JKSK ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2015(第3回)

 2015年11月22日(日)。
 朝7時前、曇り空の東京・新宿を1台のバスが福島・広野町に向かって出発しました。
 認定NPO法人 女性の活力を社会の活力に(JKSK)が主催する「ふくしまオーガニックコットン・ボランティアバス2015」の第3回(2015年度の最終回)です。
 事務局の柏木智帆さんからのスケジュール等の説明に続き、JKSKの大和田順子理事長からボラバスの経緯や趣旨等の説明。
 「JKSKが東日本復興支援のため立ち上げた結結(ゆいゆい)プロジェクトの中で、3年前からボラバスを主催。今日はコットンの収穫作業のほか、広野町の復興支援のために様々なアイディアを出して頂き、つながりを続けていきたい」
 引き続き参加者1人ひとりから自己紹介。今回は事務局を含めて38名の参加とのこと。小学生や学生からから60歳代まで、職業等も多様なメンバーです。長野や名古屋から参加された方も。
 JKSKの木全ミツ会長も参加されており、「今回の体験を多くの人たちに伝えていってもらいたい」と発言されていました。
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 途中、休憩した友部SAで朝食を購入。
 日本三大稲荷の一つといわれる笠間稲荷神社をもじった「笠間いなり寿司」は、地元産食材をふんだんに使って見た目も美しく、美味でした。
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 予定通り10時30分頃、広野町の浅見川沿い(上流にある箒平地区を訪ねたのを懐かしく思い出しました。)のコットン畑に到着。
 水田はすっかり稲刈りが終わり、ススキの穂が風に揺れています。広野火力発電所の煙突の手前には建設中の商業施設のビル。前回から、また少し景色が変わりました。
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 歩いてすぐのコットン畑へ。畑脇にしつらえたテントの前で、地元の方達が出迎えて下さいました。
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 津波で自宅も田畑も流された根本賢仁さんは、現在は広野町の復興・再生プロジェクトのリーダーとして活躍されている方。つい2日前に設立総会を開いたNPO法人 広野わいわいプロジェクトの理事長を務められています(認定の申請はこれからとのこと)。
 プロジェクト関係で以前からお世話になっている方とともに、この日は地元の農家の方も顔を出して下さいました。
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 収穫のやり方を教えてもらってから、思い思いにコットン畑へ。
 この地区では3箇所の畑があるのですが、最も遠い川向うの畑に行ってみることに。
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 畑に入ってみると、少しですが、まだ花も残っています。オクラに似た清楚な花です。
 花が散ると、その後にコットンボールができます。最初は緑色ですが、次第に赤黒く熟してきます。
 そしてやがて弾けて、綿が顔を出すのです。よく花屋さんで売られているような真っ白ではなく、茶綿です。
 ゆっくりと指でつかんで引っ張り、萼(がく)から外してビニール袋へ。がくもコットンベイブの材料になります。
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 1時間ほどの作業の後、テントの方に戻ります。
 防災緑地の工事も、だいぶ進んできました。防災だけではなく、地域の人たちが交流できる緑地としても整備される計画です。「プレゼントツリー」の取組も活用し、来春3月には植樹祭が予定されているそうです。
 NPO事務局長の磯辺俊彦さんが、スマホで被災当時の写真を見せて頂きながら、津波被害の状況を説明して下さいました。この辺り一帯は津波で被災したそうです。
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 収穫が一段落したところで、テントの下でコットンのごみ取り。
 収穫したばかりのコットンには細かなゴミがたくさんついています。これを除かないと製品化した時の肌触りがよくありません。そこで、手作業で除いていくのですが、これがなかなか根気のいる地道な作業です。
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 この作業を1時間弱。
 バスに戻り二ツ沼総合公園に移動したのは、12時30分過ぎでした。昼食の時間です。
 広野町産の新米のおむすびと煮物。それに、熱々のすいとん汁。
 かつて、この地にほど近いJヴィレッジ(楢葉町)でサッカー日本代表が合宿していた時、出されたすいとん汁をフィリップ・トルシエ監督(当時)が食べて懐かしいふるさとの味と評したとのこと。それ以来、「マミーすいとん」と呼ばれて地元の名物料理となっているそうです。
 
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 すぐ近くの施設に移動。午後のプログラムは、商品開発のワークショップです。
 広野町の遠藤 智町長も顔を出して下さり、
 「広野町では住民のうち3千人が戻ってきた。一方、原発収束や除染のために3千人の方が滞在している現状。今日のような都会から来られる方を含め、人と人とのつながりを取り戻す取組を続けていくことにより、双葉郡全体の復興、さらには日本全体の再生にもつなげていきたい」等のご挨拶を頂きました。
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 さらに、根本賢仁さんから、昨日(11月21日)に広野中央体育館会議室において「広野わいわいプロジェクト」の設立総会を開催し、満場一致で承認され、NPO認証申請の運びとなった旨の紹介がありました。
 今年度、広野町では復興庁「新しい東北」先導モデル事業も活用し、交流促進や町民の仕事創出に取り組んでいますが(この日のワークショップもその一環)、より強力な推進体制が整備されたことになります。
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 続いて、各地で栽培されたコットンの「里帰り」。
 東京・板橋区のNPO法人いた・エコ・ネットの方からは、皆さんで育てられたという大きな2つのビニール袋が吉田恵美子さん(いわきおてんとSUN企業組合代表)に手渡されました。
 金沢市の小学生が育てたというコットンも、先生をされていた方から手渡されました。北陸でも無事に育ったそうです。
 ちなみに、わずかな量ですがわが家の市民農園で育てた分も「里帰り」させて頂きました。 
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 いよいよワークショップがスタート。商品開発ワークショップの2回目です。
 コーディネータは、引き続き(株)さとやまの嶋田俊平さん。
 前回のワークショップでは、広野町の特産品を商品化するための「物語作り」を行いました。
 そのなかで、オーガニックコットンの製品化が今回のテーマ。前回、私も参加したグループでは新製品の提案までは至らなかったのですが、嶋田さんからは、コットンの糸を紡ぐこと自体を「商品化」するアイディアが示されました(さすが!)。
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 その具体的な試作品は、スピンドルです。
 嶋田さんは既製品のスピンドルを集めて研究し、広野町のお母さん達の手仕事にふさわしい試作品を開発され、この日、披露・実演して下さいました。地元産の木材を使用しているそうです。
 なお、試作品の開発に協力されたのは長野県在住の木工作家・田中義明さん。このボラバスで知り合ったというご縁とのこと。
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 続いて、参加者全員で糸紡ぎを体験させて頂きました。工程は以下のようなものです。
① 綿繰り機の2本の木のローラーの間に綿を挟みこみ、回転させて、種を分離します。
② 出てきた綿を、綿弓で弾いて繊維をほぐし、柔らかくします。
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③ さらに、櫛(あるいは刷毛)のような器具を使って、繊維の方向を揃えます。
④ そして出来上がった綿を、先ほどのスピンドル又は糸車を使って紡いでいきます。
 なかなか、スピンドルによる糸紡ぎは難しいです。嶋田さんもかなり練習されたそうで、できるようになってからは楽しくなったそうです。
 作業中、これも商品化を目指している冷凍ブルーベリーを出して下さいました。天然のシャーベットです。
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 予定の時間がきたところでワークショップは終了。
 参加者は糸紡ぎ体験を楽しませてもらいましたが、果たして商品化のヒントが得られたでしょうか。
 移動するバスには、今回も吉田さんが同乗して下さり、
 「広野町には多くの作業員の方が滞在し、廃炉や除染という大事な仕事に携わってくれている。一方で、町の姿が大きく変わっていることに戸惑いを感じている住民も多い。なかなか元の姿には戻れないのが現状」等の話を聞かせて下さいました。
 道の駅よつくら港に到着。ここでお土産や夕食を買い求めます。
 防潮堤工事が進み、海は見えなくなりました。 
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 その後は、かんぽの宿いわきの温泉で汗を流した後(あまり汗はかきませんでしたが)、バスは一路、東京へ。
 バスの中で、よつくら港で求めた寿司と「又兵衛」のワンカップ。
 再び参加者にマイクが回され、今日の感想等のシェア。
 「自宅のベランダでコットンを栽培することで、福島のことを忘れないようにしたい」、「今日の経験を回り人に伝えたい」「また機会があれば参加したい」などの感想が出されました。
 また、広野町の防災緑地で取り組む予定のプレゼントツリーの紹介もありました。来年3月には植樹祭が挙行される予定とのことです。
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 このボラバスツアーには、私は2013年の5月以来、3年にわたって10回ほど参加させて頂きました。(恥ずかしながら)ほぼ皆勤です。
 思い起こすと3年前は、被災地・福島のことが気に掛りつつも、なかなか現地に足を運べませんでした。大変な状況にあることが分かっているのに、半ば興味本位で足を運ぶことに二の足を踏んでいたのです。
 しかし、このボラバスに参加させて頂き、自分の目で現地の様子を見て、現地の方々のお話を伺ううち、次第に福島が身近なものになりました。そして、他の機会も捉えて福島に足を運ぶことが増えてきました。
 復興に向けて前向きに取り組んでおられる方達の力強い姿も、まだまだ厳しい状況にある地域があることも、知ることができました。まだまだ楽観できる状況にはありませんが、もちろん、悲観するしかないという状況でもありません。
 これらのきっかけを作って下さったJKSKの皆さまには、改めて感謝を申し上げたいと思います。
 そしてもちろん、広野町、いわき市の皆さまにも。
 これからも、自分なりに関わっていきたいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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