図48 東京都への移住者数(移動前の地域別、2015年)


◆ F.M.豆知識
  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 「東京蟻地獄論」2
 引き続き、都市と地方の人口問題について。
 これまで日本の「一票の格差」の現状、一極集中の国際比較、2000年代に入って人口の東京圏への一極集中が先鋭化している状況等について述べてきました。

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 そして前回、この状況は「都市アリ地獄論が現在に甦っているようにもみえる」と書きました。

 「都市アリ地獄論」とは、歴史人口学者の速水融(はやみ・あきら)が唱える説です。
 これは、江戸期の日本の人口が全体として停滞している中で、関東地方と近畿地方では人口が減少していることに着目したものです。江戸や京都・大阪という大都市を抱えているこれら2地域では、大市場向けの商品作物の栽培が増加し、醸造業等の手工業が発達していることから、当然、人口が増大したはずなのに、逆に減少しているというのです。

 この理由として、速水は、住みにくい都市は死亡率が農村より高く短命であることから、周辺の農村部から大量の人口を受け入れることで人口を維持していたため、地域全体の人口は増えなかったとしています。
 そして、全く同様の状況は中世のヨーロッパにおいてもみられるとしています(ヨーロッパの歴史人口学者は「都市墓場説」と呼んでいるそうです)。

 さて、リンク先の図48は、2015年における東京への移住者数(移動前の地域別)を示したものです。

 これによると、東京への移住者が最も多いのは東京圏とされる埼玉・千葉・神奈川ですが、関東地方のみならず、全国から東京に移住する人がいることが分かります。
 仮に「都市アリ地獄論」が現代に当てはまるとすれば、その対象地域は江戸時代の関東地方に留まらず、全国に及んでいることが伺えるのです。
 次回に続きます。

[出典、参考資料等]
 総務省『住民基本台帳人口移動報告 平成27年(2015年)結果』
  http://www.stat.go.jp/data/idou/2015np/kihon/youyaku/

 速水融『歴史人口学の世界』((岩波現代文庫)
  https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/6002720/top.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
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