石井一也先生「身の丈の経済論」@シェア奥沢

2016年4月2日(土)。
 東京・自由が丘のシェア奥沢では、昼間の奥沢ブッククラブ特別編「本の桜祭り」でバーベキュー、絵本の読み聞かせ及び「絵本演芸(仮称)」で楽しませて頂いたのに続き、18時過ぎからは石井一也先生(香川大)をお招きしてのシェアトークという豪華2本立てです。

テーマは「身の丈の経済論:ガンディー思想とその系譜」

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私は昨年5月、やはりシェア奥沢で初めて話を伺い、その内容に深く感じ入り、ご著書も読ませて頂きました。

その上で、この日、再び話を伺う機会を得ることができたのです。
(ちなみに本の写真に張り付いているのは、この日の昼間にUさんから頂いたポリジを押し花にしたものです。)

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冒頭、イヴァン・イリィチの「コンヴィヴィアリティ」(conviviality)という概念が紹介されました(以下、文責中田)。

これは、各人が自立的でありながら他者を尊重し相互に助け合うという倫理のことで、節制と禁欲の価値を生むものだそうです。石井先生は、この概念を将来世代の他者との関係性という面にも適用していくべきと主張されました。

その観点から注目されるのが、ガンディーの経済思想だそうです。

「近代」とはイギリス工業のための世界経済の再編成であって、機械は近代文明の象徴・大きな罪であるとのこと。そして、真の意味での文明とは、必要物の拡大ではなく、その慎重・自発的な削減によるものというのが、ガンディー思想の中心にあったとのことです。

また、「脱近代」の経済建設のためにガンディーが推進したチャルカー運動は、工程の全てを手作業に委ねることによって、労働の機会を広く分配し貧者を救済するという意味があったのだそうです。

この日も、インドで入手されたというコットン製品等を持参し披露して下さいました。

実質賃金の下落や「ブラックバイト」等が問題となっている現代日本にとって、大いに示唆に富む内容と思われます。

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そして、「人間の身の丈の経済」へと大きく旋回する以外に「近代」の矛盾を打開する道はないこと、ガンディー思想に基づく新しい経済学は、これまでの成長経済ではなく縮小経済のなかで、生態系を破壊せず人々を養うという困難な方策を追求する必要があること等について、強調されました。

その一方で、先生ご自身が取り組んでおられるコットン栽培の様子等も紹介して下さいました。

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そして最後に、皆さんにお持ち帰りいただきたいガンディーの言葉を一つ選ぶとすれば・・・と、「地球は、すべての人々の必要を満たすのに十分なものを提供するが、すべての人の貧欲を満たすほどのものは提供しない」との言葉を紹介され、この日の講演は終了。

その後、会場の参加者との間で質疑と意見交換。
 現在はガンディーの時代とは異なりネット技術が浸透していること、情報化社会が進展している状況も踏まえるべきでは、等の活発な意見が出されました。

20時20分頃から懇親会。
 昼間と同じメニューかと思うと、(昼間と同じ)豚汁等に加え、ピロシキやポテトグラタンなどの料理が並びました。キッチンマスターのTさん、有難うございます。

勉強会だけで終わるのではなく、先生と参加者、参加者同士が「食」を仲立ちに交流できることがシェア奥沢でのイベントの大きな魅力です。
 オーナーの堀内先生、いつも有難うございます。

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Tさん手作りの桜餅も頂きました。
 この季節にふさわしい、何とも暖かく鮮やかな色合いです。

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素晴らしい講演の内容と食事に満足しつつ帰途につきながら、この日の内容を反芻。
 先生が主張される「貪欲を控え、やみくもな成長を目指さない」という理想像はよ理解しているつもりながら、そこに到達するまでの道筋をどのように整理すればいいのでしょうか。

例えば、子どもを保育所に入れたいと熱望するお母さんの気持ちは「貧欲」とはほど遠いものでしょうが、保育所にせよ高齢者福祉にせよ、ある程度の経済成長(アベノミクスが想定しているのはせいぜい実質2%)と財政の裏付けが必要ですが、縮小経済で果たしてそれが実現できるのかどうか。

最近、「脱成長」等と耳触りのいい言葉が流行っていますが、それで本当に幸せな社会は実現できるのでしょうか・・・といったことが、ここのところの個人的なテーマとなっています。

いずれにせよモヤモヤが残ったことこそが、今回のシェアトークが私自身にとって非常に示唆に富んだ内容だったことの証拠です。
 石井先生、今回も有難うございました。
 自分なりの答えを探し続けていきたいと思います。