消費者」ではなく、「生活者」の視点を重視したいとの発表も。
 それぞれ食や農業に関心があり、様々なお立場で活動されている方達らしく、内容の濃い発表でした。
 その後、若干の質疑応答を経て、私の担当部分は終了です。
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 昼食・休憩の時間には、野菜ソムリエ・上原恭子さんによる(お待ちかねの)試食が行われました。
 高倉大根と東京長カブは、生のままのほか、あらかじめ調理して下さっていた煮物やきんぴらとしても頂きました。大根やカブは生でも甘く、調理するとさらに美味しさが引き立ちます。
 内藤カボチャを使ったプリンも出して下さいました。伝統野菜は品質(肉厚等)が均一ではないため、調理にも手間がかかるとのことです。
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 この後は、検定試験と福島さんによる「コンシェルジュとしての心得」の講話があり、今年の育成講座は終了。
 なお、オプションとしてほ場見学や懇親会が予定されているそうです。
 この育成講座以外にも、江戸東京野菜の復活・普及の取組は各地で幅広く行われています。
 私がお手伝いさせてもらい始めた5年ほど前から比べても、かなり、普及が進んできていることは、例えば、大竹道茂さんのブログで紹介されている豊富な事例からも明らかです。
 日本で最も農業生産の現場から離れている東京(カロリーベース自給率は1%!)で、このような取組が進められていることは、日本全体の食と農業のあり方を考えていくうえで多くの示唆に富むものと考えられます。
 江戸東京野菜コンシェルジュの皆さまの、これからの益々のご活躍を期待したいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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