奥沢ブッククラブ(第5回)

 2016年2月24日(水)。
 冬に戻ったような寒い日が続きます。終業後、東京・自由が丘のシェア奥沢へ。
 この日開催されたのは、奥沢ブッククラブの5回目。
 読書会の前に食事をするのが恒例ですが、この日のメニューはピェンロー(扁炉)という鍋料理。
 白菜をメインに、豚バラ肉、シイタケ、春雨を煮込みます。白菜は熱くてトロトロ、あまりの美味しさに、つい本音をトロ(吐露)しそうです。会の肝いり役兼シェフ役のシゲさん始め皆さま、今回もご馳走さまです。
 べったら漬け、紹興酒も。
 私は、先日の見学会で調達してきた仁井田本家(福島・郡山)の純米・穏(おだやか)を持参(銘柄の通り、すっきりとして呑みやすいお酒でした)。
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 食事が一段落したところで、今回の課題図書である林芙美子『浮雲』について感想等のシェア。
 第二次大戦中に仏印で知り合ったゆき子と富岡の愛憎劇を、焦土と化した戦後の日本を舞台に描いた長編小説です。
 今回は参加者が6人と少なく、しかも残念ながら女性は少数派(お2人)。
 前回の課題図書・ガルシア=マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』が、一方的な男性目線と多くの女性陣から批判的な意見が出たため、次回は女性目線の作品をと選んだ課題図書だったので、ぜひ女性の方の感想を色々とお聞きしたかったのですが。
 そのお一人・Uさんの感想。
 ズルズルと相手の男との関係を続ける主人公・ゆき子に同化はできないものの、気持として理解できる部分はある。最後に亡くなったことは悲しいが、ズルズルした関係が断ち切れたこと、周りからは妻と見られつつ死ねたことは幸せだったのではないか。
 もうお一人の女性・Oさん(ライターさんだそうです。)からは、脳科学的な観点からは、遺伝子的に子孫を残す可能性の高いとされる「遊び人」に惹かれるのは、女性の本能的な性質ではないか、とのコメント。
 やっぱり関係してしまうと女は弱いということ?、とのシゲさんからの問いには、最初の男(伊庭)は嫌悪しているからそれは当たらない、とキッパリ反論。
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 私からは、確かに富岡はひどい男だけれども理解できる。それより、富岡に純粋な愛をささげつつも、好意を持つ純情な若い男性を破滅させたり、焼け跡で外国人と関係したり、思ってもいない男に近付いて金を巻きあげる女性(ゆき子)が怖い、という感想を述べさせて頂きました。
 これに対してUさんからは、それでもゆき子は自分が苦しい時は一所懸命。生きるために娼婦のようなこともした。そして余裕ができた時に思う人(富岡)に連絡している。その富岡は、ゆき子が死んだ後も生き延びていくのだろうけど、とのコメント。
 女性と男性の間には、なかなか理解しえない部分があるようです。
 それが分かるのも、読書会の醍醐味です。
 このあたりでひとまず課題図書から離れ、恒例のUさんによる絵本の読み聞かせ。ブッククラブの楽しみの一つです。
 一冊目はトミー・ウンゲラー「あおいくも」。異端児だった青い雲が、紛争に明け暮れる地上に青い雨を降らせ、青一色に染めることで平和をもたらすという内容。2000年頃の作だそうですが、現代こそ意味のある内容かと思いました。
 もう一作は、ユーモラスなヨシタケシンスケ『もう ぬげない』。
 絵本の読み聞かせは裏表紙まできちんと見せるのが大事、と言われる理由が良く分かった次第。
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 続いて、これも恒例の参加者の皆さんからお薦めの本の紹介。
 ベテラン読書家のU氏からは宇野収ほか『青春という名の詩 幻の詩人サムエル・ウルマン』。それにカミュ『異邦人』。これは、後の話し合いで将来の課題図書の候補になりました。
 私からは我田引水で、ハンガー・フリー・ワールド編著(勝俣誠監修)『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』。
 私もほんの一部を分担執筆しています。シェア奥沢に寄贈させて頂きました。
 Uさんからは森光子(有名な女優さんではありません。)『吉原花魁日記-光明に芽ぐむ日』。売られ、買われる立場の女性の気持ちが綴られた本で、男性は必読とのこと。
 さらに三島由紀夫の怪小説『命売ります』
 ご自身もカナダ等に取材旅行されているというOさんからは、本多有香『犬と走る』。それに堀江珠喜『寝取られた男たち』。
 常連の男性・Tさんからは池田晶子『魂を考える』、倉山満の「嘘だらけの」近現代史シリーズ。
 それに齋藤孝『声に出して読みたい日本語(CD付き)』。江戸時代までは日本人の教養だった素読が、明治以降廃れた。読むのは大変でも「素聴」なんできる。何度も繰り返し聴くことで理解が深まる、とのことです。
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 そして最後にシゲさんからの推薦は、夏目漱石『こころ』
 そして、ここ2回、男女の関係に関する課題図書を取り上げてきたが、さらに深く人生そのものを考えるために次回の課題図書にしてはどうか、との提案。
 みんなが参加しやすい(読みやすい)本にしてはどうか等の意見も出ましたが(私です)、逆に、この際しっかりと大作を読むべし、9月ころにはドストエフスキー『罪と罰』を課題図書としてはどうか、との意見も出て、最終的には、次回は『こころ』をみんなで読むことになりました。
 ちなみに日程は3月22日(火)となる予定です。4月には花見も兼ねてやりたいね、等の意見も出ました。
 人数が少なかったこともあり、談論風発(不規則発言も爆発?)の第5回ブッククラブでした。
160224_5_convert_20160227104406.jpg 追伸:帰り際にUさんから素敵な絵葉書を頂きました。
 奥沢ブッククラブのレギュラーでもある(この日は欠席でしたが)高田雄太さんの個展が4月12日(火)~17日(日)の間、阿佐ヶ谷のOPPOで開催されるそうです。よほど猫好きなのか、毛の一本一歩まで舐めるように細密に描かれています。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなったことから、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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