F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.088

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.88; 2016.2/22(月)[和暦 睦月十五日]発行

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 新しい年を迎えたと思うと早くも睦月十五日。

 新年の最初の満月の日は小正月と呼ばれ、陽の気を持つ小豆粥を頂く

習慣があります。

 相変わらず天候の変動は大きいものの、確実に本格的な春が近づいて

いるようで個人的には花粉症も一気に本格化。しかも風邪気味です。

 

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は睦月十五日

No.88222日と目出度い?ゾロ目)の配信です。

 

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  F.M.豆知識

  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

 あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ

 ていきます。

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「一極集中の国際比較」

 前回は「一票の格差」を取り上げました。法の下の平等が人間だけに

適用されていることは問題ではないかと、半ば冗談ながら、牛1頭当たり、

森林面積当たりの格差を計算してみたところ、それぞれ1100倍、140倍と

いう大きな格差があることを明らかにしました(表44)。

 まあ、モー想ですが。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/44_kakusa.pdf

 

 経済が発展するに伴って第一次産業のシェアが低下し、第二次、さら

には第三次産業のシェアが高まることが歴史的な法則(ペティ=クラー

クの法則)であるのと同様、次第に大都市圏に人口が集中していくのは

当然かも知れません。

 

 そこで、国連の統計を基に国際比較を試みました。

 リンク先の図45は、その国の中でもっとも人口の大きな大都市圏(横

軸)と、その大都市圏の人口が総人口に占める割合(縦軸)をプロット

したものです(大都市圏の人口で上位20位まで)。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/45_daitosi.pdf

 

 これをみると、やはり日本は特別のようです。

 日本最大の大都市圏である東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の人

口は約3800万人。これは世界の中でも最大の大都市圏です。それも、人

口超大国であるインド(デリー圏、約2500万人)、中国(上海圏、約

2300万人)以下をかなり引き離してのダントツです。

 

 総人口に占める割合をみても、日本の東京圏は30.0%と、ブエノスアイ

レス圏(アルゼンチン)の36%、リマ圏(ペルー)32%に次ぐ集中度と

なっています。ちなみに先進国はパリ圏16.7%、ロンドン圏16.1%、

ニューヨーク圏5.8%といったところです。

 

 日本は国土、特に平地面積が狭いという事情があるとはいえ、その一

極集中の度合いは、諸外国と比べても極端と言わざるを得ないのではな

いでしょうか。

 

[出典、参考資料等]

 国連経済社会局“World Urbanization Prospects, 2014”

  http://esa.un.org/unpd/wup/highlights/wup2014-highlights.pdf

 

 国連人口基金“The State of World Population 2014” 

  http://www.unfpa.org/swop-2014

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達、トピックス等を紹介しています。

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 千葉・香取郡神崎町(こうざきまち)にある寺田本家は、江戸時代の

延宝年間(17世紀後半)、良質の仕込み水や米、利根川の水運といった

地の利に恵まれた現在の地に移り、酒造業を始められたそうです。

 

 その寺田本家の製品は、一般的な日本酒のイメージとは大きく異なり

ます。一言でいえば複雑・濃厚。近年、ブームになっている大吟醸に代

表されるスッキリ・淡麗な呑み口とは真逆です。

 

 その特色を生み出しているのは、無農薬米を原料にして昔ながらの手

間のかかる生もと造りで醸しているという製法だけではありません。そ

もそも酒造りに対する思いそのものが、「自然の原点に戻って酒造りを

したい」と特別なのです。

 

 実は寺田本家の経営方法は、かつては他の酒蔵と変わりませんでした。

1974年に婿入りされた先代の寺田啓佐(けいすけ)氏(故人)は、コス

ト削減のために安い原料米を使い、醸造用アルコールを添加するなど、

売り上げや利益を伸ばすことを目指しておられたそうです。

 ところが日本酒の市場全体が低迷する中で業績は振るわず、ストレス

もあって35歳の時に大病をされ、手術・入院の生活を余儀なくされまし

た。そしてベッドの上で、自然の摂理に逆らい、自分の命が喜ぶような

生き方をしていなかったことに気付き、自然(微生物)の力を最大限活

かして酒を造るという方向に、大きく転換されたそうです。

 

 これらの経緯は、寺田啓佐氏のご著書『発酵道酒蔵の微生物が教え

てくれた人間の生き方』(2007、スタジオK )に詳しく紹介されていま

す。

 

 2016111日(月・祝)、池袋のオーガニックバー「たまにはTSUKI

でも眺めましょ」オーナーの?坂勝氏が主催する寺田本家見学ツアーに

参加させて頂きました。

 当日は、現当主(24代目)の寺田優(まさる)さんが、自ら蔵の中を

詳しく案内、説明して下さいました。都会の雑菌にまみれた40名もの参

加者を麹室の中にまで入れて下さったことには、正直、驚いたのですが、

「神経質な蔵もあるが、自然の多様な菌がいる中で発酵させた方が味わ

い深くなると考えている」と仰っていました。

 

 「もと摺り唄」も披露して下さいました。伝統的な生もと造りという

手法は、冬の間、桶に入れたもろみを木の櫂で長時間すりつぶすという

厳しい労働が必要です。唄うことは、リズムを合わせて作業することで

摺り方が均一になるだけではなく、つらい仕事を楽しくすることで、作

り手の楽しい気持ちが菌に移り、できあがる酒の品質を左右するという

効用があるそうです。

 

 微生物が発酵しやすいように最大限の心配りをしながら、自然の力で

醸された寺田本家のお酒は、一口含むと、特徴のある優しい香りと味が

拡がります。

 「一本のお酒を通して皆様に自然の恵みと心の豊かさを発見していた

だくお手伝いができたら・・・・それが私達の願いです」。

 寺田本家のホームページには、このように記されています。

 

[参考]

 寺田本家のホームページ

  http://www.teradahonke.co.jp/

 

 寺田啓佐氏著「発酵道酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方」

 (2007.8、スタジオK

  http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784309907451

 

 たまつき発・寺田本家酒蔵ツアー2016(拙ブログより)

  http://food-mileage.jp/2016/01/16/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 和暦のある暮らし @三軒茶屋・カフェオハナ (02/11)

  http://food-mileage.jp/2016/02/11/

 

 江戸落語を聴いて江戸東京野菜を食べよう @高円寺・うおこう (02/16)

  http://food-mileage.jp/2016/02/16/

 

 東京で頂く地域の食都電テーブル、なみへい (02/19)

  http://food-mileage.jp/2016/02/19/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 奥沢ブッククラブ(第5回)

 日時:224日(水)18:0021:00

 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢)

 主催:奥沢ブッククラブ

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1244400528908896/

 

 週刊金曜日読者の会・浦和(ゲスト・野口和恵さん)

 日時:225日(木)19:00

 場所:風土舎(さいたま市浦和区元町2-9-8

 主催:週刊金曜日読者の会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/1669862893238272/

 

 原発事故で求められたメディアリテラシーと市民社会のリスクコミュニケーション

  メディアリテラシーの育成に探るリスクコミュニケーションの可能性

 日時:227日(土)13:3016:50

 場所:筑波大学東京キャンパス(東京・文京区大塚3-29-1

 主催:日本教育大学協会社会科部門関東地区会、日本社会科教育学会震災対応特別委員会

 (詳細、お問合せ等

  http://socialstudies.jp/pdf/jass2016_symposium.pdf

 

 たねと食のおいしい祭

 日時:228日(日)12:0020:00

 場所:カフェスロー(東京・国分寺駅南口徒歩5分)

 主催:2016 たねと食のおいしい祭実行委員会

 (詳細、お問合せ等

  http://www.cafeslow.com/tane/

 

 福島・有機農家のメッセージ「震災・原発事故から5年を迎えて」

 日時:35日(土)13:3017:00

 場所:連合会館(千代田区神田駿河台3-2-1

 主催:福島県有機農業ネットワーク

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/FukushimaOrganicAgricultureNetwork/posts/955798184509326

 

 森の交流イベント&被災地視察スタディツアー

 日時:36日(日)東京・新宿駅西口7:00集合

 場所:福島・広野町ほか

 主催:Present Tree in ひろの

 (詳細、お問合せ等

  http://www.presenttree.jp/tour/hirono/hirono160306.html

  注:定員に達したのでキャンセル待ちのみとのこと。

 

 福島学カフェin駒場「廃炉編」新刊発表会 開沼博先生

 日時:37日(月)19:0021:00

 場所:一般社団法人 番來舎(東京・目黒区駒場)

 主催:番場 さち子さん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1198491276829315/

 

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* 今号のコツコツ小咄。

 「88歳の誕生日祝いは、黄色がいいそうよ」

 「えっ、ベージュ(米寿)じゃなくて?」

 

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)

  投稿中です。

  https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.89は、39日(水)[如月朔日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也