表44 一票の格差(参議院選挙区)


◆ F.M.豆知識
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「一票の格差」
 2015年7月、公職選挙法の一部を改正する法律が成立しました。この結果、8選挙区で定数が変更されるほか、私の故郷である徳島選挙区は隣接する高知県と合区され定数4が2に削減されることが決定されました(鳥取、島根の両県も同様)。
 この改正の結果、今夏に予定されている参議院選挙においては、1票の格差」は最大3倍程度に縮小されることとなります(これでも依然「違憲状態」とされるのかもしれませんが)。

 憲法が定める「法の下の平等」を確保することは、重要かつ当然のことです。しかし個人的には(故郷が独自の代表を出せくなるという恨みつらみは別にしても)いささか違和感を隠せません。
 それは、法の下の平等が人間だけに適用されていることです(当然といえば当然ですが)。

 しかし、この国や社会を構成し、国土や環境を守っているのは人間様だけではありません(そうですよね)。ということで、半ば冗談ながら、牛1頭当たりの「格差」を計算してみました(表44)。

 2015年における全国の牛(乳用牛及び肉用牛)の飼養頭数は約386万頭。これを選挙区定数で割ると、最も少ないのは東京都の200頭に対して最も多いのは北海道の約22万頭。その格差は、実に1100倍以上もあります。
 また、同様に定数1人当たりの森林面積を計算してみると、最も少ない東京都の7千haに対して北海道は92万haと、こちらも140倍もの格差があります(「1票の格差」の3倍程度とは比べるべくもありません)。

 もちろん、牛や森林に住む生き物たちには選挙権はありません。したがって定数是正の議論が人口だけを対象に行われているのは、当然ではあります。
 しかしながら、この国の国土や環境を適切に管理していくという観点からは、果たして人口だけの議論で十分なのでしょうか。
 人口の三大都市圏(とりわけ東京圏)への集中が続くなか、今後も機械的に定数是正が行われていくのであれば、選挙制度も政治も、ますます都会中心のもの(都会人の都合やニーズをより強く反映したもの)になっていく恐れはないでしょうか。それが多数派の利益なのだから当然、ということで問題はないのでしょうか。

 定数是正を進めていくと同時に、人口配置も含め、バランスのとれた国づくりを模索していくことも重要ではないかと考えます。少しは牛の声も政治に反映してはどうでしょうか、と思うのはモー想に過ぎないのかもしれませんが。

[出典、参考資料等]
 総務省「参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等について」
 総務省「人口推計(平成26年10月1日現在)」
 農林水産省「平成27年畜産統計」
 林野庁「都道府県別森林率・人工林率(平成24年3月31日現在)」

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