しごと塾さいはら(2016年度第1回)

 季節は春から夏へ向かいつつあります。
 2016年4月9日(土)。好天に恵まれた週末、自宅近くに一画を借りている市民農園へ。すっかり菜の花畑です。
 仙台雪菜は柔らかそうな花芽部分を摘み、種採り用に1株だけ残して片付け。スティッ クセニョールも片付け。
 ロマネスコ(カリフラワーの一種)は大きく花芽が開いて紫色に変色しており、これは食べられないだろうと思いつつも収穫し、株は引き抜いて片付け。
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 近くのJAの直売所で買ってきたキャベツ、ナス、ピーマン、トマトの苗を2本ずつ植えつけてネット掛け。
 先週、植えつけたジャガイモ(西原のネガタ)の芽が出ていました。
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 ちなみにロマネスコは茹でると鮮やかな緑色になり、柔らかく、これも収穫した島ラッキョウ等とともに、この日の昼食に美味しく頂きました。
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 翌10日(日)は、久しぶりに山梨・上野原市西原へ。
 手仕事を学ぶ・手伝う・伝える「しごと塾さいはら」の今年度1回目のイベント(在来種のジャガイモ植え付けとわさび田ハイキング)です。
 朝8時過ぎにJR中央線上野原駅着。好天にも恵まれ、駅前にはバスを待つ登山客の列。
 仲間の車に分乗させて頂き、びりゅう館へ。
 地域の観光・交流施設で、直売所やレストランも兼ねています(水車で挽くソバなど郷土料理は絶品!)。
  ここで集合(初参加の男性も含めて合計11名)したのち、使わせて頂いている近隣の畑に徒歩で向かいました。
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 東京ではソメイヨシノはほとんど散ってしまいましたが、ここではまだ八分咲きほど。
 午前中のプログラムはジャガイモの植え付けです。
 準備して下さったのは4種類。男爵、キタアカリの一般的な品種に加えて、この地の在来種であるネガタ(紫色の芽が目に鮮やか。写真右端)と、山梨・丹波山村の在来種・赤セイダ(写真右から2枚目)の4種類。
 農作業を指導してくれるたろうさん(やまはた農園主宰)は、4年前にこの地に移住してきた神奈川出身の若い男性。地元の方に弟子入りして、農業を始め様々な仕事のノウハウを吸収されている方です。
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 まず、60sm間隔で゜「さく」(溝)を切っていきます。
 畑は傾斜しているので(西原では緩い方とのこと)、土は上に上げるように三本鍛(備中鍛)の使い方(コツ)を教えてくれますが、なかなか言われたようにはできません。
 この間、大ぶりの男爵とキタアカリは半分に切って(4分割してもいいそうです)、断面には灰を付けます。腐敗菌が入らないようにする効果があるとのこと(これも諸説あるようですが)。
 さくが切れると、30cm間隔で、たい肥 (近くの馬牧場から入手)と、畑の隅 に積んであった落ち葉 (これは肥料というより、砂質の土壌を改良する意味があるとのこと)を撤いていきます。
 そして、たい肥と落ち葉の山の間に種イモを置いていきます(たい肥等の上に置く方法もあるそうです)。
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 切った種イモは断面を上にして植えつける場合と下にする方法があるそうで、試しに、さく毎に変えて実験することに。
 事務局のれんこんさんが、しっかりとノートに記録しています。
 そして土を被せて、ジャガイモの植え付けは完了。特に水をあげたりはせず、後は自然の気象にお任せです。
 畑の残りのスペースを耕起し、伐ってあったイチョウの枝を片付けたところで午前中のプログラムは終了。
 畑の周りには、つくしがたくさん出ています。実はこの畑、毎年、スギナの大量発生に苦しめられるのです。
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 天気もいいので、お昼は芝生の広場に車座になり、びりゅう館特製の雑穀弁当を頂くことに。
 桜や桃が満開です。水仙も。山里では沢山の花が一斉に咲きそろいます。
 食事をしながら(一部オヤジはビールも飲みながら)、自己紹介など。
 古民家再生や空き家バンクの取組みをされているようこさんも付き合って下さいました。
 千葉から移住してこられ、今は地元の男性と結婚され2人の子どもに恵まれている方です。
 ちなみに4月20日 (水) 19時から池袋で開催されるしごと塾(ECOM主催)では、ようこさんご自身からの報告もありますので、ご関心のある方は是非。
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 午後のプログラムは、わさび田ハイキング(補修のお手伝い)です。
 マイクロバス等に分乗し、Nさん(たろうさんの師匠)宅に寄って獣害防護ネット等の資材を積み込み、都道を小菅村方面にしばらく走って道路脇のスペースに駐車。
 ここから資材等を背負って、わさび田に向かいました。
 細い山道は、きついアップダウンの繰り返し。
 何度か丸木橋を渡り、はるか眼下に渓流を望むような獣道のような場所も。落ち葉が積もっていて油断すると足を取られそうで緊張します。
 まさに「西原のマチュピチュ」との異名どおり(実際にマチュピチュに行ったことはありませんが)。
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 30分ほど歩き、短時間ながら疲労がピークに達してきた頃、河原が広くなり、積まれている石垣が見えて きました。
 その石垣に囲まれた部分が、わさび田になっているのです。
 上流に掛け渡してあるパイプを調節すると、水が流れ込んできました。
 この季節、本来であればわさびの白い花が満開だそうです。
 ところが、冬の間にシカに葉っぱを食べられてしまったとのこと。これほどの酷い被害は初めてだそうです。
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 あちらこちらにわさびの葉が残っています。よくみると、茎の先端部分まで齧られ、その周りから新しい葉が出ているのです。
 葉を口に入れてみると、風味はありますがそれほど辛くはありません。
 掘ってみると、小ぶりなワサビの根(茎)が出てきました。
 渓流の水を汲んで鉄瓶でお茶を沸かして、一休み。
 14時を回って晴れ間がなくなり、少々肌寒くなってきただけに、自然の中での熱いお茶は身体に染み込むような美味しさです。
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 もともと50年ほど前にNさんが手作りで石垣を積んだのが最初だそうで、その後、毎年、わさびを生産されてきたそうですが、半世紀が経過するなか石垣のところどころは崩れ、今回は深刻なシカの害を被ってしまいました。
 さらには、これまで苗の供給やわさびの仲買をしてくれていた業者の方が高齢でリタイアされたとのこと。
 それでも今年、改めてワサビの苗を植える構想があるそうです。
 シカ害予防のためには柵(ネット)が必要ですが、そのためには石垣も補修しなければなりません。
 休憩後は、その石垣の崩れている部分を補修する作業です。
 といっても、たろうさんがNさんから教わるのを見学するだけでした。
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 崩れている石をいったん外し、土砂を掘った後に、改めて大きめの石から積み直していきます。
 うまく固定されるように適当な大きさと形の石を選び、積み上げ、石の間や裏側にはシャベルで土砂を流しこむようにして鉄棒で突き固めていきます。 なかなか大変な作業です。
 参加者の一人・ネモちゃんさん(女性)が、どこからか、ぴったりと合う石を見つけて運んできます。
160410_10_convert_20160413004455.jpg Nさんとたろうさんが石垣に格闘している傍ら、他の参加者は発見したサンショウウオに歓声も。
 気がつくと16時半。薄暗くなってきたところでこの日の作業は終了。
 再び、マチュ ピチュ渓谷を逆に辿って都道へ(やっぱり怖い!)。
 最後はびりゅう館で残りの買い物等をすませ、再び車に分乗させてもらってJR上野原駅へ。19時40分発の快速で帰途に就きました。心地よい(をちょっと越した)疲労感に包まれつつ。
 長い年月にわたって農山村地域に伝えられてきた様々な「仕事」や「技(わざ)」の多くが、今、過疎化・高齢化が進む中で(あるいは社会が効率化を求める中で)失われつつあります。
 例えば、雑穀など農産物の生産や調製・加工、炭焼き、竹かご作り、石垣積み等の技術は、いったん失われると復活させることは至難です。仮に文献や映像により詳細に記録したとしても、人から人への直接的なコミュニケーションを介さないと伝授されないノウハウ等(暗黙知)は伝えることはできません。
 たろうさんは、そのさいはらの「仕事」や「技」を地元の方から習得し、将来に伝承していこうと取り組んでおられるのです。
 色々な大切なことに、改めて気づかせて頂きました。
 次回の「しごと塾さいはら」次回は5月15日(日) を予定しているとのこと。詳細なプログラム等は追ってフェイスブッ ク等により告知されると思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなったことから、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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